生産増強相次ぐ人工皮革/自動車内装材が拡大/付加価値化の新潮流も追い風
2018年01月19日 (金曜日)
人工皮革の生産増強が相次いでいる。2017年9月に旭化成が「ラムース」の生産設備増強を発表したのに続き、このほど東レも「ウルトラスエード」の生産設備増強を発表した。クラレの「クラリーノ」や帝人コードレの「コードレ」も販売好調が続く。
生産増強の背景には自動車内装材などでの需要拡大がある。コンシューマーエレクトロニクス(CE)分野でも付加価値化の新潮流が追い風になっている。
旭化成は宮崎県延岡市でラムース生産設備を増強し、19年4~9月期には年産能力を現在の約600万平方メートルから約900万平方メートルへ拡大する。
東レもウルトラスエードを生産する滋賀事業場(滋賀県大津市)と岐阜工場(岐阜県神戸町)を増強し、19年9月に生産能力を現在の約1・6倍となる年産1千万平方メートルに拡大する。東レはイタリア子会社であるアルカンターラでも「アルカンターラ」の生産を21年までに現行の年産1千万平方メートルから倍増することを発表している。
生産増強の背景にあるのが自動車内装材での需要拡大。従来はシート材が中心だったが、近年は天井材やドアパネル、インパネなど使用部位拡大が続く。東レによると需要は今後も年率7%のペースで成長するという。ITや音響機器の筐体(きょうたい)・カバーといったCE用途の拡大も大きい。
人工皮革の採用拡大の理由の一つが天然皮革からの代替需要。自動車内装材は高級ゾーンで天然皮革に一定の需要があるが、天然皮革は原皮のサイズなどに制約があり天井材など大型部位への採用が難しかった。耐久性や吸放湿性、通気性、保温性など機能面でも人工皮革で代替するメリットが大きい。
天然皮革は供給量にも制約がある。原皮の供給量に限りがあることに加え、なめし工程でクロムなどを使用するため環境負荷が大きく、汚水処理などの負担も大きいことから加工能力の拡大が難しい。一部では動物愛護の観点から天然皮革を忌避する動きもある。このためかばんや靴、インテリアといった用途でも人工皮革への代替が起こる。
もう一つ注目なのが、付加価値化の新潮流である。特にCE製品は近年、高機能化が進んだことで性能面での差別化を消費者に訴求するのがかえって難しくなった。このため製品外観の質感やデザインの重要性が高まる。こうした傾向も人工皮革の需要拡大につながる。
付加価値化の新潮流は今後、EV(電気自動車)シフトなどによって自動車などにも広がる可能性がある。質感とデザイン性、機能に優れる人工皮革の需要が一段と増加することが期待できそうだ。