クラレファスニング/新製法への転換完了/バックコート、熱セット不要に
2018年07月19日 (木曜日)
クラレファスニングは面ファスナー「マジックテープ」の製造プロセス革新に取り組んできたが、新製法への転換が完了した。1月から丸岡工場(福井県坂井市)での生産は全て新製法に切り替えた。新製法ではバックコートと熱セットの工程が不要になり、工程全体の短縮化と環境負荷低減を実現している。
面ファスナーは通常、製織、熱セット、染色、バックコート、フックカット、スリットの工程を経て生産する。これは各国の面ファスナーメーカーともほぼ共通する。このためクラレファスニングはマジックテープとして新たな付加価値と持続可能な価値を追求するために新たな製造プロセスの開発に取り組んだ。
有機溶剤を使用するため環境負荷の大きいバックコート工程とエネルギー消費や加工コストのかさむ熱セット工程を不要にする製造プロセスの開発を特に進め、2007年ごろに新製法の開発に成功。これまでユーザーに対して商品の切り替えを働き掛けてきた。ここに来てユーザーの理解も進み、商品の切り替えも進んだことから、1月には丸岡工場の製造ライン全てで新製法への転換が完了した。
田野倉孔社長は「面ファスナーメーカーは世界中に多数存在する。マジックテープとして独自の価値を作るためにも、他社と異なる製造プロセスの確立が不可欠。特に有機溶剤の使用に対しては世界的に規制が強まっていることから、バックコートの廃止は必ず将来に向けて大きな意味を持つ」と強調する。新製法は製造プロセスを短縮できることからコストダウンにもつなげたいと言う。
面ファスナーのフックは柔軟性などの面からナイロンモノフィラメントを使うのが一般的だが、新製法ではより汎用性に富むポリエステルモノフィラメントに変更することにも成功した。機能性ポリエステルを使用することで従来にない機能を持つ面ファスナーの開発も可能になる。
さらにこれを応用することでポリエステル以外の素材を使用することもできる。既にポリフェニレンファルサイド(PPS)使いのマジックテープも開発している。耐熱性に優れることから航空機のシート部材などで採用が始まるなど新規用途の開拓でも成果が上がる。
田野倉社長は「クラレグループでは新しい中期経営計画が1月にスタートした。新中計でもクラレファスニングとしてマジックテープの新製法を生かした新規用途やアイテムの開拓を重点テーマとして取り組む」と話す。