OTEMAS/出展機種トレンド
2001年09月28日 (金曜日)
《化合繊機械/焦点は需要創出開発へ》
化合繊業界は、欧米や日本など先進諸国からアジアへ生産の比重が移行してしばらくが立つ。その間、アジアにおける設備の増設意欲はますます盛んになり、それに応えようと日本と欧州のメーカーの間で化合繊機械の大型化、高速化競争が繰り広げられてきた。
フィラメント糸のワンステップ紡糸巻き取りでは毎分8000メートルを超えるものや、ステープルで日産200~250トン規模の機械が登場し、また巻き取り機構のマルチエンド化、ボビンの長尺化など高生産の期待に応えている。
ただ近年は、そうした大型・スピード化の追求もさることながら、むしろ関心は生産の安定性などに移ってきている。品質管理の精度向上、操業やメンテナンスの簡素化と環境の改善、省エネルギーなど総合的なプロセスの改善に視点が変ってきた。
発展途上国では、熟練技術者の不足傾向の中で、自動品質管理システムや自動保全管理システムが操業の信頼性を高めるうえからも重要な要素となっている。U%向上のモニタリングシステムや操業中の非接触張力などの自動品質管理技術はますます重要になってきていることを反映。各化合繊機械メーカーは生産安定向上に向けた技術開発への取り組みを強めている。
一方、化合繊素材の多様化さらに進展。ポリマーの改質、ファインデニール化、コンジュゲート化などに対する開発意欲は旺盛だ。こうした面で、今回のOTEMASでは口金機構の精度向上を始め、ボビンホルダーの長尺化、マルチエンド巻き取り、ボビン交換の自動化などの合理化と絡めた対応が注目される。最近は、スパンデックスや産業資材用の機能性に重点を置いた素材が普及していることから、それに対応した中速ワインダーの性能開発に対する関心も高い。
糸加工は、前回のOTEMASで毎分1200~1300メートルレベルの高速化が実現したが、今後はスパンライクやストレッチ化、複合化など素材傾向に対応した仮撚り加工、エアー交絡加工の付加価値向上、そして生産性の低い撚糸機などの性能改善に注目が集まりそう。
今回のOTEMASは、日本メーカーの既存機種の操業性の改善により、実用機としてアジアユーザーから評価を得るものとみられる。
《紡績機械・準備機/自動ワインダーで革新機種》
紡績機械は、欧州メーカーの積極的な展示がないこともあるにはあるが、生産性や品質、合理化などの面ではすでに一定水準に達した分野だ。それに加えて、従来と異なった革新的技術を提示し難いほど開発の歴史は長い。
しかし今回のOTEMASでは、日本メーカーを中心に精紡機など新機種の開発、一段の品質向上やメンテナンスフリーに向けた周辺機器、オプション機器の充実など随所に「苦労した」提案が望めそうだ。
この分野で最大の目玉商品は、コンパクト・スピンニング(毛羽伏せ精紡機)や毛羽伏せ装置対応の自動ワインダーの新機種だ。
対費用効果など、コンパクトスピンの本格普及には多少の時間はかかりそう。しかし、日本国内でも話題を集めており、テキスタイル化が予想以上の早さで進んでいる。リーター社など欧州メーカーの実機は登場しないが、豊田自動織機が「実用機としてユーザーの評価を仰ぎたい」と、新機種を披露する。また、村田機械は、従来のマッハコーナーとは完全にメジャーチェンジした新自動ワインダーに毛羽伏せ装置を搭載し、美しい糸を巻き返す。
「究極の精紡機」として発表する豊田自動織機の単錘駆動方式の新型精紡機も注目される。ITをフル装備し単錘駆動の特徴を最大限に生かし、高品質、高速安定性、多品種対応、操作性やメンテナンスの容易さなどを訴求する。
革新紡機では、前回のOTEMASで話題を呼んだ村田機械のMVSジェットスピナーがさらにバーションアップして登場する。
色物異物検出装置は、今や紡績機械分野で標準装置的様相を示す。今回も混打綿機やワインダー部での除去装置が各社から提案される。とくにワインダー分野では、村田機械の新型自動ワインダーのスラブキャッチャーが糸欠点や異物除去に威力を発揮する。
