スクールユニフォーム(8)/アパレル編/学校支援の姿勢、鮮明に

2018年05月29日 (火曜日)

 学校、生徒数が年々減っていく中、学生服メーカーは、単なる制服供給にとどまらない、新たな戦略を描く必要性が強まってきた。学校との関係をより深めるとともに、学校支援の姿勢を鮮明に出しながら、これからの活路を開く。

〈学校支援強め、採用校拡大/今年上回るMC校獲得へ/トンボ〉

 トンボ(岡山市)は18春入学商戦、大幅な新入生の減少や全般的にモデルチェンジ(MC)校が少ない中、MC校獲得そのものは前年より若干少ない程度で確保し、「厳しい年だったが、善戦できた」(谷本勝治執行役員)。納品やセミナーなど学校支援の姿勢が「評価を受け、例年に比べて喪失校も少ない」結果となった。

 19春入学商戦のMC校については、既に今年を上回るペースで新規採用校を獲得しつつある。5月の段階で採用校数が前年同月より若干多く、既に今入学商戦の採用校数を突破。既存の制服採用校を死守し、学校支援を強めながらMC校の新規獲得を増やす。

 採用校が増えつつあるブランド「イーストボーイ」は、導入した学校で入学志願者が前年より増え「生徒募集で効果があり、学校のブランディングに貢献できた」。来年は10校まで採用校が増える見通しで、生徒募集やブランディングを強化する学校にとっての“起爆剤”としての効果を狙う。

 店頭販売向けでは今入学商戦からニット製の「ビクトリー」や、抗菌防臭機能を進化させた「マックスプラス」など、詰め襟服の新商品を充実。販売店によっては「試着してもらえれば購入してもらいやすい」との声が聞かれ、来入学商戦での販売拡大に期待する。

 7月から東京支社(東京都台東区)を本社化、「学校への訪問頻度を上げる」など関東での営業力をより強化する。昨年発表した自社ブランド「バーシティメイト」によるファッションデザイナー・松倉久美氏とのコラボ企画は、学校のイメージに沿ったおしゃれな制服を供給できるなど、MC校の獲得への動きを一段と加速する。

〈きめ細やかな対応力強化/他社にない視点で商品開発/児島〉

 児島(岡山県倉敷市)は18春入学商戦、制服の売り上げについて前年並みを確保した。今年は新入生の大幅減で店頭向け商品の販売が減少したが、既存の制服供給先の私学では生徒数が増え、さらに通学用バックで学校指定での受注も拡大。「販売店も含めてきめ細やかに営業してきたことが成果につながってきた」(石合繁則専務)

 これまで女子向け制服は、学校がある地元企業が供給するケースが多かったが、「高齢化や生産拠点の確保が難しいことから、当社に生産依頼も少なからず出てきた」。

 キッズデザイン賞を受賞したニット素材の学生服は、販売店の新規採用もあり売り上げ増に寄与、今後も販売地域を広げる。

 同業他社も関東地区の営業に力を入れているが、引き続き「企画、営業両面でよりきめ細かい対応」によって、来入学商戦も新規MC校獲得に取り組む。

 昨年12月から稼働している本社の物流センターは、近隣で活用していた物流倉庫を集約し、定番商品を中心に出荷を効率化。アソートによる出荷も対応を強める。

 7月2日から1週間開く予定の展示会では、今回も「安全・安心・愛」をテーマに設定。サブテーマ「タッチアンドトライ」として「触って、試して」みるような点を重視した商品をそろえる。例えば暑い夏に応じた冷感や涼感といった素材を使ったものを提案。体育衣料では透けにくい素材を採用するなど、素材視点で製品を企画し、「他社にない」商品開発を進める。

〈ソリューション提案広がる/ニーズに応える商品力充実/菅公学生服〉

 菅公学生服(岡山市)は18春入学商戦のモデルチェンジ(MC)校の獲得について、関東や中京地域では「例年以上の獲得率だった」(問田真司常務)ことに加え、「獲得校数そのものも前年に比べ減っていない」と健闘した。「ソリューション提案や、学校のニーズに応えられる商品力が充実してきた」ことが貢献した。

 2013年から展示会を「カンコーソリューションフェア」とし、学校を総合的に支援する姿勢を明確にしてきた。カンコー教育ソリューション研究協議会を通じた学校教育のサポート事業を本格化しており、現状、私学を中心に約20校と取り組んでいる。

