特集 清潔・衛生と繊維製品(3)/検査機関の清潔関連試験は

2018年11月28日 (水曜日)

 抗菌防臭、制菌、抗カビ、消臭、抗ウイルス性など、清潔加工は数多い。検査機関はこうした加工の試験を第三者機関として行う。最近は依頼者からのカスタマイズ試験、海外メーカーからの依頼、さらに異業種からの依頼も増えている。

■カケン/防蚊性試験方法を開発

 カケンテストセンターは、新しい機能性試験方法の開発でも大きな役割を果たしている。現在、JIS化が進められている防蚊性試験でもカケンが開発した誘引吸血装置法が採用される見通しとなった。

 近年、蚊などを寄せ付けない防虫加工への注目が高まっているが、これまで共通した試験方法がなかった。このため現在、防蚊性試験方法のJIS化が進められており、2018年度中には発行する見通しとなった。

 防蚊性試験では誘引吸血装置法と強制接触法が採用される予定。このうち誘引吸血装置法はカケンが大学と共同で開発した。JIS発行後には、大阪事業所(大阪市西区)で防蚊性試験を開始する予定。JISはISOとの整合化が基本方針のため、防蚊性試験方法のISO提案も視野に入る。

 カケンは現在、大阪事業所を中心に抗菌、抗かび、抗ウイルス、防ダニ、消臭など清潔・衛生に焦点を当てた機能性試験や微生物試験を実施している。規模の大きな依頼にも対応できる試験能力が強み。マスクのバリア性試験や防護服の血液バリア性試験・ウイルスバリア性試験といった特殊試験も実施している。防蚊性試験などのように試験方法の開発にも引き続き力を入れる。

■ボーケン/顧客要望に応じた試験を

 ボーケン品質評価機構(ボーケン)は未来研究所と機能性事業本部を立ち上げ、機能性試験のさらなる強化を進めている。清潔や衛生などをキーワードにした機能性能の需要は高く、ボーケンにも問い合わせが多い。東京、大阪、上海では抗菌や消臭の試験体制を整え、抗ウイルス性試験も大阪事業所で対応する。

 日本で開発された機能性試験方法は海外でも採用されてきた。2017年5月に中国ではGB/T33610・2として消臭試験が規格化された。この規格策定にボーケン(上海愛麗)も携わってきた。中国の抗菌防臭靴下産業連盟に協力し、抗菌靴下と消臭靴下の認証試験方法を策定、日系唯一の認証試験機関となっている。

 機能性試験に対する顧客の要望も多様化し、新しい機能性試験方法の開発、繊維製品の使用実態に合わせた性能評価、着用者を主体とした着用試験などにも対応する。既存規格の試験条件(温度や処理時間など)を顧客の要望に合わせたカスタマイズ試験、使用状況に合わせた汚れを製品に付着させる「実用生活汚れに対する防汚性試験」、ボーケン職員が製品を着用するモニター試験など、蓄積された評価技術に基づく提案も行っている。

■QTEC/試験で商品企画にも協力

 日本繊維製品品質試験センター(QTEC)は、得意の微生物試験の技術をベースに製品企画への協力も可能な検査機関として存在感を高めることを目指す。

 現在、QTECで抗菌、抗かび、抗ウイルスなど微生物試験や消臭性試験を含めた清潔・衛生分野の試験業務の中核を担うのが神戸試験センター(神戸市)。射本康夫所長はISOに採用された抗ウイルス性試験方法の開発で中心的役割を担った。

 こうした実績を強みに、同センターでは抗ウイルス性試験の依頼が順調に増加しており、ISO規格の試験対象ウイルス種以外での試験依頼も多い。最近では繊維製品以外の薬剤や樹脂を対象とした試験も実施する。特に樹脂製品は抗菌製品技術協議会が中心になって抗ウイルス性試験方法のISO化を進めており、QTECもこれに協力している。

 規格化された試験のほか、依頼企業の要望に応じて着用時のモニター試験などにも対応することで、繊維製品の商品企画協力する業務も増加している。射本所長は「JIS規格、ISO規格をベースに特殊試験にも対応することで対象業界を広げていきたい」と話す。微生物試験分野でのQTECの認知度向上のために学会などでの基礎研究発表にも積極的に取り組む。

■ニッセンケン/異業種市場からの需要も

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、抗菌性や防カビ性の試験対象を広げる。繊維製品での技術が、他業界でも生かされている。

 「プラスチックやセラミックなどの分野では抗菌性試験の受注は伸びている」と、ニッセンケン。東京事業所立石ラボで抗菌性、抗カビ性、抗ウイルス性試験などの試験を行うほか、上海事業所でも抗菌性試験を行い、日本向けのSEKマークにも対応する。

 抗カビ試験も「水回りのプラスチック部材での防カビ試験依頼が来る」ようだ。消臭や抗菌性試験でもスプレータイプの評価の依頼が増えている。「米国、中国、東南アジアからも消臭試験の問い合わせが出てきた」と、海外でも清潔加工への関心が高まってきた。東南アジアからは手術着の制菌加工の問い合わせも。

 2019年度は立石ラボで食品の細菌検査も開始する予定。「拭き取り検査、表示サポートも検討」する。ペット用品も市場として視野に入れる。「抗菌性やホルマリンの安全性など、ペット市場は有望」と見る。

 清潔関連加工は繊維製品では一定の需要を満たしている。しかし、異業種に目を向ければ開拓の余地はまだ大きく、提案次第といえる。