このほか、カード、練条、コーマ段階などでも各メーカーはニューモデルや従来機のバージョンアップ、さらには周辺機器の充実を図り提案する。研究開発で共通するコンセプトは、単なるハイプロ・マスプロの追求ではなく、高品質、高品位、安定操業、メンテナンスフリーなどのさらなる訴求という点だ。
《織機・準備機/AJLはニューモデルに》
織機分野も、欧州メーカーはやや消極的出展だ。しかし、日本メーカーを中心にジェットルーム、レピアさらにはプロジェクタイルでそれぞれ新機種が多数登場する。
ジェットルームは津田駒工業と豊田自動織機の2社が実機を出品する。第一人者にふさわしく、両社とも新機種を積極提案する。シェットルーム、とりわけAJLは年々バージョンアップし、従来レピアやプロジェクタイルの製織領域であった難易度の高い織物や超広幅分野まで、高生産性という特性を生かしながら製織する段階に達している。両社の新機種はITをふんだんに取り入れたり、さらなる省エネやメンテナンスフリーの向上を図っており、完成期に達しつつあるAJL開発の集大成ともいえそうだ。
津田駒はこれまでのZAXにiTボードを搭載したニューモデルの「ZAX―e」を実演する。豊田自動織機はJAT610よりさらに30%の省エネ実現などを特徴とするJAT610―NEWタイプを発表する。
またWJLでも、両社はニューモデルを発表し、超異番手使いや高品質織物の製織を実演する。たとえば豊田自動織機は測長ブロアモータを除去しており、省エネや緯入れ安定性などをアピールする。さらに両社は、ITを活用してのWebSCMやネットワークソリューションをそれぞれのブースで提案する。
レピア織機はピカノールの実機が登場しないのが寂しい。しかしそれを補い、石川製作所、平岩鉄工所、ソメット、バマテックス、スルザーテキスティール、バンデビーレなどがそれぞれニューモデルを発表する。
レピア織機で注目されるのは、従来の領域が徐々にAJLに侵食される中、レピアの価値を生かした領域を新たに構築する作業だ。たとえば産業資材分野であり、また衣料関係ではコンパクトヤーン使いなどの高付加価値織物がそれに当たる。各織機メーカーともこのあたりを意識。それぞれレピア織機の特徴を生かした高難度織物を仕掛け競演する。
一昨年のITMAパリでは、レピアガイドの有無が関心を集めた。今回は、それがよりはっきりとした流れとして出てくる。
プロジェクタイルはスルザーテキスティールの独壇場だ。今回は完全エレクトロニクス化などの特徴を持つニュータイプ「P―7300」が日本で初めて公開される。しかし、前回のOTEMASで話題となったマルチフェーズAJLのM8300の出展はない。
《編み機/キーワードは「ガーメント」》
横編機、丸編機、経編機の各分野で世界的なメーカーが出展する。いずれも上級衣料品の大量消費国に本社を置くメーカーであり、機械開発のフォアランナーの役割を果たしている企業だ。その点で、消費地型生産のあり方の提案が、ハイライトになるとみられる。
キーワードはガーメント。横編機ではホールガーメント(無縫製ニット)が注目されており、丸編機ではガーメントレングス機が新しい装いで登場する。消費地における生産では、編み以降の後工程が省略できるかどうかは重要なポイントだ。また、魅力ある編み地の提案もなされる。横編みのホールガーメント機では、一枚のニットウエアが編み機上でほぼ完成品として製造される。コストの高い縫製工程が少なくて済む。また、編成テクニックが多様になり、従来はできなかった編み地が作り出せる。新しい柄組みシステムやビジュアル・フィッティング・システムも紹介される。
丸編み機では、ファインゲージのガーメントレングス機が登場する。従来の機械では7~10ゲージだったものが、18ゲージまで可能になった。また、両面選針の技術を採用し、操作性の向上、編み地のバラエティー化が可能になった。経編機では、新しい選針機構であるビエゾジャカードによるコンピュータ・トリコット機が登場する。
