特集 カーテン(1)/オーダーカーテンの競争一段と

2018年06月29日 (金曜日)

 インテリア製造卸の主戦場であるオーダーカーテン市場は、競争が一段と激しくなっている。大手家具・インテリア小売の存在感が増すほか、家電量販店がインテリアを本格展開するなど、多様なプレーヤーがしのぎを削る構図になっている。

〈住宅着工戸数が減少/カーテン事業に厳しさ〉

 国土交通省によると、2017年の新設住宅着工戸数は前年比0・3%減の96万4641戸と3年ぶりに減少した。

 インテリア製造卸の18年3月期決算は、新設住宅着工戸数の減少も受け、一部を除いて減収となった。堅調だったのはサンゲツ。カーテンと椅子生地を合わせたファブリックが79億円(前期比2・7%増)だった。カーテン単独でも前期実績を上回った。コントラクト向けが堅調で、ホームユースも前期に比べて改善した。東リはカーペット、壁装材が前期を上回ったが、塩ビ床材、カーテンが下回った。

 川島織物セルコンのカーテンは微減収。家庭用途よりもコントラクト向けが良かった。スミノエの18年5月期は前期比1桁%減収の見込み。前売り向け、医療・介護施設などコントラクト向けとも落ち込んだ。

 カーテン事業は16年度も多くの製造卸が軒並み15年度実績を下回った。住宅用途が苦戦したものの、病院・福祉施設といったコントラクト用途は健闘が目立った。それが17年度はコントラクト用途でも苦戦する企業があって、厳しさが増している。

〈小売大手が法人向け見本帳/内装ルートの競争激化か〉

 18年1~4月の新設住宅着工戸数は、前年同期比5・9%減の28万9271戸と前年を下回る。新築需要が伸びない中で、オーダーカーテンの競争は一段と激化する。

 オーダーカーテンの商流は、小売店ルートと内装ルートに大きく分かれる。小売店ルートでは、ニトリの台頭が著しい。業界筋によると、ニトリのオーダーカーテンの年間売り上げが100億円を突破したとされる。

 家電量販店のヤマダ電機も新業態「家電住まいる館」を拡大している。17年9月に1号店を開店後、18年5月末までに既存店を業態転換する形で30店をオープン。家電に加えて家具や、オーダーカーテンを含めたインテリアの販売、不動産販売、リフォーム提案まで、家一軒まるごとのニーズをヤマダ電機グループで取り込む。

 ニトリはさらに、法人向け見本帳の投入を今年予定しているとされる。ハウスメーカーやコントラクト向けまで視野に入れているとみられる。

 ハウスメーカー向けなどの内装ルートは、製造卸の見本帳ビジネスの収益の柱になっている。内装ルートでは、サンゲツがカーテン専門販売子会社、サンゲツヴォーヌを17年4月に設立。インテリアコーディネーターを擁する住宅メーカーへの販売を強化し、同分野のカーテン採用率を高める狙いで、従来の代理店任せではなく、もう一歩踏み込んだ。「体制が整った」(同社)ことで攻勢を強める方針。家庭用途以外でも新規参入企業との競争が激しくなりそうだ。

〈東レ合繊クラスター/技術生かして幅広く提案〉

 東レ合繊クラスターは、カーテンやインテリア業界の要望に応える素材を幅広くそろえる。機能面では抗菌防臭性に優れた「シルバーテックス」を本格展開し、ファッション的要素に対するニーズにはビンテージ感やテクスチャー感の表現で応じる。これらはクラスター会員企業の技術を生かしている。

 シルバーテックスは銀を主成分とする制菌剤を用いた加工素材で、東レ合繊クラスターが開発した。生地に固着された銀によって抗菌防臭性が得られ、即効性が大きな特長となる。これまではユニフォームや靴材用途を中心としてきたが、カーテンにも領域を広げる。

 抗菌防臭性を持つカーテン素材は珍しくないが、使用されるのは病院用カーテンが主体になっており、一般住宅やホテルなどで用いられるケースは少ない。ただ、潜在需要はあり、積極提案することで開拓は可能とした。国内だけでなく、海外市場にも目を向ける。

 ビンテージ感やテクスチャー感は糸加工技術や後加工技術を組み合わせることで、「天然繊維よりもうまく表現できる」(クラスター会員企業)ようになった。遮光性だけでなく、採光性のある素材なども打ち出していく。

〈YKK AP調査より/多様化する窓/住宅外観の変化と窓性能向上で〉

 窓の多様化に伴い、カーテンの取り入れ方が変化している。背景には、住宅外観のテイストの変化と窓の性能向上があるようだ。YKK APが定期的に実施している首都圏住宅外観調査でも明らかに見てとれる。

 同調査は、住宅外観を「和洋折衷」「モダン」「洋風」「和風」に分類し、実際に建てられた首都圏の400軒前後の物件を対象に、その窓の傾向を調べている。近年、和洋折衷(約45%)とモダン(約40%)の二極化が顕著で、和洋折衷がわずかに減少しつつあるのに対し、モダンは増加傾向にある。

 モダンな住宅は、ブラウンやブラックの外壁が復活。バルコニーに出入りする部屋は引き違い窓だが、横長のスリット窓や真四角のスクエア窓をシンボリックに配したタイプが多い。これらはプライバシー保護と採光を両立し、カーテンなどの出番はほとんどない。

 一方で窓の性能が向上。フレームはアルミ製から樹脂製へ、ガラスは単板から2重・3重の複層へ進化し、断熱性は1960年代の約7倍に向上したという。これに伴い大開口の断熱窓を採用する住宅が増加。省エネと太陽の光を取り入れた健康的な生活を兼ねる窓の進化。外からの視線が気にならない場所ならカーテンを付けない事例も出てきた。カーテン選びは、より感性が重視されるようになるかもしれない。