東レ/中計の基本戦略堅持/ベトナム駆使し新SCM推進

2018年11月28日 (水曜日)

 東レの日覺昭廣社長、大矢光雄専務繊維事業本部長らは27日、大阪本社で記者会見し、中期経営課題「AP―G2019」の折り返し点を迎え2018年度上半期(4~9月)決算が原燃料高騰などの影響で営業微減益にとどまったものの、「中計の内容を変更することはない」(日覺社長)と語った。繊維事業では、海外事業の構造改革を課題に位置付けており、生産品目やサプライチェーンの高度化と取り組み収益拡大を目指す。

 東レは先に18年度業績見通しの営業・経常利益をそれぞれ下方修正。中計最終の19年度業績について、「この下半期に頑張って回復させてから、来年5月の決算発表時に明らかにする」(同)ことにした。

 繊維事業では上半期、事業拡大のペース、利益水準とも目標通りに推移させたものの、「海外事業の高度化が道半ば」(大矢専務)の状態にあるため、下半期以降は海外事業の改善・高度化に力を入れる。

 ベトナムを起点とするコンバーティングビジネスの拡充、資本参加する香港の繊維大手パシフィック・テキスタイルズ・ホールディングス(PTHL)とのシナジー発揮に取り組む。

 中計中にベトナムでの加工拠点設立を決めるとしていたが、ベトナムでのビジネスが順調に拡大しているため当面、こちらを優先。拠点設立は「2年くらい遅れるかもしれない」(同)と言う。

 PTHLには経営、営業、技術のスタッフ3人を派遣した効果で、合繊素材の開発に進化が既に現れてきたという。

 今後は、同社が持つベトナムなどの海外工場や販路、さらにベトナムでのコンバーティングを駆使した取り組みを通じ、インドもにらんだ新しいサプライチェーンの構築を急ぐ。

 東レはグリーンイノベーション事業の拡大(GR)に取り組んでおり17年度は全社で7123億円、うち繊維で約1900億円の売上高を計上した。最近は、ウルトラスエード事業で「バイオ原料由来の素材を訴求することで欧米中心に販売拡大が加速している」(同)。

 今後もGRを推進。リサイクル素材の拡販とともに、各種先端材料が「軽量化やCO2の削減などに貢献していることをもっと発信していきたい」(同)と考えている。