担当者に聞く ユニフォーム最前線(1)/クラボウ 繊維事業部ライフスタイル部長 三和 二郎 氏/消費者目線で価値創造

2018年09月27日 (木曜日)

 2020年の東京五輪に向けて緩やかに拡大するユニフォーム市場。ワークウエア業界では昨年に続き今夏も電動ファン付きウエアが市場を席巻する。一方、サービス業、医療・食品白衣、看護ウエア、事務服でも素材の進化やデザイン性の向上により新たなマーケットが生まれている。素材メーカー、商社の担当者に現在の市況と今後の戦略、業界の活性化に向けた提言などを聞く。

 ――ここまでの商況はいかがですか。

 本年度上半期(2018年4~9月)は前年同期と比較して売上高、営業利益ともにわずかながら上回っています。定番生地の動きは期待したほどではありませんが、機能性やファッション性のある生地の需要が高まっています。

 機能面では動きやすさへのニーズからストレッチ素材の需要が伸びており、欠かせない機能になっています。伸縮性だけでなく吸水速乾性、高い通気性、難燃性、さらにはファッション性といったプラスアルファの要素を複合した生地が市場から求められています。

 昨年に続き今夏も電動ファン付きウエアの市場が急速に拡大しました。当社が供給する生地の量はまだ多くはないですが、着実に増えています。

 ――近年の素材のトレンドについて。

 ここ5年ほどで、カジュアルな素材の採用が増えています。当社ではデニム調素材「デニムニ」がアパレルから好評です。ホームセンターに置かれる作業服にもデニム調やカジュアルウエアのような商品が現れています。作業中だけでなく、それ以外のシーンでも格好良く着られる、そういったワークウエアの需要拡大が背景にあります。企業別注ユニフォームはこれまで定番素材の採用が多いですが、この分野でも今後カジュアル化が進む可能性があります。

 ――五輪後の需要動向について。

 五輪関連需要は来年度にピークになるでしょう。その後の経済の冷え込みについて懸念する声もありますが、私はユニフォーム関連の需要が急速に落ち込むことはないとみています。道路、橋、トンネルなどインフラの老朽化が大きな問題になっており、こうした分野での作業服需要はなくならないからです。

 ――今後の戦略は。

 素材メーカーは商品の価値を決める商材の開発を担います。消費者目線で価値を創造しなくては買ってもらえません。アパレルと一緒になって消費者に近いところでニーズをつかんで新素材の開発に取り組みます。

 環境配慮という付加価値も近年、急速に重要性を増してきました。ユニフォーム素材で再生ポリエステルを使ったものも増えています。当社では、生地の裁断くずをリサイクルする独自の取り組み「ループラス」が始まりました。いずれはユニフォームでもできるようにしたいです。無駄のないモノ作りができればユニフォームに新たな価値をもたらすはずです。