不織布新書18 ANEX2018開催記念号(5)

2018年06月05日 (火曜日)

〈シンワ/ナノや炭素繊維再生も/技術開発力の高さ訴求〉

 シンワ(愛媛県四国中央市)は長短5製法の不織布を生産販売するほか、中国、インドネシアに生産拠点を保有するなどグローバルにも展開する。

 祝儀用紙加工品製造で創業し、1965年に不織布を事業化した不織布専業メーカーだが、井上和久社長は「高付加価値品の開発が重要。それが生き残ることにつながる」と強調。ANEXでもグローバルに事業活動を行う企業PRに加えて開発品を中心に出品し、技術開発力の高さを訴求する。

 出品する開発品はナノファイバー不織布関連が中心になる。2010年に事業化したエレクトロスピニング法によるもので「ナノヴィア」のブランドで展開する。

 産学官連携で開発を進める炭素繊維複合材料リサイクルによる熱成型加工品も見せる。「環境問題という側面からも重要な技術」と位置付ける。さらにポリ乳酸やPVA(ポリビニルアルコール)によるスパンボンド不織布(SB)も提案する。1995年にSBを事業化しており、国内メーカーとしては最後発になる。

 中国子会社の山東新高工業が先行するサーマルボンド不織布(TB)から加工まで一貫のフィルターも出品する。同フィルターは主に自動車のキャビンフィルター向けに採用されているもので、日本では初披露となる。その他、得意とする原着わたを使用したスパンレース不織布(SL)なども展示する予定だ。

 海外生産拠点では最も新しいインドネシアのシンワ・ノンウーブンズ・インドネシア(SNI)も軌道に乗ってきた。15春から本格生産するSNIはウエットワイパー向けを中心にSL(年産5千トン以上)を生産し、東南アジア主体に一部日本向けに販売する。東南アジアの衛生材料市場の拡大をにらんで進出。昨年からフル稼働に入った。SNIのほか、中国にTB生産や不織布加工を行う山東新高工業、不織布製品の縫製・加工を行う山東新和製衣も有する。

 18年12月期は受注堅調ながら、製造コストの上昇があるため、売上高は微増、利益は横ばいを計画する。

〈ダイワボウレーヨン/“サステイナブル”を打ち出す/撥水加工わたを開発〉

 ダイワボウレーヨンは、レーヨンが、“サステイナブル”な不織布原料である点を打ち出している。

 天然由来原料から生産される素材であり、生分解性を持つ点などを生かした提案を進める。環境配慮型の新素材の開発も加速する。

 今回ANEXには、ダイワボウポリテック、ダイワボウプログレス、カンボウプラスと共同で出展するダイワボウレーヨンだが、メインテーマに“サステイナブル・エコ”を据える。機能レーヨンの原綿から製品までを紹介するほか、レーヨンの生分解性を紹介する展示も行う。

 SDGs(持続可能な開発目標)にも注目し、益田工場(島根県益田市)で実施している環境配慮の取り組みをSDGsのタグを使って紹介するほか、適切な森林資源管理を確認するFSC認証や繊維製品の安全性の国際認証であるエコテックス規格など同社が取得している国際認証を紹介。再生可能原料を25%以上使用するバイオベース認証も申請している。

 新素材も披露する。その一つが環境配慮型撥水(はっすい)加工レーヨン「エコリペラス」。レーヨン原綿の繊維表面に特殊な撥水加工を施したもので、レーヨンの肌触り、吸湿性などを維持しながら、撥水性も実現した。まずは不織布用に提案し、紙おむつ用途などでの採用を狙う。

 そのほか、ヒ素イオン吸着レーヨン「クリンレイ」も紹介する。こちらは液体フィルターなどで威力を発揮する。これら原綿の紹介で、レーヨンが環境配慮の“サステイナブル”な不織布原料である点をアピールする。

〈オーミケンシ/「ホープ」をリブランディング/極細やY字断面わたも〉

 オーミケンシは昨年、創立100周年を迎えた。節目の年を経て、改めてレーヨン短繊維のブランド「ホープ」のリブランディング戦略を実行する。その一つとして同社のレーヨン短繊維の技術の枠を投入した「ホープ極(きわみ)」シリーズを開発。ANEXでも披露する。

 現在、同社のレーヨン短繊維は製紙用短カットも含めると約80%が不織布用となる。特に近年はコスメやメディカル向けが伸びる。主力のウエットティッシュ用途も堅調だ。こうした中、新たな用途開拓も必要と打ち出すのがホープ極シリーズ。

