欧州インテリア展/グリーン、自然などキーワード

2018年03月15日 (木曜日)

 日本テキスタイルデザイン協会(TDA)は1日、「2018TDAインテリアトレンドセミナー」を大阪市中央区の大阪産業創造館で開いた。セミナーでは、欧州で2018年1月に開催されたインテリア・テキスタイル分野の主要展示会のトレンドを紹介。講師はTDA所属デザイナーの今野文雄氏、北原美希氏、大場麻美氏が務めた。

〈ハイムテキスタイル展/グリーン系カラー急増/熱帯植物、トロピカル調〉

 家庭、商業用テキスタイル国際見本市「ハイムテキスタイル」は1月9~12日にドイツのフランクフルト国際見本市会場で開かれた。64カ国・地域から2975社が出展し、約7万人が来場した。日本からは15社が出展した。

 色はグリーン系の展開が急増。生活環境にグリーンライフの重要性が注目され、幅広い色調、色彩のグリーンカラーが登場した。ここ数年継続しているブルー系は、インディゴブルーの色の表現が加わり再注目。前年増加したピンク系はスモーキーパステルをグルーピングしたカラーパットとして色相の幅を広げた。

 素材感は、全体にナチュラルな方向に向かっている。環境に配慮したサステイナブルな原料によるモノ作りをはじめ、天然素材ではなくても仕上がりや風合い、タッチ、素朴さ、クラフト感で表現している。パターンは熱帯植物、トロピカル調の比率が高く、前年よりも増大した。鳥や蝶を含めた動物類はよりアーティスティックにデザイン化されている。

 新スポットとして今回から、ペットインテリアとコントラクト市場に向けたテキスタイルの二つの特設エリアが設けられた。

〈ドモテックス展/クラシックをモダンに/ブルー系に幅〉

 国際的なカーペット・フロアカバーリング見本市「ドモテックス2018」は1月12~15日にドイツのハノーバー国際見本市会場で開かれた。1615社が出展し、4万5千人が来場した。

 デザインはデジタルプリント使いのラグが急激に減少し、フローラルパターンはほとんど見られなくなった。フォークロアデザインや抽象モダン・ジオメパターンは継続。クラシックパターンをモダンにシンプル化したものが主流になっている。

 カラーは黒・白・ベージュ・グレープラスニュートラルカラーの流れが継続しているほか、ダークブルーやソフトで明るめのブルーが多くなっている。主流のモダン系クラシックパターンはソフトで明るめの同系多色使いの表現が拡大した。

 ナチュラル系「キリム・モロッコ」は、デザイン性がアップして拡大継続。特にキリム系はカラー、デザイン性がモダンに。マシーンメードはハンドメードのイメージを再現しているものが目立つ。

〈ケルン国際家具見本市/中濃グレー系多く/グリーン系が拡大〉

 国際的な家具見本市「ケルン国際家具インテリア見本市」は1月15~21日、ドイツのケルンメッセ会場で開かれた。50カ国・地域から1200社以上が出展し、138カ国から12万5千人が来場した。

 ファニチャー、ソファー、テーブル、チェアー、インテリアアクセサリーなどから分析したカラー傾向は中濃グレー系、ニュートラルカラーが相変わらず多く、ホワイトに近い淡いグレーが拡大。チェアーやアクセサリーのアイテムに広がった。

 さらに前年と比較してグリーン系を出展する企業が拡大。モス系からダークグリーン系が主流のほか、ソフトパステルグリーンも多い。ピンクは落ち着きのあるソフトさが主流。ブルーはターコイズ系が見られず、ダークブルーとインディゴブルー、ブラックに近い深みのあるダークブルー、ソフト系の淡いブルーが出ている。ソフトなパステルカラー、ピュアホワイト、ホワイト系が増えた。

〈メゾン・エ・オブジェ/濃色のグリーン、ブルー/引き続きベルベット〉

 インテリア・デザインの総合見本市「メゾン・エ・オブジェ」は、1月19~23日にフランスのパリノール・ヴィルパント見本市会場で開かれた。63カ国・地域が出展し、約3040ブースで提案した。来場者は、前年比4%増の8万9495人。

 パターンは自然界からのインスピレーションを表現する傾向が強い。13年には登場した鳥や動物は、トレンドというよりも定番化している。風景をモダンに表現したファブリックや壁紙が多くなっている。

