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特集 アジアの繊維産業Ⅱ(2)/ベトナム編/ASEAN生産の筆頭格に/日越互恵関係を育む途上

2018年03月29日 (木曜日)

 中国を補完する繊維産地としてベトナムの発展が衰えない。繊維製品の輸出は最大輸出先の米国向けをはじめ、欧州、日本の主要輸出先も増加基調を続ける。川上・川中産業基盤も急ピッチで整備が進む。

 ベトナム税関総局の統計によると、2017年の繊維製品輸出総額は約309億5千万ドルで、前年比11%増となった。最大の輸出先である米国向けは約123億ドルで7・3%増。続く欧州向けも6%程度増え、対日輸出も約31億ドルと7・6%拡大した。

 対米輸出は、現状20~30%の関税がかけられるにもかかわらず増勢。日系商社の駐在員からは「二国間の自由貿易協定(FTA)交渉が水面下で進んでいる」「日本だけでなく欧米のアパレルも生産地の移管先をベトナムに求めている」などの指摘が聞かれ、繊維産地としてのベトナムの注目度を物語る。今年中の発効が予定される欧州連合とのFTAも見据え、この流れは今後も継続するとみられる。

 ベトナム自身も主要輸出産業である繊維の競争力確保と基盤整備に躍起。競争力の確保では18年の月額最低賃金上昇率が平均で6・5%に収まったことが象徴的だろう。

 2年続けて10%を下回る水準としたことはミャンマー、カンボジア、バングラデシュなど近隣縫製国を意識した施策と言える。

 産業基盤の整備は不可欠な要素として国を挙げて川上・川中を対象に取り組んでいる。ベトナム繊維協会は現状40%程度の素材自給率を20年までに70%まで高める目標を掲げ、日系商社は技術を持ち込む形でこの方針に貢献している。

 台湾や韓国を中心とする外資系企業、現地系企業との協業を通じ、一貫縫製につながる素材の現地調達を具体化しつつある。コスト増や人員確保難で生産の難度が増す中国の受け皿として有用性を高めており、日越の繊維産業は互恵関係を構築する途上にある。

 環境規制を乗り越えながらいかに染色加工の基盤を整えるか、伸び率が落ち着いたとはいえ、今後も着実に上昇していく人件費コストを生産性向上でいかにカバーしていくかといった次の課題に立ち向かいながら、さらに関係を育てていく必要がある。

〈ベトナム事業機能拡大へ/ヤギ〈ベトナム〉〉

 ヤギ〈ベトナム〉の吉井崇社長は「素材の現地調達化が、ベトナム法人が事業を拡大する上での鍵」とする。付加価値品縫製の対応力を高めるととともに、素材調達を現地に求める取り組みを強化する。

 付加価値品生産ではシート状ダウン「シンダウン」使いの生産拠点を増強する。メイン工場1社では専用ラインを増やした。期中対応用に保税地区での備蓄を試験的に行う。同素材はセレクトショップで17秋冬に採用されたメンズアウターの売れ行きが好調。18秋冬で取り組みが深まる。

 ヤギが日本国内市場向けでライセンス契約したダウンブランド「イエティ」の拠点としても活用する方向で検討しており「工場選定や設備投資も想定する」。

 素材縫製一貫体制の構築ではセレクトショップ向けジーンズ生産、ショッピングセンターや通販向け春夏衣料などで進むが、さらにSPA向けの提案に着手。「質の高い生産管理・品質管理が欠かせない」と強調する。

 原料、生地販売も現地法人の重点分野とし、生地販売では織物に加え、カットソーの担当人員1人を増やして国内の日系縫製メーカーを開拓する。

 ヤギ〈ベトナム〉独自事業として米国向け製品供給も広げる。ヤギグループの北米カットソー縫製工場ソキャル・ガーメントで生産する付加価値品を一部、受注する事業に挑戦する。

〈ODM提案できる現法へ/豊島ベトナム〉

 豊島ベトナムの堀部和義社長は「従来型のOEMではなく、ベトナム一貫でODM提案できる体制にしたい」と現地法人の方向性を語る。2018年度(1~12月)はカットソー自社工場の生産枚数を、17年度比3割増にするほか、素材販売事業の売上高を倍にする目標を掲げる。

 17年度の豊島ベトナムは売上高が倍増。生地、製品ともに、ASEAN地域への生産シフトの影響があった。韓国系、台湾系生地メーカーと共同開発した素材を対日輸出用外資系工場に販売するなど、素材関連の取り組みが目立った。年産約180万枚の自社縫製工場の取り扱いも伸びた。