《染色加工仕上げ機/デジタルプリントが商業化》
内外の染色加工機械とその関連メーカー、および取り扱い業者40数社の出展がある。
前回のOTEMAS展示以降、実用化に大きく進展したのはイングジェットプリント機だ。無製版デジタル入力で多品種少量短期生産のニーズにマッチした省力化プリント技術として注目される。
この分野でフラッグポジションにある日本の3メーカーの新機種、東伸工業の「イメージブルーファー」、ミマキエンジニアリングの「TX2―1600」、コニカの「ナッセンジャーKS―1600Ⅱ」がここ2~3年、それぞれ工夫改良を加え登場する。今回はとくに、注目のITパビリオンでその性能が実演展示される。各機種ともそれぞれユニークな特徴を持ち合せ、かつ解像処理能力の向上、配色効果など染料面からの改良も含め実用化の進展が注目される。すでに見本製作用から本格生産機として、トータルコストのメリットがどれほど実現するか、ユーザー業界の関心は高い。
浸染分野では、液流染色機は高品位で複雑な複合素材の染色に対応できる新機種の展示が期待される。
また、IT技術を駆使した自動化と管理技術の精度向上、精度の高い自動調色・調液やマテハンなどの補助機能の展示に関心が集まりそうだ。
仕上げ加工は、化学薬品にできるだけ依存せず、素材の持つ本来の生地を生かすさまざまな物理加工が今後の課題だ。そのため、この分野の機械メーカーの今OTEMASにおける努力成果が注目される。最近話題の多いプラズマや超音波加工などの展開も注目点だ。
ヒラノテクシードが昨年のテクテキスタイル展で公開した、溶剤を使用しない新しいコーティング機が商業生産機として登場する。染色加工では永遠の課題である環境対策において、染料薬品のリサイクルを含めて機器システムの開発が注目される。
《ITパビリオン/華やかなITゾーン》
特別ゾーンのファッションショーでは、広く公募した作品からアパレル作品による3DCGのデジタルファッションとリアルファッションの競演が見ものだ。また、リアルファッションでは韓国と上海からそれぞれ10数人のモデルが来日し、最新ファッションを披露する。
さらに特別ゾーンのインターネットビレッジでは、ダイワボウ情報システムが「ブロードバンドが運ぶ、感動eXperience」のテーマで企画。国内外のほとんどのパソコンメーカーと周辺機器メーカー、ソフトメーカー24社がブロードバンドを始めとした感動の世界を演出する。
数10台のPDPによる迫力のある映像や、音による演出などとともに各種サービス&ソリューションも提案される。またプリンター、プロジェクター、デジタルカメラなど最新の周辺機器、さらにはPDAや無線LANなどネットワークの提案も楽しめる。メーカーの中には、PDAやデジカメを来場者に貸与して独自に楽しんでもらう企画も用意している。
もう一つ注目されるのは、マイクロソフトがWindows95以来の大変革として開発したブロードバンド対応OS「Windows XP」だ。11月中旬の日本出荷に先立ち、OTEMASで公開する予定だ。
企業出展ゾーンでは、インクジェット捺染システムを中心としたデジタルプリンティングや、CADシステムの応用による製作過程の効率化などが注目される。eビジネス関係の大集合も大きな特徴だ。
イーシャトル、ファイバーフロンティア、コロモ・ドット・コム、いといとドットコム、ブレア、ワールドクリエイティブラボなど繊維ファッション分野で展開する大半のコンテンツ、企業が勢揃いする。
さらに、内出展を含め50社を超すシステムインテグレーターやソフトハウスが参加し、繊維ファッション分野だけでなくさまざまな分野で幅広くソリューション提案がなされる。また、物流システムやウエアラブルコーナー、海外企画によるOTEMASシティーなど実に多彩な企画で構成されている。