 一つは単糸繊度0・45デシテックスの極細わたに機能材を練り込んだタイプ。スパンレースにした際に保水量や肌への密着度が高い。もう一つはY字断面レーヨンわた。こちらはかさ高性に優れ、やはり保水量を高めることができる。

 そのほか、植物や果物などの天然成分で機能性を持たせたレーヨンや後加工商品のラインアップも充実させる。今年度上半期(2018年4~9月)には「FSC認証」を取得する見通しで、環境配慮の取り組みを一段と強める。

〈タピルス/専業メーカーの技術を/潜在顧客に広く打ち出す〉

 タピルス(東京都港区)はメルトブロー不織布(MB)「タピルス」の製造・販売を手掛ける。3回目のANEX出展となる今回は専業メーカーとして蓄積してきた技術を打ち出すとし、タピルスを使用したアプリケーションを潜在顧客に広くアピールしていく。

 ANEXでは高効率低圧損フィルター用濾(ろ)材のエアフィルターやマスク、超極細繊維を使って超微細粒子を高精度で濾過する液体フィルター、高粘度溶液フィルター用濾材による液体フィルターなどを並べる。バッテリーセパレーターはMBを用いる。

 今回紹介する高効率低圧損フィルター用MBはエアフィルターをはじめとする帯電濾材の分野へ、極細繊維のMBについては特に超微細粒子を高精度で分離する液体フィルター分野への広がりに期待する。

 同社は日本とタイに生産拠点を有しており、輸送コストを抑えた地産地消の供給、事業継続の観点からも顧客への供給責任を果たせる体制を整えている。

〈旭化成アドバンス/米国市場の開拓強化/エアバッグ包材は中国生産へ〉

 旭化成アドバンスはスパンボンド不織布で米国市場の開拓を一段と強化する。エアバッグ包材はタイに加えて中国での生産基盤整備を実施しており、2018年度はその立ち上げが重要な課題となる。

 同社の繊維本部で不織布は産業資材事業の売上高の約4分の1を占める。生活資材と産業資材向けの原反のほか、エアバッグ包材が主力となっている。

 17年度は特に原反ビジネスが堅調に拡大した。生活資材用途ではコーヒーフィルター向けスパンボンド不織布の対米輸出が好調。「新たに生分解性のあるポリ乳酸繊維(PLA)使いを投入したことも成功した」(繊維本部の岩上勉繊維資材事業部長)。対韓輸出もカイロ向けが好調だった。平昌オリンピックによる特需もあったようだ。産業資材用途では電線被覆材や建材関連が安定している。

 エアバッグ包材も旺盛な自動車生産を背景に計画通りに推移した。エアバッグ包材は国内のほかタイの旭化成アドバンス〈タイランド〉に加工拠点を設けている。タイと中国を中心に需要拡大が続いていることから、杭州旭化成紡織にも自動化設備を入れて加工を開始する。現在、設備投資を実施中で、8月には建屋と設備が完成する。試運転を経て年明けには量産を開始したいと考える。

 18年度に関して不織布原反は、特に米国市場の開拓に力を入れる。コーヒーフィルターに加えてブラインドなどインテリア用途への提案も進める。繊維資材事業部で扱う3次元立体編み物「フュージョン」や耐炎繊維「ラスタン」と合わせて家具や工具といった用途へも提案する。そのため米国に担当者を常駐させることも検討しており、マーケティング活動にも力を入れる。

 エアバッグ包材は中国の加工拠点立ち上げを進めると同時に、タイ生産も品質管理のさらなる強化や生産精度の向上に努め、引き続き拡大が期待される自動車需要を取り込むことを目指す。

〈ヤギ/英企業と販売代理店契約/SB「コルバック」を販売〉

 ヤギは2018年2月に、英国の高機能繊維メーカー、ロー・アンド・ボナー(L&B)とスパンボンド不織布(SB)「コルバック」の日本での販売代理店契約を結び、本格販売を開始した。L&Bは2015年、中国・常州にコルバックの新工場を稼働させ、日本を含めたアジア市場での生産販売体制を再構築。その中でソリューション型ビジネスを指向するヤギと戦略が合致し、契約に至った。ヤギは3年後に10億円の売上高を見込む。

 ヤギは17年度からの3カ年の中期経営計画で「新領域への挑戦」を課題の一つとする。産業資材を担当する営業第一本部第一部門の嘉納淳第二事業部長は「不織布はその一つ」と位置付ける。初出展となるANEXではコルバックや3次元繊維構造体「エンカ」を出品し、日本での認知度向上を図るが、事前プレゼンテーションでも「前向きな話が多い」と手応えを示す。

