Uniform Fair Autumn & Winter2018(4)/多様化するニーズ捉える

2018年06月18日 (月曜日)

 18秋冬新商品のトレンドは、素材、付属の斬新な使い方によって“目を引く”デザイン性がキーワードだったが、多様化するニーズを捉え、これまで業界になかった商品を開発しようとする動きも強まっている。

〈久々に“重”防寒が充実/カジュアル化に対応〉

 暖冬が続いたことで重防寒の新商品はここ数年少なかったが、18秋冬は昨年が厳冬だったことに加え、カジュアル化の流れでデザイン性を高めた重防寒の投入が増える傾向にある。

 2002年の秋冬以降、久しぶりに防水防寒の新商品を打ち出したコーコス信岡(広島県福山市)は、帝人の吸湿発熱機能がある「サンバーナー」を中わたに採用。発熱量はウールの2.5倍で、消臭や透湿防水などの機能性に加え、「普段着として着用してもおかしくない」デザイン性も追求した。

 藤和(福山市)は、“未来感ある防寒”として「TS DESIGN(TSデザイン)」メガヒート防水防寒の新作を投入。裏地の呼吸する裏アルミのメタリック感が印象的で、同シリーズとしては初めて制電性能を持たせ、幅広い用途で着用できる。

 カジュアルテイストが増す綿100%の防寒も増える傾向にある。アイトス(大阪市中央区)は、「AZITO(アジト)」で綿のライトツイル素材を使ったカジュアルライクな防寒を投入した。

 素材面では、極細繊維により薄くて軽く、断熱性に優れた3M社の「シンサレート」を採用したものが目立つ。アタックベース(福山市)や、クロダルマ(広島県府中市)の新商品で採用され、いずれも機能だけでなくユーザーの食指を動かすようなデザイン性で市場を広げる。

 旭蝶繊維(府中市)は、「極寒」ブランドとしてかさ高保持に優れる「シンサレート・ハイロフト」を中わたに使ったポケットレス防寒を商品化。ポケットレスのウエアは商品が増える傾向にあるが、防寒では珍しい。反射材や撥水(はっすい)加工によって、特殊な用途での使用を想定する。

 他社の商品にはない機能性を追求する動きが一段と強まる。サンエス(福山市)は、電動ファン付きウエア「空調風神服」のバッテリーを活用し、PTC(正温度係数)面状発熱体によって保温機能を高めた「雷神服」でカジュアルでも着用できそうなデザインの商品群を充実。PTC面状発熱体は昨年の2千点から今年は1万~1万5千点に増産し、ウエアも倍増以上となる3万点を生産して秋冬の主力商品へ育てる。

〈どんどん変わる着こなし/新アイテム投入〉

 ワーキング業界は着こなしの変化や多様化によって、各社が投入する新商品も10年前に比べて大きく変わった。コンプレッションは象徴的な商品といえるが、それに合わせて出てきたパンツの単品企画もここ数年でかなり増えた。

 コーコス信岡は、カーゴパンツ単体企画「Gカーゴ」の第2弾を投入。新しいカラーやリブ仕様などを打ち出すほか、「Gボトム」としてスラックスタイプも商品化、スマートフォン専用ポケットなど独自機能を持たせ、Gカーゴ、Gボトム合わせて10品番を投入する。

 パンツを中心としたブランドの「D.GROW(ディーグロー)」を展開するクロダルマは、他社にあまりないランダム迷彩柄のカーゴパンツをラインアップに加える。

 シンメン(府中市)は、3タイプのパンツ単体企画を投入。ポリウレタンラミネート加工で透湿防水性を持たせ、ニット素材で抜群のストレッチ性のあるパンツなどをそろえる。

 今年4月、水道工事、メンテナンスを手掛けるオアシスソリューション(東京都豊島区)が、スーツタイプのワークウエアを発売し、話題を呼んだ。水道設備工事を行う同社は、現場のスタッフから「ユニフォームのままデートできるウエアが欲しい」という要望があり製品を企画。東京都内の清掃事業者のユニフォームとして採用が決まるなど、広がりを見せる。

 明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)は16年から、作業服にもなるニットジャケットを開発しており、独自のパターン「スマートワン」企画で抜群の着心地の良さを実現した。タクシー会社などへの採用実績もある。

 中塚被服は「dimo(ディモ)」ブランドを中心にデザイン、スペック、素材、カラー全てで今までのユニフォームの枠を外した感度で開発。エンジニアコート、フェイクベスト、テーラージャケットなど、これまで業界にあまりなかったアイテムの投入を試みる。

 スーツやジャケットは、純粋な作業着というより、サービスウエアに近い形となるが、新しい着こなしが今後も広がる中、ワークウエアのトレンドだけでなくファッション全体のトレンドを踏まえた上での商品開発が重要になってくる。