 支援する学校によっては改革で深く取り組む事例もできつつあり、一部の学校のオープンスクールでは魅力発信のプレゼンを同社が手掛けたことによって、翌年の入学志願者が増えるなどの成果も出てきた。学校のブランディングやキャリア教育など、事業内容に対する「確信を持ち始め、自信につながりつつある」(岩井聡開発本部副本部長)と、今後は支援内容をより明確化し、事業に携わる人材育成も強める。

 19春入学商戦のMC校についても「大都市部を中心に獲得できている」(問田常務)とともに、他社に制服採用校を奪われる喪失物件が「前年に比べ半分」で、採用校の拡大に手応えを示す。「ダヴィンチプロジェクト」や「カンコー×アースミュージック&エコロジー」など、新企画・新ブランドによって「提案の幅が広がり、多くの学校の形作りを手伝える」ことを強みに、MC校獲得を加速する。

〈防災教育の普及目指す/女子向けで新ブランド投入/明石SUC〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は、18春入学商戦のモデルチェンジ(MC)校について、「思ったほど私学では生徒数が減らず、(MC獲得校で)想定していた数字よりは高く維持することができた」(柴田快三常務)と健闘した。

 店頭販売向け商品も、ニット生地を使った詰め襟服「ラクラン」や、スポーツの「デサント」ブランドの通学かばんの販売が堅調。カッターシャツのフォーマル性とポロシャツの機能性を兼ね備えた「ラクシャツ」も「毎年着実に販売量を伸ばし、安定してきた」。新規の販売店も開拓でき、売り上げを維持できている。

 19春入学商戦のMC校のついては、自社の制服採用校を他社に奪われる喪失校は「今年より少なく、獲得校が増える」見通し。オサレカンパニー(東京都千代田区)との共同企画の制服ブランド「O.C.S.D.」や、ジーンズメーカーのビッグジョン(倉敷市)とのコラボ企画の制服も採用校が少しずつ増え、女子向け制服では新ブランドの投入を計画する。

 昨年から取り組んでいる防災教育の普及に向けた「明石SUCセーフティープロジェクト(ASP)」についても一段と力を入れる。日本で唯一社会防災学科がある神戸学院大学(神戸市)と昨年提携し、防災教育の普及や防災関連の商品開発に産学連携で取り組む。

 社内では、約100人が防災アドバイザーの資格を既に取得。防災ヘルメットや、自転車通学で着用する高視認ベストなどの採用が増えてきたが、「防災に関連する教材があまりない」ことから教材開発も進め、新しいビジネスにつなげる。

〈ニッチ分野で強みを発揮/小学校市場をより深掘り/オゴー産業〉

 オゴー産業(岡山県倉敷市)は18春入学商戦、制服の新規採用小学校を順調に伸ばした。全般的にモデルチェンジ(MC)校が少なく、新入生も前年より大きく減少し、例年よりも「静かな商戦」(片山一昌経営企画部長)となった。

 ただ、得意とする小学校のMC校は順調に獲得。店頭商品では今入学商戦から投入した、程よい黒さやウール感のあるタッチなど「抑えどころをしっかり抑えた」詰め襟服「鳩サクラNEO(ネオ)」の販売が「予想以上に良かった」と言う。

 19春入学商戦に向けても引き続き、小学生服市場の開拓に取り組む。得意分野の「小学校をもっと深掘りする」とともに、中高も含め「ニッチ分野で強みを発揮する」ことによって採用校の拡大につなげる。

 ここ数年、大阪市立榎本小学校(大阪市鶴見区)や、京都教育大附属桃山小学校(京都市)など、制服がなかった学校への採用実績も出始めてきた。「ユニフォームとしての集団美、識別性といった安心安全につながるファクター」を追求してきたことが貢献。地域の安全な環境作りに役立つ「全国安全マップコンテスト」や、防災頭巾が付いた多機能ランドセルなど、ニッチで特色のある取り組みや商品で、新たな市場を広げる。

 6月に展示会を予定し、詰め襟服鳩サクラNEOでポリエステル100%素材の新タイプを披露する予定。鳩サクラを含め、「コシノユマ」やスクールバッグの「美津和タイガー」など、「ブランドを認知してもらうように、さまざまな仕掛け」をしながら市場開拓を進める。

〈工場の生産体制強化/シルクの歴史も伝える/ハネクトーン早川〉

 スクールネクタイでトップシェアを誇るハネクトーン早川(東京都千代田区)は、2019年度の入学商戦に向け、生産体制を強化する。ネクタイ事業で微減収だった18年度の課題を洗い出し、戦略を見直す。

