特集 コットン・ルネッサンス(1)/商社に聞く どうなる? 綿花相場

2017年12月11日 (月曜日)

〈今年度も底堅い動き続く/東洋棉花/代表取締役 岡田 光生 氏〉

  ――2016~17綿花年度(16年8月~17年7月)の市況を振り返っていただくと。

 15~16年度に比べ生産量、消費量ともに堅調に伸びた一年でした。

 米国農務省の発表によると、前年度の世界の綿花生産量は15~16年度比10・7%増の1億647万俵でした。一方、消費量は15~16年度比2・2%増の1億1422万俵でした。消費地としては中国、インド、バングラデシュが増えています。

 ニューヨーク定期綿花相場の一年間の推移を見ると、前々年度に引き続き米綿の需要が高かった年でした。16年12月ごろの1ポンド70セントを底に、17年明けから初夏にかけて上がり下がりを繰り返しながら、17年5月には1ポンド85セントまで跳ね上がりました。その後は新綿の収穫量への期待から徐々に値を下げて行きました。

 一時、高騰した原因としては、米綿が品薄状態になったことがあります。米国の前年度の生産量1717万俵に占める輸出の割合は実に87%を占める1492万俵です。前々年度が1289万俵の生産に対して輸出の占める割合は70%ほどでした。比較すると米綿のニーズが高まったことが分かります。前年度はブラジルやオーストラリアの収穫が思わしくないということも背景にあり、世界の紡績企業の需要は特に米綿に向かったことがうかがえます。

  ――今綿花年度はどのように推移するでしょうか。

 今年度もタイト感のある底堅い相場が続くとみます。

 米国、インド、パキスタンなど主要な綿産国が増産計画で、値が緩むと思われがちですが、今年度は消費も堅調に伸びると予想されており、値を上げています。11月中旬から12月初旬にかけて1ポンド68セントから75セントまで上がってきました。

 他の要因としては、米綿輸出の成約高にあります。今年度の米国の生産計画は前年度比24・5%増の2138万俵、輸出計画量は1450万俵です。輸出計画の7割を占める1千万俵は既に成約済みです。計画量まで残り3割程度しか残っていないという状況が価格の緊張感につながっています。それ以外に米国の綿花産地で刈取りの遅れが出て出荷に影響しかねないのも懸念材料です。

 中国が輸入量を増やすのではないかとの見方も値が緩まない要素です。これまで中国は世界貿易機関に定められた量しか買っていませんでした。ところが、同国がここ数年間、在庫を積極的に減らしてきたため、そろそろ輸入を増やすのではとの予想が広がっています。どの程度輸入を増やすのかが注目されます。

 前々年度の中国の在庫量は世界の在庫量の6割を占めており、前年には5割、今年度では4割程度にまで減少する予想です。18年3月頃、3年目となる在庫の放出に踏み切るでしょう。

〈米綿大豊作も中国次第/豊島/十二部部長 菱川 純治 氏〉

  ――2016~17綿花年度(16年8月~17年7月)を振り返っていただけますか。

 2~3カ月前に1ポンド当たり69セントだったニューヨークの綿花定期相場はここに来て上昇機運にありますが、半年間のタームで見ると、ほぼ65~75セントで推移し、動きの乏しい状態が続きました。16~17綿花年度の生産量が10・1%増の1億600万俵となり、期末在庫を含めて供給量が増えたことが弱気な要素になりました。特に米国が1700万俵と33%増産となったことが定期相場に反映したとみています。

  ――17~18綿花年度はどのように動くとみていますか。

 8月から新綿花年度に入りましたが、米国農務省によると、全世界の綿花生産高は1億2150万俵と前季比13%増の見通しです。これは5年ぶりの高水準になります。

 中でも米国が大豊作で、2100万俵。前年に比べて2割強の伸びです。二つの大型ハリケーンによる大きな被害がありながら、04、05、06年度以来の2千万俵超えとなります。天候が良かったことに加えて品種改良により収穫率が高まったことが背景です。もしもハリケーンによる被害がなければ2200~2300万俵に達したかもしれません。

  ――米国の大豊作により市況はどう変化するとみていますか。

 ハイグレード品が多い米綿の競争力が付くわけですから、米綿の商いが多くなる年になります。成約率も現在で5割と言われています。これは1年前に比べると250万俵も多い。新綿花年度に入って1~2カ月で半分が売れているのは特筆すべきでしょう。割安な高品質の綿花が世界中で買い漁られている。

 ただ、これだけ集中すると11月からのデリバリー、船積みが懸念されます。残り半分は若干の品質面で懸念もありますし、先物ですから実際の収穫が天候などによってどう変わるかによります。その面では1~3月、4~6月物はオファーが出しにくいので、スローダウンするでしょう。船積みにも問題がなく、オファーが出てくればスピードアップするとは見ています。

  ――その中で綿花相場としてはどう動きますか。

 米綿は2千万俵を超える豊作ですが、世界消費も増えていますので、よほど特殊な事案が生じない限り、65~75セントの範囲で推移するとみています。

 ただ、中国がどう動くかによって大きく変わります。中国政府はオークションにより綿花の備蓄在庫を放出してきましたが、どこかで買いに動くことになるでしょう。

 中国の期初在庫は3900万俵ですが、これは世界全体の43%。中国以外の方が多くなったわけです。実際は2500万俵とも言われています。世界最大の綿花消費国である中国は500万俵を輸入していますが、消費・在庫から判断すると、800万~1千万俵は輸入する必要があります。その面で今後、動くのは確実とみられています。

 20年度までは中国が不足分を補うために動き、綿花定期相場もそれによって上昇するとの向きが多い。既に先物手当てを進める企業もあり、それによる極端なコスト上昇を懸念しています。