特集 コットン・ルネッサンス(2)/綿の新たな価値を創造

2018年12月11日 (火曜日)

〈環境配慮型デニムも評価/クラボウ〉

 クラボウは「クラボウデニム」のブランド再構築に向けて次世代型デニムの開発に力を入れている。その一つがプレミアムライン「クラボウデニム プライムブルー」のラインアップとして登場した「アクアティック」。感性的な機能だけでなく、環境配慮型デニムとしての評価も高まる。

 アクアティックは、紡績、糸染め、織布、整理加工の各工程での技術を融合させることでビンテージ調の生地表情を再現しながらも、色落ちしにくいのが特徴の次世代型デニム。理想のユーズド加工を施した状態を長く保持できる。色移りもしにくいため、従来のデニムでは難しいとされた白地との組み合わせや、インテリア用途で使用することも可能にした。

 世界的に“サステイナブル(持続可能な)”への意識が高まる中、環境配慮型デニムとしての評価も高まっている。色落ちしにくいことから、洗い加工や家庭洗濯時に廃水に溶出する染料が劇的に少なくなる。このため加工や使用時の環境負荷が小さい“サステイナブル”なデニムとなる。

 特に海外ではレーザー加工工程での水使用・排出量を削減する低環境負荷のデニムとして注目を集める。綿素材の代表格ともいえるデニムで新しい価値を提案している。

〈大分、和歌山で設備更新/フジボウテキスタイル〉

 フジボウテキスタイルは大分工場で、高付加価値綿糸を生産する。顧客のニーズに合った原綿調達や混綿対応、高い紡績技術を強みとする。錘数は現在、約1万4千錘。グループで肌着を主力とするフジボウアパレルとアングルに供給する。

 大分工場では綿を主体とした肌着用途の差別化糸に加え、超長綿など個性ある原料を使った糸や、綿以外にもカシミヤ、ウール、シルク混、そして細番手糸といった特化素材を生産する。

 これまでの実績を生かし、国内繊維産地への原糸販売にも力を入れる。主力である和歌山産地や尾州産地向けニット糸に加え、現在では今治産地や泉州産地向けタオル糸や北陸産地の綿経編み地向け、尾州産地や富士吉田産地の織物向けなどへの販売量を増やしている。

 今期は大分の紡績工場と加工を手掛ける和歌山工場で設備を更新する。新たな投資により、差別化した商材・加工の小量・多品種対応を強める。大分では精紡機を1台、和歌山では染色機を1台、旧式から更新する。山本公彦社長は「新たな機械の導入で品質の向上が期待できるほか、主力のインナー向け以外にも幅広い需要に応えられるようになる」と話す。

〈ベトナムでも高付加価値糸/シキボウ〉

 シキボウは、独自の精紡交撚糸「デュアルアクション」や革新精紡による強撚糸「ドラゴンツイスト」など高付加価値な綿糸を打ち出す。国内の富山工場だけでなく、ベトナム協力工場での生産でも高付加価値糸のラインアップを拡充した。

 デュアルアクションは独自の精紡交撚技術によって糸表面が円滑・均一となり、優れた光沢が特徴。米超長綿「スーピマ」を使った細番手糸「デュアルアクション・プレミアム」や強撚による接触冷感が特徴の「デュアルアクション・クール」、甘撚り糸「デュアルアクション・スイートツイスト」などを充実したラインアップを持つ。ドラゴンツイストは毛羽の少なさと強撚によるドライタッチが特徴。

 今年からはデュアルアクション・プレミアムとデュアルアクション・クールのベトナムでの生産も始まった。日本市場だけでなくアジア市場へ高付加価値な綿糸を供給する体制が整う。

 加工糸にも強みがある。染色子会社のシキボウ江南では連続シルケット糸「フィスコ」を生産する。現在、国内で連続シルケット糸を生産する紡績は同社だけとなった。

 細番手糸や強撚糸など得意とする綿糸で国内外での販売拡大を進める。

〈OE紡績や加工で独自性/ダイワボウノイ〉

 ダイワボウノイは独自性のある原料や加工を駆使するファイバー戦略を推進する。紡績技術でもグループ会社のダイワボウスピンテックが保有する希少なオープンエンド(OE)精紡機「BD200」などを駆使し、個性的な綿素材を生産する。

 現在、国内でOE糸を生産する紡績は少ない。こうした独自性を生かして、これまでもOE紡績糸のラインアップを拡充してきた。特にロングセラーが「テキサス7」。米綿使いのOE紡積ならではの糸構造が生み出す爽快なドライタッチとボリューム感に根強い人気があり、有名ブランドのカジュアル衣料などで採用されてきた。

 そのほかにも膨らみ感が特徴の「エアーパポ」、毛羽が少ない「エアコンパクト」などユニークな綿糸をそろえる。原綿も米綿のほか、メキシコ綿やインド綿といった個性的な原料の活用にも取り組んできた。

 さらに同社の強みが機能加工。綿100%の防汚機能生地「エコリリース」は綿の性質を最大限に生かすことで機能を実現している。また、同社は機能加工で使用する薬剤は全て繊維製品の安全性の国際規格である「エコテックス規格」を取得したものだけを使う。原料と加工材、いずれの側面からも持続可能なモノ作りに取り組む。