 栃木県下野市にある自社工場は今年度、新卒4人を採用し、70人体制で生産する。工程の内製化を進めると同時に、設備投資も積極的に行う。今年は東京都の助成金を活用し、サージングミシンと眠り穴かがりミシン、2台目になるCAD/CAMを取り入れ、小ロットの別注に対応できる体制を整える。生地を調達している工場でも設備投資を進めており、早川智久社長は「うまくタッグを組めている」と話す。

 天然素材の文化的な価値も訴える。例えば伝統校の制服のスカーフに使われることが多いシルク。創業当時からの仕入れ先がある山形県鶴岡市の絹産業が昨年7月、日本遺産に登録され、学校にシルクの生産背景を伝えていくことも検討する。

 女子のリボンをはじめスクールネクタイやリボンは、他の学校との違いを出せるアイテムとして注目される。最近は、LGBTに対応する制服を採用する学校が増え、制服のアイテムも拡大している。女子がネクタイを選ぶケースも目立ち始め、品番が増える可能性も出てきた。

 少子化による市場の縮小など学生服を取り巻く環境は厳しいが、早川社長は「生産や企画力を評価してもらえるようなアプローチを続けたい」と前を見据える。

〈オンライン購買選択肢に/従来の在り方に一石投ず/瀧本〉

 瀧本(大阪府東大阪市)は、学校が指定する制服を入学時にオンラインで買えるようにする。奈良市立一条高校(奈良市)と組んで2019年4月入学生からスタートする。

 これまでもインターネット上で学生服を販売する企業はあったが、特定の学校の制服を入学時に採寸も含めてネット販売するのは業界初。学生服の流通は従来、学生服メーカーが生産したものを、学校近隣の販売店がアフターケアや採寸などのサポートをしながら販売するというのが主流になっている。今回のネット販売は従来の在り方に一石を投じるものになる。

 来年も一条高校では従来通りの学校での採寸・販売も続け個別の要望に対応する。ネット購入という新たなルートが加わる形になる。消費者にとって販売所に行く手間や時間的な制約がなくなり、価格も抑えられるためメリットは大きい。

 寺前弘敏執行役員生産本部副本部長は「販売店を介さずに、単に価格を安くすることが狙いではない」とし「少子化による生徒減や高齢化による販売代理店の減少といった問題に直面する中、将来を見据えた時代に合った販売方法を模索していく」と話す。

 販売店の今後の在り方について「ネット販売が始まることでむしろ細かなサービスの重要性がよりはっきりとする」と強調し「これから販売店と丁寧に協議を重ねて共存共栄できる形にしていく」と述べた。一条高校の制服販売に関わる販売店からは一定の理解が得られているという。

 価格については「安くなるというより、これまで採寸などの微調整、アフターケアも含めた価格設定が業界では一般的だった。ネット販売により使わないサービスへの料金は発生しないため結果的に価格が下がるということ」と述べた。

〈「ミライズ」詰め襟服提案/ウールの良さ全面に/佐藤産業〉

 ニッケグループの佐藤産業(東京都千代田区)は、ウール高混率素材「ミライズ」の詰め襟服を2019年入学商戦から本格的に提案する。「ワンランク上の制服」として、昨年秋の展示会で披露し、注目を浴びた。ウールの風合いを持ちながら、軽量でウオッシャブルといった機能も備える。

 18年春の入学商戦は関東の県立校でやや苦戦したが、東京都内の私立校を中心に別注が増えて前年並みを維持した。詰め襟服の狙いについて、営業企画室の奥貫秀樹室長は「別注に加え、定番の詰め襟服を展開することで、大手アパレルに少しでも切り込みたい」と力を込める。

 少子化が進み、学生服市場が縮小する中で同社は「マイナーアップ」を提案する。制服のデザインは変えず、シルエットや素材混率を見直す要望が増えているため。モデルチェンジ(MC)と同様と捉え、学校へ発信する。

 販売店や百貨店、学校に向けた展示会の時期も工夫する。例年夏に開いてきた展示会を昨年は秋に開催した。「これまでと違う佐藤産業を打ち出す」と、ミライズの詰め襟服のほか、ウオッシャブルで伸縮性に優れた「グリーンウオッシュ」、反射材を使った制服も紹介した。コーディネートの提案からレインウエアまで総合的に展示し、学校関係者の来場が増えたという。

