特集 安心・安全の繊維(7)/検査機関/防災、防護、高視認など安全機能を評価

2018年08月09日 (木曜日)

 西日本豪雨など災害が相次ぐ。防災対策の強化は不可欠だ。東京五輪に向けて高視認性安全服への関心も高まっている。路上作業だけでなく、児童や高齢者の交通事故防止にもつながる。検査機関はこうした防災、高視認、防護といった分野の評価試験を行う。

〈カケン/防護や防火装備に対応〉

 安心・安全には防護機能の分野がある。カケンテストセンター(カケン)は、防護服分野の評価で定評があるが、作業用手袋の評価も行っている。2005年からISO13997に基づいた耐切創性試験を開始した。以来、耐切創性試験は年間200~300件の受託試験を実施している。

 ISOは現在、EN388(耐切創評価)に基づいたISO規格(ISO DIS23388)も開発している。これは「機械的リスクに対する防護手袋」。カケンは「作業用手袋に対する試験が再燃しており、EN388で規定している切創性試験に対応する新規試験設備を導入できるよう調整している」と言う。カケンは、作業用手袋でゴム製品からケブラー使用まで幅広く対応している。

 防火装備に関する試験も行う。防火服関連では消防隊員、後方支援消防隊員用についてのISO規格の試験を実施できる。さらに防火手袋、防火フードに関する試験についても範囲を拡大中。防火手袋は耐熱性だけでなく、「実際の作業ではロープワークがある。防火手袋を着用してロープを握ったときの滑りにくさの評価も必要」となる。このため、試験機も開発した。

 耐熱性の延長では鍋つかみといった生活用品もある。こうした防護機能に高視認性をプラスした防護服の性能評価に関する試験も展開する。

〈ボーケン/住環境の安全性にも対応〉

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は5月、大阪本部を大阪市港区の新本部ビルに移転した。これを機に、安心・安全の化学分析や機能性、生活産業資材の試験体制を強化した。

 ボーケンは国交省指定の性能評価機関として登録され、ホルムアルデヒド発散建築材料性能評価を行う。大阪の新本部ビルには家具やカーペットなどの製品から放散されるホルムアルデヒドやVOC(揮発性有機化合物)など有害物質濃度を測定する大型チャンバー室2部屋を新設した。

 実際の居住空間を想定し、24平方メートルの広さで、JIS規格に準拠する。家具、インテリア、電化製品などの測定が可能である。

 機能性試験では、温度を0~70℃、湿度は30~90%の範囲で自由に設定できる温湿度可変試験室も新設した。製品の状態での測定や大量の部材の同時測定を実現した。

 生活産業資材でも温度23℃・湿度50%の恒温恒湿室を新設。ISOなどの海外規格、ウレタンフォーム、紙などのJIS規格に対応する。大型家具強度試験機も新設することで、実使用に近い再現試験ニーズにも対応する。

 国内販売される化粧品が厚労省告示第331号の「化粧品基準」に適合しているかを分析する事業も展開。幅広い分野で安心・安全をサポートしている。

〈QTEC/住宅防火・防災に寄与〉

 住宅火災の死者数は減少傾向にあるが、そのうち65歳以上の高齢者比率は約7割に上昇している。このため、総務省は昨年9月、高齢者に火災予防を注意喚起するとともに、住宅用防災機器(住宅用消火器、防炎品など)を敬老の日にプレゼントする住宅防火・防災キャンペーンを実施した。

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、消防庁施行規則に基づく登録確認機関として、防炎ラベル表示事業者に対する確認業務を行う。製品ロットごとに防炎性能確認試験を行い、製品に表示する防炎ラベルにロットごとの防炎性能確認試験の番号を記載。防炎性能を担保するとともに、万一不都合が生じたときも、トレース(追跡調査)が可能。

 福井試験センターは、消防法関連のほとんどの燃焼試験設備を備える。JIS L1091による繊維製品の燃焼試験、表面燃焼試験のほか、JIS K7201による酸素指数の燃焼性試験、UL―94の部品用プラスチック材料の燃焼試験、内装材料燃焼試験などを実施する。

 QTECはこのほかカーテンの断熱/保温性試験、外から室内が見えにくくなるカーテンの性能を評価する遮像性試験も独自に開発し、プライバシーに関するニーズにも対応。今後も「顧客のニーズに応じた試験方法を開発」していく。

〈ニッセンケン/高視認性分野で助言を〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は高視認性安全服の普及に力を注ぐ。立石ラボには蛍光測色、CADによる面積測定から再帰性反射性能まで、JIS T8127(高視認性安全服)の試験に全て対応できる体制を整え、アドバイスなど相談にも応じる。

 「東京五輪が近づいたことや、昨今の自然災害などでメーカーの高視認に対する関心が高まっている」とニッセンケン。甚大な被害をもたらした西日本豪雨でも、多くの行方不明者を出した。日本標識工業会は災害時の避難誘導標識システムの普及に努めるが、防災という観点から避難時の服装にも蛍光色といった鮮明な色が必要という考えを持ちつつある。

 ニッセンケンは災害時に誘導・指示する公務員向けベストのサンプルを作成。「蛍光色と反射材を取り入れた。備蓄し、使い捨てできるよう不織布にした」。子供用サンプルも作り、避難時の視認性を高めることで、迷子になりにくいという。

 日本交通安全教育普及協会は「児童向け高視認性安全服規格」「自転車通学者向け高視認性安全服規格」を制定。「児童向け高視認性安全服の関連製品の推奨規格」も設け、ランドセルカバー、レインウエア、バッグなどを推奨する。5日には帽子規格も制定した。ニッセンケンはこのサンプル作りにも協力し、普及を支援する。