2018新年号 トップが語る今年の展望(4)/変化する業界に対応する検査機関

2018年01月04日 (木曜日)

 昨年、アパレル業界は異業種のアマゾン、ゾゾタウンなどが進出し、大きな地殻変動に見舞われた。「繊維業界の未来図」は大きく変わる。しかし、衣料の安全性や機能性の追求が変わったわけではない。検査機関は変化する繊維業界に今年も対応していく。

〈カケン/中計策定、情報企業化を/新事業の創出にも着手〉

 カケンテストセンター(カケン)は「2021中期経営計画」を策定し、既存分野の強化、新規事業の創出などに取り組む。長尾梅太郎理事長は「増収ペースだが、繊維業界は構造的問題が続き、市場のパイの縮小は否めない。付加価値の高い情報サービスなども提供する情報企業を目指す」と語る。

 この情報サービスの一環としてさまざまなセミナーを開催する。「家庭用品品質表示法改正セミナー」は国内だけでなく、中国の青島、上海、南通、寧波、無錫のほか、香港やベトナムでも実施した。昨年11月に大阪事業所で開かれた欧米向け「一般試験方法と有害規制物質の解説及び法規制セミナー」は、ローズ指令、リーチ規制、カリフォルニアプロポジション65の有害規制物質を説明する専門性の高いものだ。

 繊維の試験では昨年、京都検査所が光学顕微鏡や画像解析ソフトを用いた自動測定装置を導入し、カシミヤ繊維などの自動直径測定が行えるようになった。大阪事業所は重量法による物質の吸放湿特性を自動的に測定する装置「CTC+」を開発した。既存分野といえども新たな試験の開発を進めている。

 新規事業ではジネテックス社との繊維製品取扱い記号に関する知的財産使用許諾契約も行う。ブンカケン(日本文化用品安全試験所)との業務提携も新分野開拓を目的に事業活動している。

〈ボーケン/インフラ整備が進む/信頼のブランド確立〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)の堀場勇人理事長は「信頼のボーケンブランドを確立する」と語る。そのため、事業所内での人材育成、基本の徹底、考える習慣作りを進める。第三者機関として評価試験データの説明責任を果たしていくことが顧客や社会に対する役割と考える。「データを使って品質管理など新たな価値提供」にも、フェイス・ツー・フェイスで取り組む。

 組織面では現在の事業所制に加え、横割りの事業分野(繊維、生活用品、化学分析)をクロスさせて、事業分野ごとの計画を立てる。

 ボーケンは2013年に東京都江東区の東京本部ビル内に東京本部、東京事業所を開設した。「約5年だが、集約メリットが出て、効率アップにもつながった」という。15年には岡山事業所を移転、拡充。16年に上海試験センターの統合、昨年12月には中国の常州試験センターが新ビルに移転し、華東地区を固めている。「ここ1、2年で青島試験センターも需要増に合わせて移転する」考えだ。

 今年5月には大阪本部ビルの老朽化に伴い、大阪市営地下鉄の大阪港駅から3分の場所に移転。3300平方㍍の敷地に6千平方㍍の大阪本部ビルを建設中で、2月に竣工(しゅんこう)予定。繊維の定番試験のほか、生活用品、抗菌試験を含む機能性試験、化学分析を増強。「インフラ整備が整う」と語る。

〈キューテック/サステイナビリティー重視/検査機関として先陣切る〉

 日本繊維製品品質技術センター(キューテック)の奥田利治理事長は新事業開発の方向性として環境配慮や安心・安全分野に着目する。サステイナビリティー(持続可能性)を重視する事業展開は世界的な潮流。「検査機関として啓発・普及するサービスメニューをそろえ、定着を後押ししたい」とし、主力の試験事業とは異なる切り口で進める。

 衣料品生産は産地の移動を繰り返してきたが、近年の染工場に対する中国の環境規制強化に象徴されるように、環境負荷を低減する手法が求められている。中国に五つの試験センターを展開しているだけに「こうした課題への対応は避けて通れない」。

 華東地域では上海、無錫に南通試験センターが加わり3拠点体制が完成。日本側の地域統括が主導し、技術・人員・営業面で連携を強める。国内では専門性を持った営業専従部署を充実化。トータルサービスを提案して「選ばれる検査機関」を目指す。

 新規事業開発では「本業との親和性が高く、キューテック・パーソンが持つ知見・特性が生かせる分野かを見極める」。羽毛原料の追跡可能性に関する「ダウンパス」システムに参画したのも一環。日本での羽毛トレーサビリティーシステムの監査機関としての役割を担う。国際羽毛協会、欧州羽毛協会、日本羽毛製品協同組合などの認定試験機関にもなっており「進化を続ける」。

〈ニッセンケン/世界に通用する存在へ/安全性から企業支援まで〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は繊維製品に関連した素材の安全性、機能性を評価する。「エコテックス認証」、防災・安全評価試験のほか、海外事業所では試験業務や検品業務だけでなく、日本企業の海外進出支援も行う。駒田展大理事長は内外の営業力を高め、現場力も強化し、世界に通用する検査機関を目指す。

 昨年はエコテックス認証の訴求に力を注いだ。コンラッド東京(東京都港区)での「ジャパン・エコテックス・アワード2017」開催もその一つ。エコテックス国際共同体が1992年から繊維製品の安全性認証を開始し、25周年を迎えたことを記念し、ノミネートした37の認証取得企業からグランプリと各部門賞を表彰した。

 現在、化学薬剤・染料・助剤・仕上げ加工剤などの安全性の認証「エコパスポート」など五つの認証をエコテックスファミリーとして展開。エコテックスのブランド力強化、イメージの統率など、エコテックスの付加価値をブランディングする。

 防災・安全評価試験では高視認性安全服の普及に向け文化服装学院とのコラボなどに取り組んだ。

 海外ではベトナムに「ホーチミン試験センター」を開設。南アジアではインドのジャイプル事業所、バングラデシュにはダッカ事業所設け、日本企業の進出を情報面を含めてサポートしている。