カーペット用BCFナイロン/インビスタが白糸撤退/業界構造変わる可能性も
2018年11月07日 (水曜日)
インビスタ ジャパンは2019年末をめどに、カーペット用BCF(かさ高連続長繊維)ナイロン66糸のうち、コントラクト(業務)向け白糸供給をやめる。経営資源を原着糸に集中する戦略だが、国内カーペット業界に与える影響は大きい。
(長尾 昇)
国内のカーペット用BCFナイロンは、インビスタ ジャパンと東レの2社が全体の9割程度を占めてきた。国内BCFナイロンでトップシェアを持つとされるインビスタ ジャパンは米国で製造したナイロン66糸を「アントロン」ブランドで販売。原着糸は「アントロン ルーミナ」、白糸は「アントロン レガシー」として展開している。
原着糸は、紡糸工程の前段階で顔料を添加して糸自体に色を付ける。耐光堅ろう度に優れ、デザインの幅も広げられる。ルーミナは豊富なカラー展開が強みで、18年6月時点で161色まで増やしている。ここ数年、同社のカーペット用糸の売り上げに占める原着糸の割合は高まっており、現在50%程度を占める。
世界的に見ても、後染めなどに使う白糸よりも、原着糸使いがトレンドになっている。インビスタはその流れを踏まえて、原着糸へ経営資源を重点配分する戦略をグローバルに進める。
その一環として今年、3千万ドルを投資し、米国サウスカロライナ州の繊維工場のカーペット用原着ナイロン66の生産能力を高めた。繊維機械メーカーのツルッツラー社のかさ高長繊維エクストルーダー技術を活用した紡糸機を導入し、小ロットで効率的に原着ナイロン66を生産できる体制を強化した。
カーペット業界筋によると、オフィスや商業施設などコントラクト向け白糸からは撤退するが、一般家庭向け白糸の供給は継続すると言う。
BCFナイロンの白糸を供給する東レ、17年に「キラビス」ブランドでBCFナイロンに参入した三菱ケミカルには拡販の好機となる。BCFナイロンを手掛ける韓国の暁星など海外勢への引き合いも強まりそうだ。ただその多くがナイロン6のため、インビスタのナイロン66と比べて耐久性や染色性が異なるなど課題もある。
国内では白糸を活用しているカーペットメーカーも多い。大手タイルカーペットメーカーの1社は、BCFナイロンの調達先を広げるとともに、白糸と原着糸のバランスを考えたモノ作りを考える必要性を指摘。さらに「世界のトップクラスのタイルカーペットメーカーは自前で糸を生産している。当社も川上まで踏み込んで糸の自社生産を検討していく」と言及する。
今後、海外同様に国内でもナイロン糸から一貫生産するカーペットメーカーが生まれることも考えられ、業界構造が変わる契機になる可能性がある。