 LGBTに対応した制服が広がり、近年は女子向けのスラックスを導入する学校が増えている。「全員が快適に着用できる制服づくりは、メーカーとして果たすべきこと」(佐野敬一・スクールウェア事業部長)と商品開発を進める。

〈品質・納期・管理を研磨/メーカーとして原点へ/吉善商会〉

 吉善商会(東京都中央区)は首都圏の私立校の制服を主力とするアパレルメーカー。学校が集積する東京都では今春、私立高の授業料を実質無償化したことで都立高の志願者が急減。全日制31校で3次募集を実施する異例の事態となった。吉村善和社長は「都立と私立の競合はさらに激しくなるだろう」と表情を引き締める。

 同社は生産、商品管理の効率化を進めており、今春も納品はスムーズだった。4月からは制服の採用校でネット販売を開始。「正確でスピーディーな受発注で保護者の利便性とサプライヤー側の業務効率を高める。導入事例を増やしていきたい」(吉村社長)との考えだ。

 少子化に制度の変動、価格要求と納期の厳守など、制服を巡る条件は厳しくなる一方。しかし「アパレルメーカーとして奇をてらわず、原点に立ち戻って生産、品質、納期まで要求に応えていく」と力強く語る。

 同社は約25年にわたり中国教育界との文化交流事業に注力している。特に北京市教育委員会とパイプを持ち、名門校との姉妹校締結や修学旅行、部活動、留学、教員交流などでグローバルな人材育成を支援しており、学生服メーカーとしては他に例がない。

 2014年に中国北京市ユネスコ協会と交流協定を調印、日中ユネスコスクール姉妹校締結をはじめ活動に領域を広げる。たびたび政治的に緊張関係となる両国だが、「教育関係者の関心は日中とも高く、当社への要望や問い合わせも増え続けている。日本の制服文化を広く発信していく好機としたい」としている。

〈サイズと機能カスタマイズ/独自システムで市場開く/光和衣料〉

 光和衣料(埼玉県久喜市)はセーラー服をメインにした「スクールパール」、男子向け「スクールロード」のプライベートブランドを手掛けるアパレルメーカー。2012年から自社工場のスマート化に着手、受注から発送までのリードタイムを約40日から10分の1まで短縮させた。

 商品開発にも積極的で、耐久性を飛躍的に高めたセーラー服「スクールパール タフ」でグッドデザイン賞を受賞している。生徒数が減少していく市場に革新的な挑戦を続ける経営姿勢にはファッション業界も注目する。

 今春から新技術「オートファクトリーシステム」が稼働。3Dボディスキャナーによる自動採寸、受発注のデジタル化などから成る画期的な技術だ。「運用しながらさらに使いやすいものにバージョンアップさせていく」と同社。

 技術に目がいきがちだが、伴英一郎社長は「楽しさを提供したい。自分のボディーサイズが一瞬で測定でき、最適な一着が届くという体験を通して、愛着や価値を感じてもらえれば」と話す。

 機能性は、48通りもの選択肢から選ぶ。「撥水(はっすい)」「消臭」といった用語ではなく「シャワーで簡単 清潔生活」「ダンス中心の生活」といった生徒の目線に沿ったキャッチコピーで説明。学校関係者に直感的に理解してもらうよう工夫する。

 今後はモノ作りにとどまらず、蓄積したノウハウをデザインファームとして広く発信していく考え。今年から「トーキョー・コーワ・スクールエンターテインメント」をコーポレート・ロゴとして前面に出していく。

〈本当に着たくなる制服作る!〉

 菅公学生服は、直営店のカンコーショップ原宿セレクトスクエア(カンコーショップ原宿)を通じて、“学生が学生自身で作るライフスタイル”をテーマに、モデル出演や商品開発、PR活動に携わる「カンコー委員会」を発足した。4月、活動に携わる第一期生の女子中高生メンバー10人を決定した(写真)。

 カンコーショップ原宿では、従来の制服コンテストのようなモデル出演にとどまらない、学生自身が“考え”、“創る”経験ができる今までにないオーディションを開き、メンバーを選んだ。メンバーが中心となり、カタログ・ウェブ・各種雑誌広告へのモデル出演や、商品開発、スタイリングの提案、SNSを通じての情報発信などに携わる。

 カンコー委員会第一期メンバーの浦西ひかるさん(高校3年生)は、「学生の皆さんが本当に着たくなるような制服を作っていきたい」と抱負を述べた。メンバー10人は、19年3月までカンコーショップ原宿を拠点に活動をする。