スクールスポーツ/“五輪”見据え新商品投入/体育着の枠外した開発も

2018年12月11日 (火曜日)

 学生服メーカーやスポーツ専業メーカーは、2020年に開かれる東京五輪を見据え、スクールスポーツ市場に向けた新商品の開発を活発化させている。昇華転写プリントの活用や、着こなしの多様化でデザイン性も多彩になり、従来の体育着の枠を外した開発も増えてきた。

 19年の入学商戦は、今年まであった一部のスポーツ専業メーカーの事業縮小の影響が薄まり、各社の新規採用校の獲得は3年前の水準にとどまりそうだ。そのため改めて各社の企画力、戦略が問われつつある。

 特に五輪開催を20年に控え、スクールスポーツ市場への影響が出てくる可能性がある。明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)は「東京五輪の20年は“勝負の年”になる」(前田健太郎スクールスポーツ部長)の見方から、新ブランド「アスリッシュ」を投入。校外着としても着用できる新たなカテゴリーを意識して開発した。

 従来の体育着という視点から外れ、ライフスタイルなど幅広い用途での着用を想定したウエアとして開発する動きが広がる。ギャレックス(福井県越前市)は、カラフルな杢(もく)柄のウエアを来入学商戦向けから投入。通学や課外活動などにも適するデザインとなっている。

 菅公学生服(岡山市)は、今年の総合展で“スタイリング”という、自身の体調やその日の授業内容、気候などさまざまなシーンを想定し、体育着を選ぶ概念を紹介。従来のジャージー上下、Tシャツ、ハーフパンツの4点セットではなくフード付きパーカやミドラー(中間着)など「スタイリングを意識した重ね着のアイテムにチャレンジした」(田北浩之提案企画部長)と言う。

 通学時での着用を想定した場合、安全面への配慮も必要となる。児島(倉敷市)は、生地の切り返し部分に視認性の高い生地を入れ込むなど、デザインと融合させながら、安全性を高めたウエアの開発に取り組む。

 昇華転写プリントによるデザイン性の向上は、今後の市場に変化をもたらす可能性がある。トンボ(岡山市)は、昇華転写プリントによる多彩なデザインのウエアを供給できる体制を確立。学販だけでなく「マーチングバンドなどの部活動のチームウエアとしても広がりを見せている」(阿部裕安スポーツMD部長)と手応えをつかむ。

 今年7月には「第1回学校体育着デザインコンクール」を開催。全国の中高生から7600通以上の作品の応募があり、「昇華転写プリントの技術を持つからこそ、コンクールを開くことができた」(阿部スポーツMD部長)。11月に美咲工場(岡山県美咲町)でプリント設備を増やし、一段と対応力を強める。