ヒットの予感
2018年03月22日 (木曜日)
消費不振が叫ばれて久しく、物が売れない時代が続いている。しかしながら、いつの世にもヒット商品は存在し、そこには売れる理由が必ずある。ヒットを予感させる商品・素材の動向を追った。
〈帝人フロンティア「ミノテック」/「みの」をヒントに開発/衣料や資材へ広がる用途〉
古来の雨具「みの」から着想を得て開発された、高機能ファブリックに脚光が当たっている。帝人フロンティアが展開する「ミノテック」だ。稲の葉の構造を応用して撥水(はっすい)性を付与した素材で、風合いやファッション性も兼ね備える。アウター用途で提案を開始したが、傘地をはじめとする資材分野にも広がりを見せている。
「水を滑らせて、雨を避ける」――ミノテックはこれまでになかった発想の素材として2016年11月に発表された。凸凹の表面が油分に覆われている稲の葉をテキスタイルで再現したもので、生地の縦方向に水を流し、横方向に水滴の表面張力を低減するための凸構造を配した。ウエアに用いると着用時に水滴が転がり落ちていく。
初期の撥水性は4級以上、30回洗濯後で3級以上、耐水圧300ミリ以上を誇り、タウンユースで十分な性能を発揮する。これは傘地にも使用できる性能で、年々増加傾向にある突然の豪雨などにも対応可能。ラミネート加工を施していないため、汗による蒸れを衣服内部から外に放出し、衣服内を快適に保つ。
みのや稲をヒントに商品化されたというストーリー性に加えて、水が転がり落ちる様が分かる視覚的効果が好評で、アパレルなどからは「このような素材が欲しかった」との声が聞こえてくる。技術的な背景が確立していることも評価のポイントとなり、生地への問い合わせはかなり多くなっているという。
衣料用途ではタウンファッションなどアウター分野を中心に展開し、資材関係では傘地やビジネスバッグなどで実績が出てきた。そのほか、「『ファッションユニフォーム的なウエアが作りたい』と運輸会社から話があり、時計のベルト用途で関心を示す企業も見られる」(帝人フロンティア)など、大きな可能性を感じさせる。
国内だけでなく、海外市場にも視線を注ぐ。欧州市場に向けては「プルミエール・ヴィジョン」に出展・訴求を行ったが、トップブランドの反応は良好だった。中国では「蓑技」ブランドで開拓を進めているが、日本と同様にタウンファッション用途などで人気が高まりつつある。
今後は生産拠点の拡充を図っていくとし、タイのタイナムシリインターテックスでの試験も始めている。「来年ぐらいには生産を開始したい」としているが、「中肉の生産が得意な拠点であり、スーツやパンツ分野に広げられればいい」と言う。
〈スミノエ「ベリー アロック PURE LVT」/塩ビ床材でバリエーション/カーペットと相乗効果も〉
スミノエは、新たに塩ビ床材をラインアップに加えて、提案幅を広げている。
床材の主用途の一つである国内宿泊施設は、2020年の東京五輪や、訪日外国人の増加で活況を呈している。ラグジュアリーホテルやコンセプトを重視した個性派タイプなど多様な宿泊施設が登場している。それに伴って床材に求められるアイテム、テイストも多様化する。
同社ではホテルをはじめ、各用途の幅広いニーズに対応するため、床材のバリエーションを増やして提案する。その戦略商材の一つが17年9月に発売した高機能塩ビ床材「BERRY ALLOC(ベリー アロック) PURE LVT」だ。
LVTはベルギーのベリー アロック社製。ここ数年欧米で成長しており、家庭、店舗、病院、教育機関、オフィスでさらなる需要拡大が期待されている。
木目調、石目調をテーマに、3Dプリント技術でリアルでナチュラルな質感を表現。0・5ミリ厚のウレタン耐摩耗層による高い耐久性とワックスを必要としないイージーメンテナンスを備える。施工が容易なのも大きな特徴。
商材は4層から成り、ポリウレタンのプロテクト層、ポリウレタンの耐摩耗層、ガラス繊維の意匠層とクリック層で構成。長方形・正方形サイズ、特許の4辺クリックを備えた接合置き敷タイプ、接着剤を用いて施工する接着タイプなど計5タイプの商品で構成する。
小売価格は1平方メートル当たり6400~1万800円。
塩ビ床材のみの提案はもちろんのこと、カーペットに塩ビ床材を併用することで空間表現の幅を広げる。コントラクト事業部商品部(カーペット業務用担当)の山中尚哉部長は「タイルカーペットとの相乗効果が期待できる」と話す。
塩ビ使いでは、塩ビ織カーペット「ツーテックツー」も提案する。ガラス繊維を芯として塩ビをコーティングした繊維をジャカード製織し、塩ビバッキングを施したファブリック調風合いを持つ。平織り調から柄物まで豊かな表情が可能で、さらに1本の糸に2色をコーティングすることで色に深みを持たせている。
バリエーション豊かな商材で、空間を彩る。