特集 尾州産地総合(2)/在名4商社 尾州との取り組み
2018年03月27日 (火曜日)
〈海外へ尾州を発信/タキヒヨー〉
タキヒヨーは国内に開発や生産の拠点を持ち、モノ作りに力を注いでいる。愛知県一宮市では商品開発に取り組む工場を設け、重要な戦略拠点として位置付けている。尾州の生地を扱うテキスタイル営業部は今後、輸出を強化し海外へ尾州の売り込みを図るとともに、尾州との連携も続けていく。
工場は2014年に設立。英式梳毛紡績機やシャトル織機などの設備を備える。同社のモノ作りの場として機能しており、生地の柄や色、伝統工芸などを取り入れたさまざまな商品開発に取り組んできた。展示会などの見本反を製造するが、糸については量産も行っている。
輸出の強化に向けて、同営業部は貿易を担当する国際営業部と、企画を担当するテキスタイル企画開発室と連携する。それぞれの部署の強みを洗い出し、商品の開発などに取り組む。中国、米国、欧州に拠点を持つ強みを生かし、「売り先はあるので、海外で戦える物は何かを考える必要がある。海外に向けてのチャンスはまだある」(小林元志部長)と話す。
同営業部は尾州の機業約20社と取り組み上質な生地を販売している。既存の百貨店アパレルなどに加え、新規先の開拓にも力を入れており、「同じ商品がたくさんある中で、他社にはない物として顧客をどう振り向かせるかが課題だ」と話す。
〈ノウハウ習得や人材育成/瀧定名古屋〉
瀧定名古屋の婦人服地部は、モノ作りについてのノウハウの習得や人材育成に力を入れている。川上からの戦略を強化するため、原料部門を立ち上げたほか、社員に対してはモノ作りの現場研修を実践。原料から糸、生地、加工といったモノ作りを知り、尾州との取り組みに生かす。
原料や原糸などの川上からのモノ作りや、そのノウハウなどを得るため、2年ほど前に原料素材部を創設。それにより、先を見据えた原料、原糸の手配などができるようになり、尾州の機業との取り組みもより強固になった。瀧浩之部長は「当社側からのモノ作りの組み立ても可能になった」と述べる。
人材育成も積極的に行っている。同部では5年以上前から、社員全員が尾州の機場や染工場などで現場研修を実施。尾州のモノ作りについての知識を習得し、それぞれの仕事に生かす。「さまざまな技術やノウハウを覚えることで、モノ作りに反映させることができる」と語る。
同社は尾州の機業約10社と取り組んでいる。協同して商品開発やモノ作りを進めていく中、当然深い知識が求められる。「相手の機業におんぶに抱っこではいけない。こちらも、それなりの所まではモノ作りを知っていることが大切」。今後は、これまで得てきた知識やノウハウを社内でどうやって継承していくかが課題と言う。
〈尾州に貢献する使命/豊島〉
豊島は尾州産地の特徴を糸から織り・編み、染色整理、さらにアパレルまでが集中している世界有数のファッション産業集積地と考えている。その産地に対して原料、原糸の供給から尾州で生産されたテキスタイルを国内・海外に販売する双方向の取り組みを行っている。
それだけに産地の発展に向けて今後、何ができるのか、世界で勝ち残れる産地のために仕組みづくりはどのようにするかが尾州に立脚する繊維専門商社としての使命とする。
豊島は、羊毛原料から梳毛糸、紡毛糸、化合繊複合糸、化合繊糸を扱う一部、綿糸、化合繊糸の二部、「テンセル」糸を展開する三部が尾州産地へ供給する。その素材各部署が製品部署と有機的に連携し、産地との深耕を図っているほか、三部はテキスタイル輸出にも注力している。
特に尾州産地の中心地、一宮市に拠点を持つ一部(一宮本店)では、「顧客に喜んでもらえるような仕組みづくり」(伊藤彰彦一部部長)を心掛けていると言う。尾州で生産されたテキスタイルをいかに末端まで流れるようにするか、世界のファッション情報を的確にスピーディーに提供できるか、原料コストなどが上昇する中、どのようにトータルコストを抑えられるかなど販売先に満足してもらえるためにやらなければならないことは多いとする。
〈今後も徹底的に糸作り/モリリン〉
モリリンのマテリアルグループは糸の開発にこだわり続けてきた。「上質素材物語」と銘打って毎年新たな素材を発表している。水谷智廣統括部長は「今後も徹底的に糸作りをしていく。それが尾州にも役立てるし、当社としての尾州との取り組み方だ」と述べる。
さまざまな糸の開発を可能にするのは、同社がこれまでに培った知見や技術があるから。撚糸や糸作りの工程を熟知しており、パートナーもいる。「昔ほど簡単に商売ができる時代ではない。だからこそ糸作りに力を入れる」と言う。
その一環が上質素材物語。これまで、さまざまな風合いや機能、特徴がある素材を開発してきた。同グループの基軸となっており、素材作りのリーディングカンパニーとして今後も継続する。「本物の素材作りを忘れてはいけないという思いも込められている」
尾州の素材を中国で販売もする。上海の拠点では生地売りの担当を4人配置。昨年からは、日本国内の営業スタッフと密に情報共有をしたり、尾州の素材をピックしたりして、中国内販向けに力を入れている。
同グループは2部4課体制を敷く。1部が原糸、2部が丸編みやカットソー生地を扱う。1部1課が合繊、同2課がウールを主力にする。3月には製品を扱っていた新潟出張所を1部2課に編入した。