特集 事業戦略(2)/日清紡テキスタイル/社長 馬場 一訓 氏/グローバル販売拡大めざす/環境・健康・安全をカラーに

2018年02月26日 (月曜日)

 「インドネシアから欧米、中東、現地に生地販売する“外・外”ビジネスの拡大が引き続き重点テーマになる」――日清紡テキスタイルの馬場一訓社長は強調する。そのためには品質、コスト競争力ともにグローバル水準を確保することが欠かせない。さらに将来に向けた研究開発も進む。「環境・健康・安全を企業カラーとして作り上げたい」と話す。

  ――2017年度(18年3月期)もあとわずかですが、ここまでの商況をどのように見ていますか。

 残念ながらここまでは売上高、利益ともに計画を下回って推移するなど満足できる数字になっていません。要因としては小売り市況が思わしくなく、競争激化で子会社の東京シャツが苦戦しました。デニムも勢いがありません。16年ごろからデニムトレンドが復調し、フォームなど新しい用途でも採用が増えましたが、主力のボトムの需要が拡大したかといえば話は別。依然として低価格化が進み、主力取引先であるナショナルブランド(NB)の販売にも影響を与えています。

 一方、シャツ地やユニフォーム地は悪くありません。シャツは定番品こそ低調ですが、「アポロコット」「スパーノ」など高付加価値な形態安定加工は好調です。ユニフォームもワーキング分野が堅調です。海外子会社では低迷が続いていたブラジル日清紡が大幅に改善しました。主力のニットコーマ糸の市況が回復していることに加え、ブラジルの景気や政情も安定してきたことも理由でしょう。16年から値上げを実施してきた効果も大きかった。村田機械の渦流精紡機「ボルテックス」も導入し、商品開発も進め、今年から販売が始まっています。そのほか、溶融スパンデックス「モビロン」や綿不織布「オイコス」は計画通りに推移しています。特にモビロンはレッグだけでなくインナー用途で販売拡大する戦略が進展しました。

  ――18年度の課題と重点戦略は。

 やはりインドネシアの関係会社を活用した対欧米・対中東輸出、そして内販という“外・外ビジネス”の拡大が重点テーマになります。そのために営業体制も変更して取り組みを強化してきました。商品の改善も進めています。当社はインドネシアにシャツ地・シャツ製品で紡織加工から縫製まで一貫生産の設備を持っています。これを生かしてグローバル市場で通用する品質とコスト競争力を付けなければなりません。そのために生産性の向上など改善活動を続けることが重要になります。グローバルな販売には白無地だけでなく先染め品や反染め品も必要。そこで中国の先染め整理加工子会社である日清紡績〈常州〉と合わせて、日清紡インドネシアでも染色の品質を強化します。

  ――インドネシアはデニム生産もあります。

 マラカサリ日清紡デニムインダストリーによる販売も拡大させます。ジーンズアパレルがデニムをグローバル調達する傾向も既に強まっていますから、そうした需要に対してインドネシア生産で対応する。そのための投資も進めてきましたし、品質も確立しました。一方、国産デニムに対する根強いニーズもあります。これに対して吉野川事業所の染色加工技術や短納期対応を強みとすることが重要です。

 シャツも含めて新たな機能素材を開発することも重要です。一つはアポロコットに続く次世代の形態安定加工。もう一つは加工プロセスの革新です。特に無水染色、ホルマリン不使用加工、無糊製織をテーマに事業戦略室が中心になって研究を進めています。やはり環境配慮は避けて通れない課題。最近では欧米を中心にESG(企業の環境、社会、ガバナンスへの取り組み)を評価するという観点も強まりました。ですから、日清紡グループとして“環境・健康、安全”を企業のカラーとして作り上げていくことを目指します。

 そのほかにも日清紡ホールディングスとしてIoT(モノのインターネット)などを活用した生産技術の開発や見守りシステムの研究が進められています。こうした取り組みに繊維事業として参画していくことが重要。スマートテキスタイルなどの開発を進めています。日清紡グループにはエレクトロニクス事業もありますから、それを強みにしなければなりません。