トンボ/トンボ倉吉工房スポーツ館が稼働

2018年08月20日 (月曜日)

 トンボは6月20日、スポーツウエア専用工場として三つ目となる新工場「トンボ倉吉工房スポーツ館」(鳥取県倉吉市)を稼働させた。同工場は国内で九つ目の自社工場となる。スポーツウエアへのニーズが高まる中、安定した生産体制を整えることで品質やコスト、納期への対応力の向上を図る。

〈自社生産比率10%増強へ/地域とともに成長する〉

 新工場は2014年から稼働しているブレザー生産のトンボ倉吉工房スクール館に併設し、スポーツ衣料などのジャージーの上下物やウオームアップウエア、介護・メディカルウエアを生産する。

 生徒数の減少が進む中、スクールスポーツ事業は18年入学商戦で260校以上の新規獲得校があり、来年の入学商戦に向けても「順調に新規採用校の獲得が進んでいる」(近藤知之社長)ことから工場の新設に踏み切った。

 6月20日に行われた竣工(しゅんこう)式には、近藤社長をはじめ同社の関係者や、倉吉市の石田耕太郎市長といった来賓など60人が参加。近藤社長は「倉吉工房スポーツ館の増設でスポーツ衣料の自社生産比率を現状より10%高める」と抱負を述べた。

 新工場の建屋の床面積は730平方メートルで鉄筋2階建て。ミシンやアイロン台など120台を配置する。トンボ倉吉工房の井原長武社長は「業界ナンバーワンの品質を目指す」と述べ、初年度は年間4万点、2年後には12万点の生産を計画する。さらに「倉吉の企業として地域産業の活性化につなげたい」(井原社長)と、地域とともに成長する姿勢で、これからの生産を軌道に乗せる。

〈昇華転写プリントも増強へ/デザイン性の高さ強み〉

 スポーツの主力工場である美咲工場(岡山県美咲町)は、15年に昇華転写プリントの一貫加工ラインを構築し、年々生産を拡大しつつある。プリンターは導入当初、3台だったが現在は5台となっており、近藤社長は「今期中にも増設する必要があり、それに合わせてCAM自動裁断機の設備も増やしたい」と話す。

 昇華転写プリントは、高いデザイン性を発揮できる半面、技術面では色合わせが大変となる。学生服メーカーの中で同社は唯一、国内で自社設備として保有し「専属スタッフの熟練度も高まってきた」(近藤社長)と言う。

 学校が新しいウエアを採用する際、プレゼンテーションで決定する傾向が高まる中で、昇華転写によるデザイン性の高いウエアは採用につながることが多い。学校体育着だけでなく、サッカーやチアリーディング、マーチングなど部活動での採用も増え、新たなニーズへの掘り起こしを進める。

〈社長インタビュー 近藤 知之 氏/一丸となって生産性向上へ〉

 スクールスポーツ事業は2018年入学商戦、主力の「ビクトリー」やライセンスブランドの「ヨネックス」などで新規採用校の獲得が順調に進みました。「ピストレ」などのヒット商品があったことで、260校以上の新規獲得校があり、過去最高となりました。

 19年の入学商戦に向けても引き続き、新規採用校の獲得が順調に進んでいます。そのため、先見性のある投資としてトンボ倉吉工房スポーツ館を新設し、6月20日から稼働しました。高まる需要に対し、安定した生産体制を整えることで品質やコスト、納期への対応力の向上を図っていきます。

 今後はスポーツウエアの自社生産比率を現状よりも10%高めることを目標に、従業員の増強や人材教育などにも力を入れます。当社では生産効率を高めるため、従業員のアイデアを現場の工程に反映しています。新工場のスポーツ館も最短で2年以内に、当社の美咲工場と同等の生産レベルに引き上げていきたいと考えており、全社員が一丸となって生産性の向上に取り組んでいきます。

〈ピストレが人気〉

 ウオームアップウエアとして「ピステスタイル」に着目した「ピストレ」は、「従来のスクールスポーツ市場になかったウエア」(近藤社長)として、人気が高まりつつある。

 ピストレは見た目のスタイリッシュさに加え、トリコット素材で通気性があるにもかかわらず、防風性や保温性に非常に優れる。またジャージーに比べ軽量でかさばらず、生地の摩擦音が小さいためノイズも気にならない。

 体育だけでなく部活動にも対応したデザインであることから、「評価につながっている」(橋本俊吾執行役員営業統括本部MD本部長)と言う。

 これまで東京以西での学校の採用が中心だったが、18年の商戦では東北や北海道の学校へも採用が拡大。自社工場の昇華転写プリント加工と組み合わせることで、「より多彩なデザインを可能にし、学校側の選択肢も広がる」(橋本執行役員)などの効果にも波及する。これまでの学校体育着になかった新しいスタイルのピストレはますます注目を浴びそうだ。