東レ/“蓄積臭”を防ぐ/ポリエステルの課題克服

2018年06月04日 (月曜日)

 東レはこのほど、ポリエステル繊維の不快臭の原因となる皮脂汚れなどの蓄積を抑制する“蓄積臭”防臭素材を開発した。スポーツ分野などで投入し、特に欧米で根強いポリエステルへの忌避感を克服する素材として打ち出す。

 ポリエステルは合成繊維の中でも親油性が高い。このためポリエステル製の衣料品は着用を繰り返すと洗濯しても微量の皮脂汚れなどが残存し、それが蓄積されることで蓄積臭と呼ばれる不快臭が発生することが一部で問題となっていた。特に体臭問題に敏感な欧米諸国では、消費者がポリエステルを忌避する原因の一つとされている。

 こうした問題に対して東レがこのほど開発した防臭素材は、防汚性の樹脂を繊維一本一本に被覆することで、不快臭の原因となる皮脂汚れなどの蓄積を防ぐ。これに特殊抗菌加工を施し、皮脂などを養分に悪臭成分を発生させる細菌類の増殖を抑え、蓄積臭を防ぐことに成功した。

 まずはスポーツ用途などに提案する。東レの鈴木一弘スポーツ・衣料資材事業部長は「欧米でポリエステルが好まれない理由の一つが蓄積臭。これを解決することで、欧米でもポリエステル製スポーツ素材のシェアを拡大させたい」と話す。

 蓄積臭の防臭素材は、このほど大阪で開いた19秋冬東レスポーツメッセージ展で披露した。東京展は5日から7日まで同社東京本社(東京都中央区)で開く。

〈「深発色ナイロン」披露/19秋冬スポーツ素材〉

 東レは19秋冬スポーツ素材として、新たに開発した「深発色ナイロン」などを打ち出す。染色性能の高さに加えて環境負荷低減にも貢献する素材として注目される。ストレッチ素材群「プライムフレックス」は、極細糸使いや経編み地を新たに用意するなどバリエーションを拡大した。

 深発色ナイロンは、ナイロンポリマーを染料が結合しやすいよう改質するとともに、光の透過を抑えるセラミックス粒子を均一に微分散して色落ちの原因となる非結晶部分が少ない繊維構造を形成することにより、鮮やかな色彩の発現と染色堅ろう性を両立した。特に長時間にわたって紫外線にさらされることから耐候性が求められるスキーウエア用途などで引き合いが多い。

 染色が繊維に結合しやすいため、染色加工時の廃水に含まれる残留染料を減らせる。このため排水規制など環境規制が強化されている海外では環境負荷低減に貢献する新素材としても注目されている。

 そのほか、プライムフレックスは経編み地もバリエーションに加えた。より布帛ライクな風合いが可能なため、カジュアルなアイテムでも使用しやすい。織物は56デシテックス/288フィラメントの極細ポリエステル糸使いなどをラインアップに加えた。

 吸湿機能ナイロン生地「モイスト+」も人気が高まっている。ここに来て衣服内の湿度コントロールによるムレ感抑制への注目が高まっているため。特にボトム地としての引き合いが増えているという。