 リスク分散やリードタイム短縮などを目的とした中国からの生産移管ニーズが18年以降も進むとして、素材と製品が連動した現法機能を高める。素材は加工や技術を要する付加価値品を重視。特にカットソーは自社縫製と組み合わせた小ロット対応を目指し、差別化要素にする。「小ロット・QRも強みにしていきたい」と語る。

 縫製は工場を集約しつつ、既存工場へ小ロット・QRやCSR基準を満たす改善を依頼する。新規開拓にも取り組む。自社工場も約30%増の年産250万枚を目指す。

〈最重要拠点として開発/三井物産アイ・ファッション〉

 三井物産アイ・ファッション(MIF)は三井物産のベトナム法人に担当者を置いて現地素材の開発に取り組んでいる。定番品の供給体制を確立し、差別化品開発と縫製品種の拡大を進める。

 差別化品ではスポーツ分野向けで、綿と機能糸を複合した織物が18秋冬衣料から縫製一貫でスタート。機能を持った商材として提案に力を入れる。

 台湾系メーカーと協業してベトナムで製織、加工した透湿防水機能素材「パーテックス」を欧州向けに生地販売する取り組みも始めた。

 一般衣料用途でも韓国系メーカーと取り組んだ綿複合の2方向ストレッチパンツ地の提案を開始した。中国企業との開発では、細番手綿糸を調達して高密度に織るコート地が、縫製一貫で一部、18秋冬衣料での採用を見込む。

 MIFにとって、ベトナムはASEAN地域の最重要拠点となっている。素材ラインアップは商品カテゴリーごとに取り組み先を絞って現地生産品種を増やしていく考え。

 縫製も中国からの生産移管を受けて雑貨やインナー、セーターなど対応品種を増やす。生産拠点を南ベトナム、北ベトナム両方で広げる。技術指導者、品質管理人員も増強する方針を掲げる。MIFの担当部署である調達戦略室から工場を巡回する頻度や人員を増やす。

〈人員、サービスで体制強化/QTECベトナム試験センター〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)ベトナム試験センターは人員の増強を検討している。2017年、試験依頼件数は前年に比べて倍増。生地の依頼が目立ってきた。製品でも雑貨の申し込みが増え、対応力と差別化要素となるサービス機能の強化を目的に、提携先検査機関のインターテックと話し合いを進める。

 茂上和之所長によるとポリエステルや綿100%素材、パンツ用複合素材や重衣料向け織物など「ベトナム現地での生地開発案件が立ち上がってきている」。堅ろう度、物性試験の対応に加え、防汚性や抗菌・防臭性など機能素材に関する問い合わせも増加傾向という。

 ベトナムを活用したサプライチェーンの構築が進展する見方から、人員増強を検討。インターテックから日本向け専属の人員を追加し、3人体制にする。機能素材に対応する試験機や専用スペースも一部、不足するため導入を検討していく。

 付加価値サービスも追加したいと考える。直接貿易を検討する顧客に生地工場や縫製工場の情報を提供するサービスに加え、「集荷範囲をカンボジアなどに広げることも考えている」。インターテックのハノイ本部からベトナム全域をカバーする強みを高める。

〈検品とエコテックスで差別化/ニッセンケンホーチミン試験センター〉

 ニッセンケン品質評価センターのホーチミン試験センターは「エコテックス」認証とカンボジアプノンペンの検品機能を差別化要素にする。

 2017年9月に営業を始めた同センターは生地の試験依頼が想定通りに増えているが、同国に進出した日系検査機関の中では後発で独自のサービスメニューによる差別化を鍵とする。藤田耕三ホーチミン試験センター所長はプノンペン検品センター所長を兼任。ピックアップサービスを展開する検査機関があるが、検品に対応するのはニッセンケンの独自性。試験と検品の組み合わせができる体制をアピールする。

 布帛製品、カットソー製品に加え横編み製品の検品を始めた。ホーチミン試験センターとの連動を高めるために17年12月には試験の受付窓口を設けた。ホルマリン汚染を防ぐベビー服対応スペースを改修するなどライン増設も考えるという。

 エコテックスはニッセンケン品質評価センターがアジアで唯一の認証機関となっている。消費者や自然環境に配慮した製品作りや社会的責任に貢献する生産施設・サプライチェーンの構築は世界的に重要性が高まるため、ホーチミン試験センターが東南アジアでの窓口になることで、存在感を高める考え。

