ひと/ダイワボウホールディングスの取締役常務執行役員繊維事業統括に就いた斉藤 清一 氏/事業の基幹は“ファイバー”

2018年08月31日 (金曜日)

 6月からダイワボウホールディングスの取締役常務執行役員に就いた。現在も兼務するダイワボウノイ社長と合わせて、繊維事業統括、ダイワボウポリテック社長として衣料生活資材だけでなく化合繊機能資材も含めた繊維事業全体を見る立場になった。「繊維事業の基幹は“ファイバー”。そこに改質・改良の確かな技術がなければ生き残ることはできない」と話す。

 ニットテキスタイルの営業でキャリアをスタートした。「入社当時、当社のニットテキスタイルはトリコットやナイティー用生地などが強く、商況も悪くはなかった」と振り返る。そんな斉藤さんに転機が訪れる。「1985年ごろ、韓国、台湾、中国など海外の繊維産地を見に行く機会があった。すると海外のテキスタイルメーカーが縫製品をやり始めていた。このままテキスタイルだけを作っていては、いずれ海外との競争に勝てなくなるという思いを強く持った」。

 そこから縫製品事業に取り組むようになる。インドネシアに設立されたダヤニ・ガーメント・インドネシアにミシンを入れて縫製ラインを組み立てる仕事も担当した。繊維事業統括の前任者である門前英樹氏(元ダイワボウホールディングス取締役専務執行役員)や、現在はダイワボウホールディングスの経営企画室長を務める有地邦彦取締役常務執行役員らとダイワボウグループの縫製品事業を作り上げた一人が斉藤さんである。

 そんな斉藤さんだが「縫製品という出口を持ったからこそ、開発したテキスタイルを売ることができた」と強調する。ダイワボウにとって縫製品事業への進出は、あくまで紡績・テキスタイル事業拡大のための方法論だったとの思いは強い。それだけに今でもファイバーを繊維事業の基幹に置き、そこに改質技術などを積極的に導入することで独自の価値を創造することを目指している。

 加えて繊維素材・製品を取り巻く世界の潮流は大きな変化を見せている。「SDGs(持続的な発展目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)の重要性は日本人が想像する以上に大きい。繊維事業でもこうした視点を組み入れたフィロソフィーを作っていきたい」と話す。

 綿だけでなくポリプロピレンやレーヨンなど多彩な素材を持つことを生かし「世界同時展開できるような商品を作ることが目標」。ダイワボウの繊維事業のさらなるグローバル化を推進する。(宇)

 さいとう・きよかず 1982年駒沢大・経営卒、大和紡績(現・ダイワボウホールディングス)入社。第一事業本部衣料製品部長などを経て2011年ダイワボウノイ社長(現任)、16年ダイワボウホールディングス執行役員、18年6月からダイワボウホールディングス取締役常務執行役員兼大和紡績専務兼ダイワボウポリテック社長。福島県出身。60歳。