メードイン・マルオカ/クラレファスニング丸岡工場/30周年迎え新ステージ/ポリエス100%化完了
2018年08月15日 (水曜日)
クラレの面ファスナー製造子会社、クラレファスニング(大阪市北区)の丸岡工場(福井県坂井市)が今年30周年を迎えた。1998年に埼玉県から工場を移転して以来、織物製面ファスナー「マジックテープ」の撚糸、織布、染色など一貫生産を行う同工場。30周年と同時に世界唯一のポリエステル100%化の生産体制も完成。これにより面ファスナーの代名詞、マジックテープは新ステージに入った。そのマジックテープの生産を一手に担う丸岡工場を訪れた。
現存する天守閣で最古の建築様式を持つ平山城である国宝、丸岡城。その近くに丸岡工場はある。同工場はマジックテープを生産する第1、第3工場、研究開発を行う第2工場、そして2002年にクラレ倉敷工場から移設した成型面ファスナー「マジロック」を生産するML工場と13年に移設した染色工場から成る。敷地面積は約2万5千平方メートルで、従業員数は128人。
丸岡工場はこの数年、マジックテープのポリエステル100%化に取り組んできたが、今年全ての品種で完了させた。
それまでマジックテープはナイロン長繊維による織物に有機溶剤を使いポリウレタン樹脂をバックコートする製法だった。これを芯鞘構造の熱融着性ポリエステル長繊維を織物の緯糸に使用することでバックコートをなくし、織布後の熱処理も不要となった。
ポリエステル100%化は従来比でCO2の発生を約30%削減できるなど環境型製法である上、優れた耐水性、係合力の維持、自動車・鉄道車両の難燃試験も難燃加工なしでクリアできるなどの特長を持つ。
クラレグループは創立100周年を迎える26年に「独自の技術に新たな要素を取り込み、持続的に成長するスペシャリティー化学企業」を在りたい姿として、長期ビジョンに掲げる。丸岡工場のポリエステル100%化はその一つと言える。
〈高付加価値品を開発/機能繊維の活用強化〉
この技術を応用しポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維タイプはじめ、各種機能繊維の活用にも力を入れる。日本国内で約60%のシェアを誇るマジックテープだが、世界シェアは数%とみられ、競争は激しい。その中で同社が目指すのは特徴ある商品や品質が重視される用途の展開。それを支えるのがポリエステル100%化技術であり、それをベースにした機能繊維の活用、さらにメッシュタイプやスキップタイプ、袋織りタイプなどの開発にも取り組む。
クラレグループは18年1月、中期経営計画「PROUD2020」もスタートさせた。丸岡工場は①安全な職場作りの維持向上②高付加価値ファスナーの開発・上市③コストダウンの実行④人材確保と育成⑤老朽化と建屋対策⑥災害に対するBCP――を課題に掲げる。その一つ、高付加価値ファスナーの開発について林英男取締役工場長は「織布・加工に機能繊維を組み合わせることはグループのシナジーを生かすことになる。そこからも新商品を生み出していきたい」と話す。
一方で「安全が全ての礎」とも強調。その維持向上を徹底する考えを示すとともに、人材確保と育成も喫緊の課題と位置付ける。
同社の従業員は56%が女性で占めるが、中途採用や再雇用も多く、勤続年数10年以下が半分を占める。それだけに地道な新卒採用活動と人材教育が重要としている。