 カラーは、前年の緑を中心に紺を含めて濃いグリーン、濃いブルーのバリエーションが広がった。空や海など自然感のあるカラーリングがベースになっている。

 前年から増えたもう一つのカラーは、赤茶色系の色味。淡色から濃色のトーンで、他カラーともうまくコーディネートできる。

 素材そのものの色を感じるクラフト作家の作品が増えている。ファブリックスではウールやリネン素材の色味を生かした新作が多い。加えてピンクとイエローの使い方が今年らしさを演出するポイントカラーになる。

 素材では前年に引き続きベルベットの展開が広がっている。竹素材にも注目が集まり、照明や家具で多く展開されている。

 カーテンにウールや獣毛系の細番手のファイン素材を使用しているほか、素材感が豊かなトップ染め風、紡績糸の開発も進んでいる。ダメージやウオッシュアウト加工のアイテムは今年も増加。手作り感を演出する際には、マクラメの手法がアクセントになっている。

《挑戦する企業の姿目立つ/「2018桐生テキスタイルプロモーションショー」開催/群馬県桐生産地》

 群馬県桐生産地の繊維企業が一堂に会する展示会「2018桐生テキスタイルプロモーションショー(桐生TPS)」が7~8の2日間、東京都港区のテピアで開催された。婦人テキスタイルから染色・加工、刺しゅう、レース、和装関係まで同産地の力が結集した同展には多くの繊維関係者が足を運び、素材を吟味した。出展者も新しい商品の開発・提案に力を注ぎ、来場者の期待に応えた。

 今回の桐生TPSのテーマは「ライブ ユア ドリーム」とし、「あなたの夢を生きる」「夢に向かって生きる」といった思いを込めた。作り手と使い手、担い手と伝え手が一つの目的に向かうことによる持続可能なモノ作り、新たなプラットフォームの構築を目指した。出展企業は従来の枠に捉われない打ち出しを行い、来場者の目を引き付けた。

 織物メーカーのミタショーは、カットジャカードなど表面に変化を持たせたものやストレッチのある素材を打ち出していたが、色使いや素材感を意識した生地のラインアップを増やした。主力のミセスゾーンはもちろん、30~40代の需要掘り起しを狙ったもので、「新規の顧客を獲得するためにも積極的に提案する」と強調した。

 服地メーカーの桐生整染商事はスポーツの要素を取り入れていた。ブースには、アウトドアでも使用できそうな外観を持つメッシュのストレッチ生地などが並んだが、「盛り込んだのは、機能ではなく、テイスト。フィラメントのドビーを得意としており、ラグジュアリーとスポーツの融合を伝えることができれば」と話した。プリーツのスカート素材なども初めて作り上げた。

 デザイナーと共同で新しいモノ作りに取り組むプロジェクト「桐生クッション」の企画も進展が見られた。その一例がニットメーカーの松井ニット技研による春夏向け商材の拡充。得意とするマフラーや手袋などで磨いてきた技術(経編)を使ったバッグやポーチ、帽子、サンバイザーといったアイテムを商品化した。展示会の出品を皮切りに、18春夏から本格販売に入る。

 このプロジェクトには、産元商社の丸中、刺しゅう加工業の笠盛も参画している。丸中は特殊構造ファブリックを使ったクッションを生産している。現在は桐などをモチーフにした3柄2配色を用意するが、新アイテムの開発にも取り組んでいるとし、今秋にも発表する。笠盛は「刺しゅうの加工を施したテキスタイルを提供していく」と述べた。

 展示会では自社製品の充実を図る動きが目立っていた。織物メーカーのイヅハラ産業は、特許技術を生かした「イヅハラ織」と銅撚糸を組み合わせて機能を付与した「ふわっふわっ美マスク」を商品化している。洗濯して繰り返し使えることなども特長で、17年秋の上市以来販売は好調。今春には大手チェーンドラッグストアでの取り扱いも始まる。

 染色加工の金井レース加工は法定色素(医薬品などに使用できる色素で、厚生労働省が定めた)で染色する独自技術を確立した(特許出願中)。ナイロンやウール、シルク素材を染めることができ、幅広い色目を表現することができる。OEM生産を行うほか、自社で製品も展開する。商材はマスクやアームカバー、ストールなど。1月から桐生市内で販売している。