特集 コットン・ルネッサンス(2)/綿の魅力は無限大/独自技術で多彩な素材

2017年12月11日 (月曜日)

 天然素材を代表するセルロース繊維である綿。繊維製品の高付加価値化が進む中、綿紡績各社の独自の技術が多彩な綿素材を生み出している。素材選びに始まり、独自のノウハウの蓄積や希少な精紡機の活用まで、さまざまな工夫が綿の魅力を無限大にまで高める。その中から幾つかを紹介する。

〈プレミアム綿糸の販売開始/シキボウ〉

 シキボウの売れ筋綿素材として定着しているのが精紡交撚糸「デュアルアクション」シリーズだ。

 発売以来15年以上が経つ息の長い商品。当初は国内生産だったが、マザー工場である富山工場からベトナムへ技術移転を進め近年、同シリーズの標準品はベトナム生産になっている。デュアルアクションの特徴は綿素材の美しさを最大限に引き出すところにある。

 原料にはカルフォルニア綿を使用し、独自の製法により糸表面は毛羽が少なく、均整がとれ美しい。今年からはカルフォルニア綿に「スーピマ」をブレンドし、さらにこれまでの76双から100双まで細くした「プレミアムデュアルアクション」の販売をスタート。細番手となったことで、生地にすると綿の光沢感が表れ、上質な肌触りが一層際立つ。

 インナー、カットソーなどのカジュアル衣料に加え靴下向けでも販路が開けつつある。現在は国内、アジア諸国向けが中心だが将来的には欧米への輸出も目指す。

〈渦流紡績のメランジ糸/新内外綿〉

 新内外綿は、村田機械の渦流紡機「ボルテックス」で紡績したオーガニック綿100%と再生ポリエステル65%・オーガニック綿35%混の糸を、植物染料などで染めたメランジ糸(多色霜降り糸)「ボタニカルダイ」の新シリーズとして商品化した。

 紡績子会社のナイガイテキスタイル(岐阜県海津市)に2016年10月、ボルテックス機を1台導入し稼働させた。今回のボタニカルダイの新シリーズは、これを活用して開発した。

 ボタニカルダイは、耐光堅ろう度を確保するために、植物染料と化学染料を併用して染めたわたを用いたメランジ糸。再生ポリエステル・オーガニック綿混糸は、スポーツ衣料やユニフォーム用途を狙ったもの。従来のリング紡績ではピリングの問題があったが、ボルテックス機で紡績することで、その問題も解消した。

〈色落ちしにくいデニム開発/クラボウ〉

 クラボウが今年発表した色落ちしにくいデニム「アクアティック」は、洗濯による色移り、色落ちがしにくく、擦れたときでも移染しにくい。生地への加工でデニムならではのビンテージ感ある表情も付けられるほか、洗い加工時の水の使用量も削減できる。

 これまで色移りの問題で本格デニムでは難しかった白色の素材との組み合わせが可能になる。衣料だけでなく、雑貨、ソファー地やクッションカバーなど移染が課題だった幅広い分野に提案する。

 今年5月の展示会まで2年半をかけて原料選択から紡績・織布・染色加工の全工程を含む独自プロセス「アクアティックメソッド」を開発。ぬれても色落ちしにくく、乾いた状態でも他素材に色移りしにくくかつ、製品加工で本格デニム特有のビンテージ表現も可能にした。今後、風合い・機能加工も付加しさらに提案するカテゴリーを広げる方針だ。

 生産は国内自社工場の安城工場(紡績・織布)、徳島工場(染色・仕上げ加工)で一貫生産する。

〈ニーズごとの別注糸供給/フジボウテキスタイル〉

 フジボウテキスタイルは大分工場で生産する別注糸を中心に幅広い産地に供給する。顧客のニーズに合った原綿選択や混綿対応を強みとする。

 大分工場は、グループ会社であるフジボウアパレルとアングルに供給する原糸生産の中核を担っており、特にアングルの主力ブランド「アサメリー」「エアメリー」に使用する強撚糸や甘撚り糸の生産で中心的な役割を果たす。

 こうした実績を生かし、産地への原糸販売にも力を入れる。主力である和歌山産地や尾州産地向けニット糸に加え、現在では今治産地や泉州産地向けタオル糸や北陸産地の綿経編み地向け、尾州産地や富士吉田産地の織物向けなどへの販売が徐々に拡大している。

 一例を挙げると今治産地向けでは超長綿であるペルー綿を使った中番手糸を提案しておりユーザーからさまざまな要望に応じた原綿調達と紡績設備を引き続き継続する。

〈テキサス7」好評続く/ダイワボウノイ〉

 ダイワボウノイは得意とする多彩なオープンエンド(OE)綿糸を多彩に展開している。

 OE綿糸の中でもロングセラー商品の一つが「テキサス7」だ。米綿を50%使用しOE紡積ならではの糸構造が生み出す爽快なドライタッチとボリューム感が特徴。これまで有名ブランドのカジュアル衣料などで高い評価を得てきた。

 現在、OE糸を生産する国内紡績は少ない。このため独自性を発揮できる綿糸としてラインアップを充実させた。米綿使い「ニューサウス」、メキシコ綿使い「ブランネロ」、インド産プレオーガニック綿使い「スタージャ」、膨らみ感が特徴の「エアーパポ」、毛羽が少ない「エアコンパクト」がある。これらは生産子会社のダイワボウスピンテックが持つ希少なOE精紡機「BD200」で紡績する。一方、テキスタイルでは綿100%の高密度織物「ベンタイル」が息の長い商品として知られる。双糸使いでしっかり感、ハリ感などの表面感と透湿性と耐水性という機能性を併せ持ち、コート、ジャケットを中心に安定販売を続ける。