世界No.1への布石/東レ PPSB成長戦略(下)/日本生産もあり得る?
2018年06月20日 (水曜日)
東レのポリプロピレンスパンボンド不織布(PPSB)の中核企業である、韓国のトーレ・アドバンスト・マテリアルズ・コリア(TAK)。1999年に設立された東レと韓国のセハン・インダストリーズの合弁会社がその発祥だが、これを機に東レのSB事業は大きく変貌。ハイスピードでPPSB事業を拡大し続ける。それを支えた一つが中国の紙おむつ需要の拡大で、大人用への広がりが期待されている。
TAKの李泳官代表理事会長はこれに対応し、中国内での生産拠点の拡充を視野に入れる。中国では東麗高新聚化〈南通〉(TPN)に加えて、広東省仏山市に東麗高新聚化〈仏山〉(TPF)という新生産拠点を建設中にあるが、「個人的な意見」と前置きしながらも拠点を広げていきたいとの意向を示す。「なぜなら、このビジネスは需要家が生産する近くで供給するのが基本。これはPPSBの事業化を発表したインドも同様になる」と言う。
その考え方に基づくと、衛生材料メーカーが既に進出する中東やアフリカでの事業化もあり得る。「中東、北アフリカ、そして最終的に南米での事業化も目指したい」と意気込む。
では、日本はどうか。PPSBの開発設備を導入したものの、東レは国内でPPSBを生産していない。しかし、日本製の紙おむつはプレミアム品として中国を中心に好調だ。日本でPPSBを生産する可能性はあり得るのか。
李代表理事会長は「十分あり得る話だろう。現在でもTAKなどから日本に輸出する。コスト次第ではあるが、2系列分程度の規模は日本で販売できる市場を抑えている」と話す。
一方、日本製のプレミアム品はトップシートにエアスルータイプのサーマルボンド不織布(エアスルー不織布)が使われている。東レグループでのエアスルー不織布の事業化については「自ら手掛ける可能性は低い」と慎重な姿勢を示した。
その理由は「エアスルー不織布はSBに比べて高価格になる。将来的に継続して使われるかどうかは読めない」との分析。逆に東レグループとしてはエアスルー不織布に近いSBをいかに開発するかが重要な課題と強調。「それができるのは東レグループしかない」と言い切った。
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東レは2017年4月にスタートした中期経営課題「プロジェクトAP―G2019」でポリプロピレンSBを主力に不織布事業の売り上げ規模を、20年3月期に17年3月期比40%増の1千億円台に乗せる計画を組む。わた売りを含めた短繊維不織布関連もさらに強化しながら、繊維事業の将来の成長エンジンの一つに不織布を育成する考えだが、世界ナンバーワンに向けて確実に歩む紙おむつ用PPSBがけん引することは間違いない。(おわり)