特集 カーペット(4)/カーペットメーカー/設備投資が活発/進む水平連携
2018年04月16日 (月曜日)
カーペットメーカーが、積極的な設備投資を行っている。自社の強みや付加価値を磨くとともに、今後も旺盛な需要が見込める用途への対応力を高める。
山本産業は3月末、米国CYP社と共同開発した新型タフト機「CYP」を導入。世界に1台しかないタフト機で、従来のCYP機と比べて高速化し、最大12色の多色対応を実現した。フリーゲージでカット&ループパイル。4・2メートルの広幅となっている。パイル密度を自在に調整でき、多色使いで多様な表現が可能。汎用性が高く、ホテルやカジノ向けなど幅広い活用を狙う。
同社はここ数年、米国CMC社製のタフト機「カラーポイント機」、デジタルジェットプリント機「クロモジェット800」を相次いで導入。CYP、カラーポイント、クロモジェットの“三種の神器”をそろえるカーペットメーカーは、米国で3社ほど、欧州ではゼロという。同社ではデザイナーも増員しており、「世界の頂点を目指したモノ作り」(山本恭弘社長)で勝負する。
日本絨氈は、17年に開設した滋賀工場(滋賀県甲賀市)を前年秋口から1日12時間稼働している。今年は本社工場と合わせて800万平方メートルの生産を見込む。さらに7月をめどに、滋賀工場へ柄物タフト機(4メートル幅、10分の1ゲージ)を導入する。全幅フルリピートで、柄表現が自在にできる。池﨑博之社長は「カテゴリーキラーを目指すとともに、垂直連携を強化する」方針を示す。幅広い用途を手掛けるのではなく、スポーツ用人工芝、タイルカーペット、自動車オプションマットなどに絞って展開。垂直連携では仕入れ先、販売先とタイアップして進める。
重点用途に絞った設備改造も目立つ。東レ・アムテックスはオプションカーマットを重視し、ファインゲージで繊細な柄表現ができるよう設備改造して19年に新製品の発売を目指す。
オーノは「これまで宴会場用などの柄物で入ってきたが、需要が高まっている客室用を強化する」方針を示す。同社グループのサンミック(和歌山県かつらぎ町)の和歌山工場にあるタフト機1台を改造して、高低差をつけたカットパイルとループパイルの柄表現が可能な特許取得の「MLC」(1/8ゲージ、4メートル幅)を2台体制にして客室用に充てる。
長谷虎紡績も更新したプリント機で、鮮明な柄を表現できる「クロモジェット400」タイプ(4メートル幅)がホテルのリニューアルなどで活躍している。
水平連携も活発化している。トーア紡マテリアルは、保有する連続染色設備を生かした企業間連携を進める。同社は連続染色でグラデーション染色の特許を16年6月に取得。同時に単色ではなくカラー染めができ、染パターンも変えることが可能で通常の反染め染色より意匠性に優れる。
東レ・アムテックスは、自社保有のウインス(バッチ)2台の染色加工設備と「他社の強みを組み合わせてより競争力のある商品を開発してウインウイン」(宮石和彦社長)へつなげる。
〈次代を担うキーパーソン/顧客先へ出向き応える/日本絨氈 取締役企画開発部長 池﨑 雄太 氏〉
――仕事で重視していることは何ですか。
時間がないときでも顧客の方の下へ出向くことを心掛けています。顧客あっての自社、顧客が求めることにどれだけ応えられるかが存在意義につながります。外に出て顧客と接することを大事にしています。
入社後総務、製造、営業、企画と経験してきましたが、できるだけ何でもやっていきたいとの思いがあります。
――今後の国内カーペット市場をどのようにみていますか。
国内は少子高齢化で人口減少が見込まれていますが、カーペット産業にとって必ずしも悪い環境ではないと考えています。クッション性のあるカーペットは安全性に優れており、高齢化社会が進展するのに伴い、需要も増えると見ています。
――米国への留学経験があります。
2010年の入社後、しばらくして米国・シアトルのコミュニティ・カレッジで語学やコンピューター関係を学びました。中国や韓国、スペインなど多様な国の人と、文化の違いにも触れながら学べた点も大きく、視野を広げられました。
――貴社は輸出に関して3~4年内にタイルカーペット輸出比率(販売量)を10%に引き上げる方針を示しています。
3月に開かれたアジア最大級の床材総合見本市「ドモテックス・アジア/チャイナフロア」へは今年、3回目の出展となりました。同展などを通して中東の学校施設や、モンゴルの空港などにも当社のタイルカーペットが採用されています。小さな一歩ですが、もともとゼロだったものを増やす海外販売には面白さがあります。
――弟の彰吾氏も取締役営業担当を務めています。
弟は冷静堅実で私とは逆です。お互いの強みを生かして100年企業、100億円企業を目指します。
〈廣岡紡績/ヒートセット機再導入/今月本格稼働〉
カーペット用パイル糸の加工を手掛ける廣岡紡績(大阪府泉南市)は今月、導入したヒートセット加工機を本格稼働する。当面、月産20トンの加工体制で、18年後半から同50~60トンを目指す。
同社は17年7月末の火災で工場1棟(延べ床面積約1200平方メートル)を全焼。新導入したパワーヒートセット社(ドイツ)のヒートセット加工機「パワーヒートセット」も被災した。
今年2月に同型のヒートセット加工機(36錘)を再導入し、3月後半から稼働している。ベルギー製ワインダーも再度入れた。小ロット、短納期対応も特徴に挙がる。
撚糸機も焼失したが、18年末に新機(300錘)を入れる予定。
市道裕久社長は「多くの温かいご助力を頂いた。恩返ししていきたい。期待を寄せてくれた顧客の方々、社員がついてきてくれたことが励みになり、前を向くことができた」と話す。
カーペット業界では、熱を与えてパイル糸の撚り止めを行うヒートセット加工のキャパシティーが不足気味。現在は需要が落ち着いているため大きな問題となっていないが、今年後半から期待されるカーペットの需要増加時に再燃する可能性もあり、同社の本格稼働は業界にとってプラスになる。