 コルバックは芯ポリエステル・鞘ナイロンまたはポリプロピレンから成る複合紡糸SB。縦、横の強度バランスに優れることから、タイルカーペット一次基布として有名だが、海外はフィルター基材や壁紙などインテリア、フラワーラッピング材でも採用される。

 フィルター基材ではプリーツ性の高さや耐久性、低圧損などの特徴から気相向けを主力に展開する。コルバックならでは表面感を生かし壁紙などに貼り付けて使うことで、特徴ある意匠性を付与できる。L&Bはブランディングを強化するため、デザイナーと連携した「in4nite」も展開。ANEXではin4niteのブック帳も紹介し、一次基布にとどまらない用途展開もアピールする。

〈レンチング/ブランドを再構築/「ヴェオセル」発表〉

 オーストリアに本社を置くレンチンググループ。ANEXでは不織布分野の新ブランド「ヴェオセル」を世界に先駆けて発表する。

 同グループは経営戦略「sCore TEN(スコアテン)」をベースにさまざまな新しい取り組みを見せているが、その中で既に、衣料や寝装向けの付加価値品リヨセルとモダールのブランドを「テンセル」に統一し、新たなブランディング展開をスタートさせている。これに続き、元々市場で高い評価を得ている不織布分野でも、ブランドを再構築し、新たにヴェオセルとして打ち出していく。そのお披露目となるのが今回のANEXで、レンチングの不織布素材の強みを改めてアピールする。

 ヴェオセルはデーリーケア用の不織布繊維のプレミアムブランドとして位置付けられ、環境に配慮した製造プロセスで生産。植物由来の清潔で安全な生分解性の繊維を提供する。ヴェオセルブランドの製品はベビーケア、美容、ボディーケア、インティメートケア、表面洗浄といった日常的に幅広い用途で利用することができ、その用途に応じて、「ヴェオセル ビューティ」「ヴェオセル ボディ」「ヴェオセル インティメート」「ヴェオセル サーフェス」の4ブランドに分類して展開する。

 同社ではこのうち「ヴェオセル サーフェス」について「クウォット」リリース技術を使用した革新的な新製品を投入する。これは同社のクウォットと呼ばれる4級アンモニウム化合物を、クウォット・リリース技術を使用してウエットティッシュの表面に放出したもの。家庭やビジネス環境などさまざまな場面で効果的に洗浄と消毒を可能にする。もちろん、環境に配慮した製造プロセスで生産され、ヴェオセルの最新製品として、清潔で安全の生分解性繊維となる。

〈複合の技術をアピール/前田工繊〉

 前田工繊は1918年創業の老舗(当時の社名は前田機業場)。土木技術と繊維の特性を融合する「ジオシンセティックス技術」を確立し、土木資材や産業資材など幅広い用途に向けて提案を行っている。今回のANEXでは土木と産業資材の両方を見せ、複合技術をアピールする。

 土木資材分野については不織布単体での展開は少なく、“何か”と複合した製品を中心とし、そこに強みを見出している。

 一例が「ジオフリース防草シート」であり、農薬を使わずに防草を実現できる。「土木資材分野では知名度が高いが、自動車などの産業資材用途の開発も進んでおり、積極提案する」と意気込む。

〈クラレクラフレックス/ 特殊原料で独自性/化学メーカーの不織布へ〉

 クラレの不織布製造子会社、クラレクラフレックス(大阪市北区)はクラレの繊維カンパニー・生活資材事業の中核的役割を担う。スパンレース不織布(SL)、メルトブロー不織布(MB)、そして独自製法の水蒸気不織布などを手掛け、クラレの特殊原料を使った不織布に力を入れることで「独自性を発揮した不織布事業にする」(クラレ繊維カンパニーの足立篤美生活資材事業部長兼クラレクラフレックス社長)ことを主眼に置く。

 ANEXでは「化学メーカーが作る不織布を前面に打ち出す」考えで、特殊原料使いや独自製法による不織布を紹介し、関心を示すユーザーとの出会いから新たな用途と需要を生み出すことを目指す。

 同社の業績はスーパーや外食産業で使われる業務用ワイパー、カウンタークロスがけん引する。水流でウェブに孔を空け、接着材で不織布化するケミカルボンド不織布(CB)製だ。衛生管理マニュアルに同社製品を採用するケースが増加。2018年も底堅い荷動きという。さらに食品業界で品質管理方法として広く認知される「HACCP」製品認証も取得。業務用衛生布巾の認証取得は業界初で、今後の販売拡大へ期待が膨らむ。

