連邦経営へ幹部を育成/東レ経営スクール
2001年10月10日 (水曜日)
91年4月、東レは21世紀に向けた長期経営ビジョン「AP―G2000」を策定した。そのキーワードの一つが「連邦経営。国内外に約200社の関係会社を持つ東レにとって、それらの経営を担う幹部育成が不可欠だ。しかし従来のようなOJT(実地職業訓練)主体の育成だけでは、幅広い経営上のホウハウ修得やリーダーシップ強化に限界がある。そこで経営トップ人材育成のための企業内ビジネススクールとして「東レ経営スクール(TKS)」が同年12月からスタートした。
《毎年20人の若手を選抜》
新幹線三島駅から、東レ三島工場を左手に見ながら北へ10分ほど歩くと東レ総合研修センターがある。玄関を入ると「企業の盛衰は人が制し、人こそが企業の未来を拓く」という前田勝之助社長(当時、現会長)のメーッセージを刻んだモニュメントが目を引く。
TKSは同センターが開所した96年以降、ここを会場に行われている。対象になるのは全社から選抜された若手課長層。事務系・技術系各10人、合計20人で、今年の第10期生の場合、80年から83年入社組。平均年齢は42・5歳だ。
研修は8月から12月までの5カ月間、毎月5日連続の合宿制で行われる。カリキュラムは(1)環境変化と経営者の使命(経営環境、経営理念、経営者の役割を責任、地球環境)(2)経営戦略と企業経営(グループ経営、グローバル経営、マーケティング、情報システム、研究・技術開発、生産管理、生産技術)(3)経理・財務と企業経営(経理、財務、経営分析、監査、税務)(4)経営者のリーダーシップと組織・人事(組織、権限、人事、労務、教育、リーダーシップ)(5)法務・広報、購買・物流と企業経営(経営法務、知的財産、広報、物流、購買)――という構成。
講師には自社幹部や社外の専門家、学者らが当たり、合宿期間中は、毎日午前8時半から午後6時まで、1コマ2時間で講義が行われる。第2週以降は、前週の研修で得た知識の理解度を確認し、問題意識をチェックするためのテストもある。
これだけを見ると受験対策に知識を詰め込む予備校のようだが、決してそうではない。全研修期間を通じて、5人1組による共同研究が課せられる。研修で得た知識やノウハウを実際に生かすため、東レの事業や関係会社からグループごとにモデルを選び、その戦略について分析、最終週に提言を行うシステムだ。
研修のスタートに当たっては平井克彦社長が全受講者に向かって講話を行い、最後は受講者が研修で得た成果を一人ひとり報告して締めくくる。
受講者は営業や生産の第一線にいる課長だが、TKSへの参加を最優先しなければならない。言い換えると1カ月の仕事を3週間でこなしたうえに、休日には共同研究のためのヒアリングやテーマごとに指定された参考図書の事前学習に取り組まねばならない。TKSが目指す高まいな理想を実現するためのスケジュールはハードそのものだ。
このTKSで鍛え上げられた人材は、原則として関係会社に出向し、実際に経営に当たることになる。第8期(99年)までの修了者160人中、約6割が国内外の関係会社へ出向し、その3分の2が取締役を経験している。14人は社長を務めた。
10年の歴史の中で東レ本体の経営陣にもTKS修了者が出てきた。00年6月には第1期生の御法川紘一東麗酒伊織染(南通)董事長兼総経理が取締役に就いた。今年は第3期生の佐々木常夫経営企画第1室長が続き、取締役候補と位置付けられる理事には8人が名を連ねている。
「私は課長の時、経営再建中の丸佐に出向し、常務として4年間経営に携わった。あの時に苦労した体験は今に生きている」と平井社長は語る。当時はもちろんTKSはなかったが、若い時期に経営そのものを手掛ける意義を実感している。「TKSでは経営のツール、ノウハウだけでなく、志を学んでほしい。遠くない将来には本体の社長も出てくるだろう」と期待は大きい。




