再生セルロース繊維/苦渋の値上げ相次ぐ/深刻さ増すカセイソーダ高騰

2018年03月29日 (木曜日)

 レーヨンやキュプラなど再生セルロース繊維の値上げが相次ぐ。背景にあるのが副原料であるカセイソーダの歴史的高騰。再生セルロース繊維メーカーは安定調達の観点からカセイソーダ値上げをのまざるを得ない状況に追い込まれており、このため再生セルロース繊維は苦渋の値上げが続いている。(宇治光洋)

 ダイワボウレーヨンとオーミケンシはいずれも4月から、レーヨン短繊維を現行価格より10%値上げする。旭化成もキュプラ繊維「ベンベルグ」を4月1日出荷分から8%値上げする。いずれも背景にある大きな要因の一つがカセイソーダの高騰。レーヨン、キュプラはともに製造工程で副原料として大量のカセイソーダを使用するため、現在の歴史的な高騰が採算に深刻な打撃を与えている。

 カセイソーダは汎用化学品のため幅広い工業用途で使用されてきたが、過去には輸入品との競争激化による収益低迷などもあって国内メーカーは生産能力を絞り込んできた。ところが近年、紙おむつなどに使われる高吸水性樹脂やリチウムイオン電池の電極材料の生産などでも需要が増加した。このため特に中国など東アジア市場での需要が極めて旺盛となり、輸出を中心に価格が急騰した。

 カセイソーダの価格は、17年3月と比較して5割ほど既に上昇している。ソーダメーカーはもう一段の値上げを要請し、大口需要家との間で交渉を続けていた。需要家が約30%の値上げを受け入れる形でこのほど決着したもようだ。

 こうした動きは繊維分野にも波及しており、「サプライヤーの中には供給先を選別する動きも見られる。安定調達の観点から値上げを受け入れざるを得ない」と関係者は話す。

 カセイソーダの高騰で、特に打撃を受けるのがレーヨンメーカー。レーヨンの主原料である溶解パルプも製造工程で大量のカセイソーダを使用する。このためパルプメーカーが価格転嫁を進めており、溶解パルプも大幅な値上げが要請されている。ダイワボウレーヨンによると「現在、パルプメーカーと交渉中だが、ある程度の値上げの受け入れは避けられない」と苦しさをにじませる。カセイソーダの高騰に溶解パルプの価格上昇も加わることで採算の悪化は避けられない。

 このため、再生セルロース繊維メーカーが現在打ち出す値上げの意味は極めて大きい。ここで値上げを実施できなければ、今後の安定供給に支障が出る懸念すらある。幸いなことにレーヨン短繊維もキュプラ繊維も需要自体は旺盛な状態が続いている。こうした市況の地合いのうちにどれだけ値上げを浸透させることができるかが、再生セルロース繊維メーカーの今後の収益を左右することになる。