特集 アパレルパーツ(1)/付加価値化が最大の焦点/モノ作りの力と独自性で
2018年08月29日 (水曜日)
国内衣類市場の輸入浸透率は2017年に、数量で97・6%となった。つまり、日本国内で販売されているアパレル製品の国内縫製比率がわずか2・4%になったということだ。金額ベースに置き換えるとまだおよそ20%が国内縫製だとみられるが、それでも海外縫製が隆盛である大勢は揺らがない。アパレル製品を形成するのは生地。ただしもちろん、生地だけで製品は完成しない。ファスナー、ボタン、裏地、芯地、ミシン糸、織りネーム、ワッペンなどさまざまな副資材(アパレルパーツ)が散りばめられて、アパレル製品は完成する。縫製地の海外シフトが進んだ今、アパレルパーツを製造・販売する企業の主戦場も海外にシフトした。アパレルパーツ各社の海外戦略、付加価値化する国内市場向けの戦略など最新動向を追う。
本特集号に向けた本紙によるアンケートと取材では、「付加価値化」「モノ作り」「企画開発力」などのキーワードが目立った。電子商取引(EC)の隆盛、セールの不振など消費者の購買行動に大きな変化が生じている昨今、アパレル各社がプロパー消化率向上への動きを強めている。プロパー消化率が上がると①利益確保②ブランド力の維持向上③在庫圧縮――などの効果が見込まれるため、「服が売れない」「利益が出ない」といったアパレル不況が顕在化する現状、アパレル各社がそれを目指すのは当然の流れと言えるし、サステイナブル(持続可能な)の流れもこれを後押しする。
プロパー消化率を上げるためには商品そのものの魅力を引き上げ、「安くなくても買いたい」と消費者に感じてもらう必要がある。アパレルパーツ企業の多くが「付加価値化」を口にするようになった背景である。
アイリスは「ウオッシャブルやパッカブルの商品が多くなっていることから、付属品も薄さ、小ささ、柔らかさと強さを意識した商品開発が必要」と付加価値の方向性を説明する。清原が「国内ではODM商材として付加価値のある副資材を開発、提案していく」と話すように、OEM商社がODMへとかじを切る現状を勘案して付加価値化路線を明確にするケースも多い。
昨今のアパレルパーツ業界では商社、メーカーという垣根にとらわれず、モノ作りというキーワードも盛んに使われる。島田商事は「モノ作りへの理解を深める」ことを目的に社内で「クロージングイノベーション」というプロジェクトを立ち上げている。子会社の縫製工場での社員研修などを通じてモノ作りへの理解を深め、それを開発、提案に生かすことで業界を活性化させたいという狙いがある。YKKスナップファスナーも「モノ作り力の強化」を基本方針に掲げ、品質やデザインにさらに磨きをかける。東海サーモが「モノ作りを通じて国内アパレル業界に貢献していく」と話すように、“モノ作り大国・ニッポン”を縁の下で支えるアパレルパーツ企業の基本的な方向性がモノ作りにあることが改めて示される。
企画開発力の強化も永遠の課題として各社がこぞって取り上げるテーマ。アパレル製品製造の担い手がアパレルから商社に移り、海外縫製がほとんどを占めるようになって「アパレルパーツ企業から主体的な仕事が奪われていった」との指摘も聞こえるが、それを再構築し、諸外国のライバル企業に打ち勝つためにも、独自の企画開発力が生命線になることは疑いようがない。
〈拡大続くRFID/川上企業への普及に兆し〉
RFID(無線通信による商品の個別管理システム)による商品管理が進んでいる。昨年度は、2倍以上に発行枚数が伸びた副資材メーカーもある。RFIDへの関心は引き続き高いが、ある副資材メーカーは「中小のセレクトショップなどは期待先行の部分もある」と指摘する。一方で、これまで課題とされてきた川上企業への普及の兆しも出てきている。
RFIDは、電波を使ってRFタグのデータを接触せずに読み取るシステム。個体情報を記録する「インレイ」と呼ばれるICチップを商品タグなどに埋め込み加工し、離れた場所から複数のタグを一括で読み取る。箱のままデータを読み取れるため、棚卸や入出庫管理にかかる時間の大幅な短縮が可能になる。試着回数のカウントなど顧客行動分析やマーケティングへの応用も期待されている。
日本でのRFIDの普及は、大手SPAの採用など川下から始まった。多様なシステムベンダーやハードウエアメーカーの製品を組み合わせた、RFID環境全体を提案する必要がある。これが生産から販売まで一気通貫で手掛けるSPAや、売り場と物流施設を自社所有する企業で導入が先行している背景となる。
そのため、川上企業への普及が課題とされてきたが、テンタックの瀬川哲哉取締役は「来年にかけて(日本国内で)アパレルの縫製工場などでRFID導入の流れが増えてくるのではないか」と予想する。
物流施設では入庫した商品のRFIDタグを一括で読み取り、入庫確認を行う。正確な入庫確認には、付き合わせるための事前データを取得する必要があるが、事前データが無い場合、読み取りミスの有無が分からずデータの正確性が低下する。
人手不足が深刻な物流施設にとって付帯業務を効率化するためには、入庫前に商品情報を得ておく必要があり、物流施設が縫製工場へRFID導入を求める例も出ているという。
RFIDに関しては、アパレル以外からの問い合わせが増えた副資材メーカーもあるなど用途は広がりを見せている。一方、依然として一部では期待先行の部分が指摘される。RFIDは“何に使うか”というビジョンを持った取引先の悩みを「誠意を持って解決できるのか」(三景の大口和男社長)が重要になる。そのための提案力が鍵となっている。