 MBもエアフィルター、コーヒーフィルターなどの液体フィルター、自動車の吸音材で販売が堅調に推移するが、特殊ポリマー使いによる用途拡大もテーマ。主要原料であるポリプロピレン以外にポリアリレート系液晶ポリマーによる「ベクルス」、スチレン系熱可塑性エラストマー「セプトン」使いなどクラレの独自原料使いに力を入れる。

 水蒸気で不織布化する「フェリベンディ」も独自原料を使う。潜在捲縮(けんしゅく)繊維「ミクロクリンプ」を使った包帯向けが現在主力で、エバール繊維「ソフィスタ」を使ったボードなども展開する。農業・園芸資材に向けた開発も進む。折れたトマトの枝を補修する不織布テープ「トマトの包帯」はその一つでフェリベンディを使い、グループの商事会社、クラレトレーディング(同)が販売する。

〈双日/ユーザーへ情報提供強化/不織布でもブランド戦略支援〉

 レンチングの再生セルロース繊維を販売する双日は、レンチングと協力しながら不織布分野でもレンチングの不織布向け再生セルロース繊維「ヴェオセル」のブランド戦略を支援する。特に環境関連でユーザー企業に対して情報提供を行い、不織布原綿としての付加価値を改めて訴求することを目指す。

 今回のANEXにはレンチングが出展するが、双日もレンチングのブースで協力体制を敷く。レンチングはこのほど、精製セルロース繊維「テンセル」の不織布用原綿はヴェオセルのブランドで訴求する新たなブランド戦略を打ち出した。双日もこうした動きに呼応し、販売先に対して新たなブランドコンセプトを説明するなどに取り組み、不織布分野でヴェオセルの素材としてのブランド力を高めることを目指す。

 特に環境関連の情報提供に力を入れる。レンチングの再生セルロース繊維は森林資源の適正な利用を確認する「FSC」認証を取得しているが、こうした認証の活用を不織布関連の販売先にも働きかける。従来、不織布分野ではコスト競争力の観点から環境配慮の取り組みの普及にハードルもあったが、世界的に環境配慮素材への注目が一段と高まる中、今後は不織布分野でも環境が大きなアピールポイントになるはずと双日ではみている。

 今回のANEXを通じて新規取引先の開拓にも取り組む。

〈ツジトミ/多彩さとQRが武器/200年の歴史と革新性〉

 ツジトミ(滋賀県東近江市)は1817年創業の200年企業だ。麻織物からスタートし、1963年に不織布へ参入した。

 生産品種はケミカルボンド不織布(CB)、ニードルパンチ不織布(NP)、サーマルボンド不織布(TB)、スパンボンド不織布(SB)、さらに2次加工品など多種多様。95年には中国に進出。中国子会社の嘉興華麗非織布制品は10系列と、日本と同じ数の不織布設備を構え、現在1系列を増設中。さらにもう1系列の導入も予定すると言う。

 2018年中にはベトナムで新会社「エレガント・ノンウーブン・ツジトミ」(仮称)を設立し、19年から生産を始める。NP1系列と樹脂加工、熱処理機などを導入し、自動車資材用を中心にベトナム国内向けに販売、将来的に3系列体制を目指す。

 200年の歴史がありながら、グローバル戦略も推進するなど革新性を併せ持つのが同社の特徴。ANEXでもこの多彩な不織布とQRという特徴を武器にグローバル展開している点を訴求し「新規顧客を開拓したい」(辻高幸社長)考え。

 出品するTB「シルファ」には“ヘキサウェブ”と呼ぶ6方向にウェブを形成するタイプがある。縦・横・斜めの強度バランスが良く、寸法安定性に優れる特徴を生かしてキャビンフィルター用メルトブロー不織布の基材などに使う。SB「リーファ」は日本では数少ない国産SB設備で建材シートをメインに展開する。CB「ニューロイヤル」はエアランダムウェブ、パラレルウェブの組み合わせが可能で、均一性や強度バランスも良く、さまざまな風合い調整が可能なタイプになる。

〈衛材向け素材を提案/蝶理〉

 蝶理は衛生材料向け不織布関連事業の拡大の一環で、ANEXに出展する。中国の蘭渓市興漢塑料材料、福建省喬東新型材料の衛材向け素材に絞って提案する。

 蘭渓市興漢塑料材料は月5千~6千トンの通気性フィルムを生産し、センタードラム式のフレキソ印刷機も保有。日系衛材メーカーの品質に対応させるため、蝶理が欠点検出機を導入している。

 福建省喬東新型材料は衛生材料に使うSAPやパルプ、不織布などを4~5層に加工したSAPシートを製造する。

 加工能力は月千トン。「中国でSAPシートへのシフトが進むが、日本でもこの傾向がある」として、同展を通じて訴求する。