特集 環境(5)/さまざまな環境の評価試験を行う/検査機関

2017年12月06日 (水曜日)

 環境は地球環境ばかりではない。住宅という空間も一つの環境であり、衣料の快適性も肌と衣料の空間をどのような状態にするかで変化する。検査機関はさまざまな環境に対する評価試験を行っている。

〈カケン/試験開発、情報提供も〉

 カケンテストセンター(カケン)は重量法による物質の吸放湿特性を自動的に測定する装置「CTC+」を開発した。大阪事業所の生物ラボも試験設備を拡充するなど生活や衣服の環境に関わる試験体制を強化する。

 CTC+は吸放湿の量ではなく、吸放湿のスピードを精密に測定できることが特徴。衣服内の温湿度環境は刻々と変化するが、これに素早く応答することが究極の快適性素材につながると、新たに開発した。

 さまざまな温湿度環境下において、電子天秤(てんびん)で水分含有量を経時測定する。石英スプリングや磁気吊下天秤を用いた大掛かり、高額な装置を使う従来の重量法測定方式や、環境試験機と秤量瓶を用いる含水率測定方法と比べ、構成や測定手順がシンプルで、精度よく測定できる。

 設定できる温度範囲はマイナス10℃から80℃まで、湿度は0%RH~95%RHまでで、温湿度領域は従来比3倍ほど拡大した。30分刻みといった短期間の応答性も得られる。寝装寝具材料、壁紙などの建築材料、フィルム類にも適用できる。

 安心・安全では、大阪事業所生物ラボが設備を拡充し、抗ウイルス性試験専用の区画も整備。抗ウイルス性試験のほか、抗菌やバリア性試験なども行う。

 カケンは海外の法規制情報を収集し、セミナーなどでも提供している。

〈QTEC/生活や衣料の環境守る〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は生活環境でのプライバシー保護を目的にしたカーテンの「遮像性試験QTEC法」を行うほか、羽毛試験、ウオッシャブルスーツの外観評価などに取り組んでいる。

 福井試験センターはカーテンに関わる試験として遮熱性試験、保温性試験を実施するが、QTEC法による遮像性試験にも対応する。昼は光を取り入れて中が見えにくいミラーカーテンの評価で、夜は外から見えにくいカーテンである。プライバシーを保護し、防犯面でも役立つ。報告書にはカーテン越しに撮影した写真も掲載。依頼によりカスタマイズも可能である。

 中部事業所では羽毛関連の評価試験を行う。羽毛の混合率、鳥種鑑別、清浄度、酸素計数(有機物質の残留量測定)、かさ高性、油脂分、ホルムアルデヒドなどだ。ダウン商品の吹き出し試験(国内規格、海外規格〈EN12132―1〉)も実施。日本羽毛製品協同組合、ダウンパス(製品認証)の羽毛品質試験のサポートも行う。動物愛護やリサイクル羽毛によるサステイナブルの動きにも応じた体制。

 重衣料関連では水洗い商品ウオッシャブルスーツの外観評価、ドライクリーニングオンリーのズボンの折り目耐久性試験、スーツの温湿度の影響による型崩れを評価する外観保持特性試験にも対応する。

〈ボーケン/室内VOC濃度に対応〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は住環境分野でも安全性への取り組みを強化。家具やカーテンなどの製品から放散される有害物質濃度を測定する大型チャンバー(温湿度調整可能)を新たに設置する予定だ。新たに設置する大型チャンバーはJIS規格に準拠しており、ホルムアルデヒド以外のVOC(揮発性有機化合物)濃度測定にも対応している。

 国交省指定の性能評価機関として、建築材料から発散されるホルムアルデヒドの性能評価も行う。

 厚生労働省は4化合物の室内濃度指針値の見直し、規制物質の追加を進めている。ボーケンでは既に対応を済ませた。

 ボーケンは、食品衛生法に基づく厚労省の指定検査機関であり、6月には医薬品医療器機等法施行規則第12条第1項に規定する試験検査機関に登録、繊維以外でも活躍する。

 機能性試験では「温度適応型蒸散性試験」も行う。着用している衣服の温度が上がると、吸汗速乾性能が向上するという温度依存性を持つ新しいタイプの吸汗速乾加工剤を評価する試験である。

 「世界的に環境への負荷を最小限に抑える生産」が注目されている。欧州規制のリーチ、ローズの試験、問い合わせにも対応する。FITI試験研究院との業務提携を通じて、SAC(サステイナブル・アパレル連合)などの化学分析に関して情報サービスする。

〈ニッセンケン/持続可能な成長支える〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、繊維製品の有害物質に対する世界的安全証明「エコテックス認証」のヨーロッパ圏を除いて試験と認証が出来る唯一の機関だ。エコテックススタンダード100は人体への有害物質だけでなく、環境ホルモンなど地球環境の安全にも寄与する。

 エコテックスはグローバル・スタンダードの認証システムとして世界をリードしており、年率5~7%の成長を遂げる。「持続的な成長を可能にする全体的なアプローチ」に向けて、生産前段階に使われる化学薬剤・染料・助剤・仕上げ加工剤などの安全性の認証「エコパスポート」、持続可能な繊維生産の認証システム「ステップ」などの五つの認証がエコテックスファミリーとして展開する。

 グローバルレベルでは、「ZDHC(有害化学物質排出ゼロ)」の有害物質規制の指定項目となっている。

 エコテックスは全てのビジネスでの持続可能性の実現と透明性の向上をサポートし、工場での規制物質のチェックから消費者保護まで対応できる体制の構築を進めており、独立した世界18の試験研究機関が参加している。

 防災・安全評価試験は立石ラボで対応。地球温暖化によるスーパー台風などの異常気象が日常を脅かす。津波などの災害発生時には津波標識や避難誘導標識が重要な役割を果たすが、この視認性を評価するのも、ニッセンケンの業務だ。