特集 事業戦略(3)/ダイワボウノイ/社長 斉藤 清一 氏/機能材も海外販売拡大へ/改質技術の開発がポイント

2018年02月26日 (月曜日)

 ダイワボウグループは4月から新中期経営計画をスタートさせる。衣料品・生活資材事業を担うダイワボウノイもさらなる収益力の強化に取り組むことになる。斉藤清一社長は「将来性のあるファイバーや加工を作り上げることにかかっている。そのために改質技術の開発がポイント」と指摘。フタロシアニン加工などをベースにした機能材の販売拡大にも取り組む。

  ――2017年度(18年3月期)もあとわずかです。

 衣料品を取り巻く環境は依然として厳しいのですが、取り組み先である国内アパレルや大手流通が健闘していることもあり、ここまでは増収増益で推移しています。インドネシアからの対米インナー輸出も今期は復調しており、数量が回復してきました。インドネシアでの縫製は前年度に縫製子会社のダヤニ・ガーメント・インドネシア(DGI)を閉鎖し、中部ジャワ地区にある縫製子会社、ダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)に集約しましたが、こうした構造改革の成果も表れています。

 中国縫製子会社の蘇州大和針織服装と大和紡工業〈蘇州〉もニットカジュアルと成形インナーの受注が好調。中国での縫製はコスト的に厳しい面もありますが即応力や技術力が強みとなっており、オーディット(第三者監査)への対応が評価されています。さらにSKL物流〈蘇州〉の物流加工との連携も可能です。

  ――独自性のある原料や加工を活用する「ファイバー戦略」を実行してきました。

 機能材は羽毛消臭材の販売が拡大しました。加えて新たに開発した羽毛洗浄材が中国でも販売できそうです。中国では環境規制の強化から羽毛の精製加工(洗浄)場が苦境に立たされています。そこで羽毛洗浄材を使用することで水使用量を削減できる点などが評価されています。もちろん、中国は地域によって水質も気候も全く異なるので、カスタマイズが重要になります。紙糸も好調です。国内はデニムでの採用実績が上がり始め、欧州からの受注も増えてきました。衣料だけでなくインテリア用途でも引き合いが増えています。そのほか、ポリプロピレン(PP)は熱可塑性樹脂用マスターバッジも「マジカルアシスト」として商品化しました。水分率0・3%も実現しましたので制電などの機能を発現できます。今後は繊維でも活用できるでしょう。メカニズムの解析などエビデンスは信州大学と連携して研究しており、その人員も増やしました。

  ――4月からダイワボウグループとして新しい中期計画が始まりますが、ダイワボウノイとしての基本方針は。

 いかに“稼ぐ力”を強くするかが大前提です。そのためには、将来性のあるファイバーや加工を作り上げることにかかっている。ポイントは改質技術でしょう。原料は外部から調達したとしても、改質によって新たな機能や付加価値を持たせる。それを原綿、糸、生地、製品のいずれの段階でもグローバルに販売することが目標となります。ですから、ファイバーを起点に生産・販売を組み立てなければなりません。

 国内市場は縮小が避けられませんから、やはり海外販売の拡大が引き続き重要テーマになります。現在、売上高に占める海外販売比率は17%ですが、18年度には20%以上に高めることを目指します。インドネシアや中国への販売が中心となるでしょう。商品も従来はインナーが中心でしたが今後は親水化PPや紙糸、羽毛洗浄材など特殊ファイバー、機能材の販売もドライブを掛けていきます。

 販売体制の高度化も進めます。国内関係会社はインナー販売の西明、カジュアルウエア販売のダイワボウアドバンスがありますが、ここでも機能素材の活用を進めます。海外は大和紡績香港があり、現在は対米インナー輸出の窓口的な機能が中心ですが、さらに機能素材の販売も担うようにします。米国向けだけでなく東南アジア内販にも取り組みたい。

 こうすることで、改質技術による商品を原料、糸、生地、製品のあらゆる段階で販売する。そうやって重層化したビジネスのアセットマネジメントを大和紡績香港が担うことを考えています。