特集 事業戦略(8)/ダイワボウレーヨン 社長 福嶋 一成 氏/設備投資で生産能力増強/18年度輸出規模倍増へ

2018年02月27日 (火曜日)

 日本に2社しかないレーヨン短繊維メーカーの一つ、ダイワボウレーヨンは、輸出の拡大に力を入れている。繊維そのものの輸出に加え、それを使った不織布の海外販売にも本腰を入れ始めた。輸出拡大に備え、2020年度までの4年間で20億円を投じ、生産能力増強も図る。

  ――18年3月期の業績はどうなりそうですか。

 微増収ながらも、利益は前期並みにとどまりそうです。

 不織布への需要増が続く中で、輸出に力を入れ、中国向け中心に伸びました。国内向けも増えています。紡績用途も、17秋冬商戦で製品の在庫消化が進んだため、需要が増えてきました。

  ――中国へは、貴社の特殊レーヨン短繊維を使った不織布を、美容関連製品の素材として販売しています。同短繊維の海外販売はこれまでも行っていましたが、2次製品を本格販売するのは初の試みですね。

 ダイワボウ〈香港〉や大和紡績〈蘇州〉と組んで、昨年から本格化しました。当社の顧客が製造した不織布を輸出するとともに、中国の協力工場で作った不織布を、同国のローカル企業や日系企業へ販売しています。

 原料段階から差別化した不織布であることが売りです。昨年11月に上海で開催された「SINCE」(上海国際不織布見本市)に初出展したのですが、「ソフレイ」や「ベイリーズビーズ」などの特殊レーヨン使いが好評でした。ソフレイは、0・6デシテックスのレーヨンです。ここまで細い繊維を不織布にできる工場は限られます。開発力のある中国の工場と組んで生産しています。ベイリーズビーズは、透明感のある特殊形状繊維です。

  ――米国へは、マットレス用途の防炎レーヨンを輸出しています。

 米国の流通が変化し、アジアからの製品輸入が増えているため、苦戦しています。一ひねりが必要です。その方向性が見えてきたので、回復を狙います。

  ――利益が前期並みにとどまりそうなのはなぜですか。

 レーヨン短繊維製造コストが上昇しているからです。昨年9月1日出荷分からの値上げを要請したのですが、十分には浸透していません。レーヨンの副原料であるカセイソーダ、主原料である溶解パルプ、そしてエネルギーコストの上昇幅は、レーヨン短繊維の値上げを要請した以降の方がより大きくなっています。

  ――19年3月期の方針を。

 輸出の倍増を狙います。中国の美容関連市場向け不織布販売に特に期待しています。同市場規模は、まだまだ拡大します。当社が提案しているような原料段階から差別化した不織布へのニーズも高まっています。

 木材を原料とし、廃棄後は土に帰るレーヨンは、サステイナビリティー(持続可能性)という観点でも有用な繊維です。6月に東京で開催される「ANEX」展で、サステイナビリティーを強調するために、新しいレーヨン短繊維を発表する予定です。これにより、合繊の市場へも食い込みたいと考えます。

  ――設備投資にも力を入れています。

 輸出規模の拡大に備え、17年度から20年度までの4年間で、20億円の設備投資を行う計画です。これにより、年間2万5千トンのレーヨン短繊維生産能力を20%増やします。現在は、ボトルネックとなっていた部分の解消を進めています。

 設備投資計画には、IoT化も含まれています。アナログで管理していた温度などをビッグデータを使って制御できるようにしたいと考えています。ダイワボウ情報システムを中核とするDISグループと組んで進めます。

  ――島根県益田市にある貴社のレーヨン短繊維製造工場は、世界的に見ると珍しい工場ですね。

 中国では、1ラインが2万から3万トンというのが普通です。その規模で単一品種を量産することでようやくコスト競争力が出る。これに対し当社は、2万5千トンの能力で多品種少量短納期生産しています。しかも、その全てが受注生産です。こんな工場はあまりないと思います。