〈付加価値シャツ生産を拡大/トスガメックス〉

 ベトナムの有力縫製メーカーであるアンフックグループで、対日シャツ縫製工場のトスガメックスは付加価値品対応強化に力を入れている。

 同社は大型3ラインと50~100人の中・小規模2ラインで月に約20万枚を生産。百貨店アパレルやセレクトショップ向け中・高級品からチェーン店向けボリュームゾーンまでメンズシャツを幅広く生産する。輸出保税区に立地することで短納期生産も強み。

 付加価値品の生産強化は、日本市場で小ロット・多品種化が進むことが理由。テープ縫製やハンドステッチなど技術を要する商品を増やしており、月産枚数のうち3万枚を同分野に充てる目標を掲げる。

 コスト対策も重視する。生産性向上のために導入した報償制度は「中国と同程度の生産性になっている」など効果を表すが、さらなる改善に向け工程管理を可視化するシステムを一部ラインに導入するなどの設備投資も視野に入れる。

〈人員増強で品管体制確立/蝶理〈ベトナム〉〉

 蝶理〈ベトナム〉は現地生産した原糸、生地販売に機能を絞って事業を展開する。2016年7月に営業活動を本格化し、台湾系機屋との取り組みを中心にしてスポーツウエア向けやカジュアル向けアウター、パンツを用途とするポリエステル長繊維織物を開発。取扱高を伸ばしており、18年は17年比倍増を目指す。

 技術指導、品質管理体制の確立が鍵。スタート時に6人だった同社の陣容は現状、20人。当初の予定より増やした。営業人員を増強したほか「顧客の要求レベルとのギャップを解消する品質管理体制にする」(岸誠二郎社長)目的で、主力の台湾系メーカー2社にそれぞれ1人ずつ常駐。昨年の9月から派遣し「ロス発生率の低減などで、足元では成果を出している」。

 一方、「数量は計画通りの伸びで推移するが、品質管理には改善の余地がある」(岸誠二郎社長)とし、技術指導の日本人スタッフも派遣。「主力事業として、まずは確実にこなす」ことに力を入れ、今期のロス発生率を17年比で半減させる。

 現状、最終消費地が日本市場となる取り組みが基盤だが、今後に向けて非日本向け販路開拓も見据える。

 調達先をベトナムに求める傾向が海外のアパレルメーカーにも見られるため。「ポリエステル長繊維織物事業を確実にこなし、その体制を提案していきたい」と意欲を見せる。

〈現地素材活用が進展/スミテックス・ベトナム〉

 スミテックス・ベトナム(SVL)の佐藤仁社長は「素材の現地調達が具体的な実績として立ち上がってきた」とベトナム一貫生産の手応えを語る。同社は2017年度(1~12月)に約10%の増収となったが、けん引役となった中部で生産するパンツを中心としたボリュームゾーン向け商品のうち、多くが素材を現地化したものだった。生産ロットが合う定番品向けで、これまで国外調達に頼ってきたものの置き換えが進む。

 18秋冬衣料でもベトナム一貫のサプライチェーンが進展する見込み。顧客からの要望を受けて中国などからの生産移管に取り組んでいる。SVLが独自に企画する素材開発にも力を入れる。実績として確立したパンツ地に加え、外資系現地メーカーと取り組むポリエステル綿混素材、同レーヨン混素材、水着用トリコットなどが試織段階にある。具体的な話し込みに入っている素材もあるという。

 18年度は売上高、利益とも微増の計画を掲げるが、重視するのは素材縫製一貫体制の基盤作り。「19年の飛躍につなげる」

 このため、素材開発では協力先との関係強化が課題。ボンディング物など中高級衣料向け付加価値品にも着手しているが、日本の顧客と隔たりがある最小ロットの問題を解決するため、製品化にこだわらずに生地段階で販売することも検討しながら継続発注を通じてパイプを太くする。

〈19年めどに独自企画提案へ/TIのベトナム事業〉

 東レインターナショナル(TI)のベトナム事業は、製品OEM/ODM事業の生産管理を担うホーチミン事務所と素材開発を手掛けるトーレ・インターナショナル・ベトナム(TIVN)が進める。

 ホーチミン事務所は実需期に引きつけて発注する傾向が強まる中で、オンシーズンでのライン確保に取り組む。山口孝明事務所長は「息のかかった協力工場を開拓し、早めに生産ラインを確保することが必要」と語る。

 TIVNは、ASEAN域内の東レグループ製造拠点の原材料を使った開発などが台湾系、韓国系生地メーカーを協業先に先行する。主力顧客向けの素材を中国からベトナムに移す開発から始めている。19年をめどに、TIVN独自企画品を提案できるようにする。「現地法人としてこうした機能を持つことが目標」と語る。