「北陸ヤーンフェア2018」/合繊メーカー/サステイナブルに焦点/バラエティーに富む再生糸

2018年10月19日 (金曜日)

 合繊メーカーが環境配慮型原糸を強化している。サステイナビリティ―(持続可能性)を重視した糸とテキスタイルは欧州で先行し、日本はこれからとされるが、世界的な動きになることを踏まえて合繊メーカーは環境配慮型原糸を次々と打ち出している。17、18日に開催された「北陸ヤーンフェア2018」では商事子会社も含めて合繊メーカー全社が出展し、特に再生糸や部分バイオ原料糸などを積極的に提案した。

 旭化成は、不要糸を再原料化した再生スパンデックス「ロイカEF」を訴求した。国内生産するロイカEFの再生原料比率は80%。世界で初めてGRS(グローバル・リサイクル・スタンダード)認証を取得したスパンデックスだ。ストレッチ性を付与するため、織・編み物に使われるスパンデックスだが、サステイナビリティ―を訴求するにはスパンデックスもリサイクル糸の必要がある点を訴求した。

 他社と連携した環境配慮型原糸を打ち出したのはクラレトレーディング。ポリエステル製品のケミカルリサイクルの本格事業化に取り組む日本環境設計(東京都千代田区)によるポリエステル樹脂を使ったポリエステル長繊維を提案した。スポーツアパレルを中心に関心が高まることを踏まえたものと言う。

 ユニチカトレーディングは、ケミカルリサイクル長繊維「ユニエコロ」を提案した。同社のケミカルリサイクルはその手法が特殊で、使用済みペットボトルから製造したポリエステルペレットを解重合する。これにより、難度が従来高かった極細、異型断面、2成分はもちろん、カチオン可染などバージン原料と同じ差別化糸を生産できる。ファッション衣料向けでも環境重視の流れがいずれ来ることを踏まえて開発した。

 一部植物原料を使うポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維でエコを訴求するのは帝人フロンティアと旭化成アドバンス。帝人フロンティアはPTT繊維「ソロテックス」で短繊維を全面的に打ち出し、旭化成アドバンスはPTTモノフィラメント。これまで歯ブラシやはけ、繊維クッション材「フュージョン」にも使用しており、さまざまな糸種を持つ点を訴求した。

 商社でも蝶理がGRS認証も取得するペットボトルリサイクル長繊維「エコブルー」を提案し、関心は高かったと言う。エコブルーはマテリアルリサイクルによるもので、日本の再生原料を海外企業に供給して生産するものもある。スポーツウエア向け以外でも、リサイクル長繊維の需要が今後は増えると期待する。

〈「北陸ヤーンフェア2018交流会」/出展者が交流深める/19年は福井県で開催〉

 「北陸ヤーンフェア2018交流会」が17日、金沢市内のホテルで行われ、出展者など103人が出席し、出展者間での交流を深めた。

 冒頭にあいさつした福井県繊維協会の藤原宏一会長(広撚社長)は、「北陸ヤーンフェア」初日(17日)の来場者数が1032人と予想以上に盛況だったことを踏まえながら、「今回展を訪れて何かを得る。来場して良かったと思えるように、出展者の皆さんにも忌憚(きたん)のない意見を頂き、より良い展示会を目指していきたい」と、次回(19年)、福井開催への抱負を述べた。

 さらに「5年、10年と続けながら、希望としては海外の原糸メーカーの出展、海外からの来場者が訪れる北陸国際ヤーンフェアを目指したい」との考えを示した。

 締めのあいさつを行った繊維リソースいしかわの遠藤幸四郎社長は、「初日を盛況に終えることができたのは、出展者の力強い心構えが参加者に届いたのではないか」と分析。既に成約した出展企業もあったことから、「そのチャンスを作れたことはうれしい限り」と語り、「出展者それぞれが今回展を通じて、何らかの取り組みがスタートしてほしい」と期待感を示した。