ワークウエア生地販売/景気回復を背景に堅調/環境配慮素材に再び脚光

2018年10月23日 (火曜日)

 素材メーカーのワークウエア用生地販売が順調だ。景気の緩やかな浮揚を背景に幅広い職種で制服を新しくする動きが広がり販売を後押しする。今夏、動きの良かった素材のキーワードはストレッチ、高機能、カジュアルの三つ。国際的な環境問題への高まりから、環境配慮型素材も改めて注目されている。(橋本 学)

 ユニフォーム生地販売を手掛ける素材メーカーとメーカー系商社、計5社(クラボウ、日清紡テキスタイル、シキボウ、東洋紡STC、ユニチカトレーディング)のワークウエア用生地販売はいずれも堅調に推移する。本年度上半期(2018年4~9月)の業績は各社とも前年並み、もしくはそれを上回るペースを維持している。

 今夏、動きの良かった素材として共通するのが、伸縮性で動きやすさをサポートするストレッチ素材▽高通気、接触冷感、吸水速乾などの快適機能素材▽通勤や移動時でも見た目を気にせずに着られるカジュアル調の素材。電動ファン付きウエアの普及も、素材販売にとっては追い風となった。「消費者がユニフォームの機能に改めて着目するきっかけとなっている」(メーカー系商社)

 あるメーカー系商社はストレッチ機能について、「ここ10年ほどで定番素材になっており、今は伸縮率の高さが勝負になっている」と言う。「ストレッチ素材に高通気や吸水速乾などの機能を持たせた機能の複合化や、そこにカジュアル調やドビー柄といった見た目の要素も加えた素材のニーズも高まっている」

 ストレッチの定番化、快適機能、カジュアル調素材の流行……こうしたトレンドに加えて、環境配慮型素材の打ち出しが強まっていることが、直近の取材で相次いで聞かれる。

 かつて1990年代半ばにも、国際的に環境問題への意識が高まったことを背景に、素材メーカー各社が使用済みPETボトル由来の再生ポリエステルを使ったユニフォーム素材の販売に力を入れ、再生素材を使ったユニフォームもある程度普及した。その後、素材のコスト競争が激化したことで、割高な再生繊維は影を潜めていた。

 だが、今年から再びユニフォーム素材で、“地球に優しい”“環境保全に貢献する”といった素材が新たな付加価値として認知されつつある。

 背景には今年、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)を指針として取り込む企業が増えたことや、プラスチックをはじめとする石油由来の素材による海洋汚染が国際的な環境問題として注目を浴びたことがありそうだ。「ユニフォームはコーポレートイメージを発信するツールであり、大企業を中心にエコ素材への問い合わせが増えている」(メーカー系商社)

 従来の再生ポリエステルや未利用綿(落ち綿)を使った素材を環境配慮型素材として改めて打ち出す企業もあれば、廃棄PETボトルから異型断面糸、2成分構造糸、マイクロファイバーといった差別化ポリエステルを作る企業も出てきた。カジュアル衣料の裁断くずを再び繊維原料とする生地のリサイクルをユニフォーム分野で応用しようという動きもある。日本企業のSDGsへの関心の高まりや世界中での環境問題への意識の高まりを考えれば、今回の環境配慮素材への波は前回とは異なる持続的なものになる可能性もある。