特集 2018春夏 オフィス&サービスウエア(3)/需要増へ基盤整備/商社編

2018年01月31日 (水曜日)

 中国やASEAN地域の人件費が上昇する中、OEM事業を手掛ける商社は、生産ラインの効率化や物流費の抑制に知恵を絞る。2019年の消費増税を前に、18年はユニフォームの更新需要が増えることも予想される。あらためて商社の海外ネットワークを生かした生産や品質、納期管理といった強みを顧客に提案する。

〈新素材を市場に提案/異業種とのコラボも/豊島〉

 豊島の2018年6月期の商況は、ワーキングウエアを軸に堅調に動く。東京五輪のユニフォームの更新需要に加えて「カジュアル分野に強い繊維商社という当社の強みを出せている」(同社)と言う。

 ユニフォームのカジュアル化が進み、好調なのが17年に販売を本格化した布帛調ニット「ワンダーシェイプ」。360度全ての方向に伸びて、伸長率80%、回復率90%で一般的なストレッチ素材より伸縮性が高い。丸編みだが織物のような見た目や風合いも特徴で、グローバルSPAに採用されるなど実績を積んでいる。

 ワンダーシェイプは動きやすさを重視するユニフォーム分野でも注目されている。ワーキングやサービスウエアのパンツとして引き合いが多く、主軸の素材の一つとして提案する。

 サービスウエアを採用する職種が多様になっている背景から、素材のバリエーションを広げている。18秋冬向けの展示会では、幾何学柄のプリントや、「テンセル」、ミューファン使いのアウター、ベトナムやインドネシアで開発した素材が好評だった。“コト”の提案やブランドや異業種とのコラボレーションも年々広がりを見せている。

 生産体制は中国とASEAN地域で、白衣はインドネシア、オフィスはベトナムといったようにそれぞれの国が得意とする分野を見極め、発注する。「メインで入ることができる工場を増やし、ロスのない生産を心掛けている」という。

〈ミャンマー生産強化/現地スタッフも育成/日鉄住金物産〉

 日鉄住金物産の2018年3月期は売り上げは横ばいだが、業務の効率化など自助努力で増益の見通し。同社は食品や医療用白衣やオフィスウエア商材のOEM事業を展開する。

 同社は古くから海外工場の展開と人材育成に力を入れてきた。17年5月にはミャンマーの首都ネピドーに同国3カ所目の縫製工場を立ち上げた。

 ベトナムやインドネシアに続く生産拠点としてミャンマーが注目される前から同社は現地企業と組み、生産体制を整えてきた。

 ミャンマー以外では12年にインドネシアの工場で素材開発チームを立ち上げた。綿100%、ポリエステル・綿混、合繊、デニムといったユニフォーム全般に対応する。繊維事業本部機能衣料第二部の岸本孝男部長は「毎年デザインや色が変化しないユニフォームは素材開発に向いている」と説明する。今後はインドネシアの成功例をタイやベトナムにも広げる。

 海外工場の生産性を高めるため、現地スタッフの人材育成にも力を入れる。18年には外国人技能実習制度を活用し、日本の縫製工場で研修し、生産管理などを学んでもらう。現地の工場に戻ったスタッフが将来的に工場全体を管理できるよう、人材に投資している。

 日鉄住金グループの相乗効果も最大限に生かし、川上から川下まで顧客とパートナーシップを取り、素材を提案する。

〈インフラ整備進める/新規工場と取り組み/丸紅〉

 丸紅の2017年のオフィス、サービスウエアのOEM事業は、前年に比べて食品工場向け白衣が好調、オフィスウエアは横ばいだった。堅調と取れるが、機能繊維部の田口亘ユニフォーム課長は「20年の東京五輪を控えた市場の期待感と比べると少し残念な結果だった」と振り返る。案件数が少なかったという顧客の声もあった。

 19年秋には消費増税が控え、市況が読みにくいということもあり、18年にかける期待は大きい。「大きなオーダーが入った時に、確実に対応できるように商社として海外のインフラ整備を進めることが肝要」(田口課長)と言う。

 同社はユニフォーム商材の約6割をベトナムで生産する。生産比率の高い中国とベトナムにはそれぞれ丸紅繊維〈上海〉、丸紅テキスタイルアジアンパシフィックの二つの事業会社が現地の生産管理を行う。このほかインドネシアには現地法人、ミャンマーやバングラデシュには支店を置いている。

 ASEAN地域に現地法人や出張所があるため、各国で新規工場と取り組む場合も審査や手続きがスムーズに進む。生産管理ができる現地のスタッフも採用しやすい。17年にはベトナム、インドネシア、ミャンマーの3カ国で新たな縫製工場と提携し生産基盤を拡大している。

〈企画の付加価値高める/各拠点で供給力向上へ/カイタックトレーディング〉

 カイタックトレーディング(岡山市)のユニフォーム事業は、ユニフォーム業界全体が堅調な需要だったことで、2018年2月期は増収増益を確保しそうだ。東京五輪でユニフォームの需要拡大が期待される中、付加価値を高めた企画提案や、中国、ベトナムなど生産拠点での供給力の向上を視野に入れながら、事業拡大に取り組む。

 今期は、円安傾向によって為替で厳しい局面があったものの、増収を確保した。中でもカジュアルやストレッチといったトレンドに合わせ、付加価値を高めた企画提案を強化する。

 生産面では中国・山東省にある中国平度凱拓が、多品種小ロット、短納期で対応できる体制を構築。中国でも人材確保が難しくなりつつあることから、省人化に対応した設備の導入を検討している。

 ベトナムは協力縫製工場を増やしつつあり、ハイフォンにある検品センターCNVを活用した供給が拡大。月間で最大18万点の検品をしているが、第二検品センターの増設か、出張による検品機能の強化など、増強を視野に入れる時期に差し掛かってきた。

 不良率を減らし、納品できるかを常に追求。「コスト的に高くても、トータルで見れば結果的に利益がしっかり残る、そういったことを理解してもらえるところと取り組む」(貝畑拓哉副社長)ことで、来期も増収を目指す。