紡績の国内原糸販売/挽回に向けた戦略実行へ/売り先の受注低迷で苦戦

2018年08月29日 (水曜日)

 紡績会社の国内市場への原糸販売がアパレルの不振や繊維産地からの受注低迷で苦戦している。紡績各社は、下半期以降の挽回に向けて最終製品を見据えた糸の開発、海外拠点との連携強化、新たな販路開拓などさまざまな戦略を実行に移す。   (橋本 学)

 クラボウは、前期から引き続き最終製品を想定した高付加価値糸の開発・提案を進める。香川県丸亀市の紡績工場の技術者と営業担当が一緒になって繊維産地を訪問し、工場の要望を直接聞きながらニーズに合った糸を供給する。第1四半期(2018年4~6月)は受注低迷で苦戦を強いられたが、下半期に向けて回復の兆しが出てきているという。北畠篤代表取締役常務執行役員繊維事業部長は「糸を開発・販売する部署では自ら最終製品は作れないので、どんな会社とタッグを組むのか、どんな価値を最終消費者に提供するのかという視点が重要」と強調し、「昨年から進めてきたニーズに応じたモノ作りの成果が徐々に出てきている」と話す。

 シキボウは原糸販売事業の収益改善に向け、国内外の工場・販売拠点との連携を強める。国内、ベトナム、インドネシア、タイにある拠点の担当者が定期的に集まり、情報や意見交換を定期的に行うことで、ターゲットとする市場に各拠点の強みが最大限に発揮できる供給体制を模索する。新内外綿のタイの商事子会社J.P.ボスコに寄せられたニーズにベトナムの協力工場で作ることで対応したり、ベトナムで必要とする商材をインドネシアで手当てしたりすることで、これまで各拠点単独では対応できなかった需要にも応える。

 新内外綿は2年前に導入した渦流精紡機を使ったポリエステル100%の杢(もく)糸のアピールを強める。黒の原着以外の色バリエーションも増やし、従来のカジュアル用途に加え、アウトドア・スポーツウエアにも提案していく。

 下半期からは営業担当を増員して拡販に臨む。東京を中心にアパレルや産地の事務所への提案に加え、主要繊維産地に直接足を運ぶアプローチを続ける。展示会を活用した対外的なアピールも強める。10月の「北陸ヤーンフェア2018」に加え、11月の「JFWジャパン・クリエーション2019(JFW―JC)」も2年ぶりの出展を計画する。

 第一紡績(熊本県荒尾市)は販路の多角化に力を入れる。インナーやカジュアル分野に加え、アウター、スポーツウエア、さらに来期を見据えてユニフォーム用途へも提案を強めていく。これまでのアパレル、2次製品メーカーへの販売に加え商社・テキスタイルコンバーターといった新たな売り先の開拓にも力を入れる。