特集 第16回ジャパン・ヤーン・フェア(3)/JY 高付加価値の糸が一堂に

2019年02月15日 (金曜日)

〈東洋紡糸工業/洗濯機対応のカシミヤ糸〉

 紡毛紡績の東洋紡糸工業(大阪府忠岡町)は洗濯機による家庭洗濯が可能なカシミヤ・ウール混紡毛糸を打ち出す。ニーズが高まるイージケアをカシミヤでも実現した。

 家庭洗濯対応のカシミヤ・ウール紡毛糸は同社独自の技術によって防縮性を持たせたもの。カシミヤ30%・ウール70%混とカシミヤ10%・ウール90%混の2タイプを用意する。カシミヤ製品は家庭洗濯でも手洗いのみが一般的だが、洗濯機での洗濯にも対応することでカシミヤ製品の需要掘り起こしを進める。

 備蓄販売するカシミヤ糸・紡毛糸も見本帳で多数紹介する。近年、獣毛・ウール高騰で原毛のグレードを落として価格競争力を維持しようとするメーカーもある中、同社は常に高品質の原料を採用していることなどをアピールする。製品ブランド「糸衣」も紹介する。

〈東和毛織/仏、米国産のウール〉

 東和毛織(愛知県一宮市)は昨年から展開を始めたフレンチメリノウールに加え、今年はアメリカメリノウールを提案する。原産国からこだわったモノ作りで、ストーリー性をうたえる商品をそろえた。

 フレンチメリノはかさ高性に優れるが、繊維にカラーファイバーや不純物が混じることがあった。そこで同社は現地で選別し高品質な繊維だけを厳選し紡績した。

 アメリカメリノは同国中西部で産出される。膨らみ感や白度に優れるほか、希少性の高さもある。16双や30双などのバリエーションをそろえる。

 染工場とコラボした糸も訴求。ウールをムラ染めした太番のロービング糸やスラブ糸なども出品する。

〈トスコ/生地、製品で訴求する〉

 トスコはJYで、従来のトップ糸中心に色のサンプルを見せる形から、生地や製品で提案する方式に変更する。

 コーナーは大きく三つに分け、製品コーナーは横編みの薄手からアウターまで展示する。トップ糸と染め糸で、ラミー、リネン、ウール麻、ウールの製品。原料のトレーサビリティー(追跡可能性)が可能という。今年2年目となる「リネン ヴォヤージュ」はフランス・ノルマンディー北部の原料で、原料商がロットナンバーで管理。これを中国の指定工場で紡績する。

 正面のコーナーはデニム風に統一。リネンを中心にした丸編みを5、6点、ラミーとリネンの織物を15、16点出品。シャツ地コーナーも設ける。

〈豊島/本格的なウールライク糸〉

 豊島はウールライクなポリエステル長繊維「ウールナット」を初披露する。通常のポリエステル長繊維で難しいウールの毛羽感と膨らみ感を表現でき“プレミアム・ウーリー・ポリエステル”として打ち出す。19秋冬向けで採用も決まっている。トルコの合繊メーカーが独自の糸加工を施し生産する。糸種は433デシテックス(T)、844Tの2タイプ。この原糸を尾州産地企業で織布・加工することで、ポリエステル長繊維100%使いでツイードなどの紡毛織物はじめリアルなウールの表現を実現する。

 その他、昨年発表した「テンセル」長繊維「テンセルリュクス」、サイロスパン精紡コンパクト糸「スプレンダーツイスト」、スペイン産ピマ綿を使いサイロスパン精紡甘撚り糸「サンリットメローズ」の進化版も提案する。

〈豊島紡績/多種多様な素材とカラー〉

 豊島紡績(名古屋市中区)はさまざまな素材やカラーバリエーションの糸を出品する。昨年子会社化した鳥取南海紡績(鳥取県青谷町)で紡績したポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」使いの糸も訴求する。

 これまで開発してきた豊富な種類の糸をアピール。こだわりのスーパー140'Sのウールを使った「マンハッタン」やサステイナビリティー(持続可能性)を意識したノンミュールジングウール・キュプラ混の「エコアンプルール」、25色備蓄するラミー100%の「アラン」などを並べる。

 ほかにも、「ランディー」「ブーマー」「チアフル」「ブレーメン」といったウールや麻、レーヨンなどを使った糸も出品。糸だけでなく製品に近い形での展示もする。

〈トヨシマビジネスシステム/デザインソフトの最新版〉

 豊島の子会社、トヨシマビジネスシステム(名古屋市中区)はテキスタイルデザインソフト「4DboxPLANS」の最新バージョン4・0をメインに提案する。ブースではCMのような内容のデジタルサイネージで来場者に訴えるほか、同ソフトを活用したオリジナルの生地によるクッションカバーも出品する。サンプル用織機「織華」も動画で紹介する。

 同ソフトはデザイナーの使い勝手を考慮したグラフィックアプリケーション。「マック」と「ウィンドウズ」で同じ操作性で使用でき、データも完全互換できる。最新バージョンは先染め柄のバーチャル糸作成機能が大幅に向上している。

〈前多/ウールの調のストレッチ織物〉

 石川産元商社の前多(金沢市)はポリエステル長繊維によるウール調ストレッチ織物「RICH(リッチ)」を新提案する。JY出展は今回で8回目だが「糸から製品まで」をキーワードに、これまでも独自の糸加工技術を生かした高付加価値・高感性素材を数多く出品してきた。今回はリッチに絞り込み訴求する。

 リッチはサイド・バイ・サイド糸も活用した加工糸使いの織物で、形態回復性やウールのような表面感と膨らみ感を持つ。既にゴルフパンツや剣道の面に採用されており、JYではこれら製品も展示しながら、糸売りではなく、織物として提案を行う。

 同社は織布3子会社を持ち、カーテンなどのインテリア、中東民族衣装、スポーツウエア、婦人服、資材など幅広い用途に生地を販売する。

〈捲春/ヒノキや鉱石で機能性〉

 捲春(愛知県一宮市)は従来のファンシーヤーンに加え、機能性を付与した糸も提案する。ヒノキや天然鉱石を使用し、リラックスや消臭といった多彩な機能を訴求する。

 ヒノキのおがくずや端材を原料にしたヒノキレーヨン15%・「スーピマ」綿85%の混紡糸は抗菌・防臭効果に優れる。洗濯をしても効果が持続するのが特徴。

 マイナスイオンが発生する天然鉱石を糸に練り込んだ糸も出品する。リラックスや血行促進などの効果があり、昨年はその糸を使ったマスクも販売した。

 顧客のニーズに応じたオリジナルの商品作りが強みで、「波」「サンゴ」などをイメージした意匠糸のほか、プレス加工でテープ状にしたリネン100%の糸も出品する。

〈モリリン/新素材はエコを意識〉

 モリリンはサステイナビリティー(持続可能性)を打ち出した新素材「クールマックスエコメイド」を展示する。これまで展開してきた素材も提案する。

 クールマックスエコメイドは97%のリサイクル資源から作られたポリエステル素材。ポリエステル100%だけでなく、ウールや綿、レーヨンといったエコをうたえる素材と複合させバリエーションも広げる。来春夏向けから本格展開し、衣料から資材向けまでの商材として訴求する。

 ほかにも、ポリエステル長繊維に特殊な加工を施した「バルジー」や特殊ナイロンを交撚した長短複合素材「メリノアーマー」、アクリル・レーヨン・キュプラ混の「ホットポルカ」なども併せて展示する。

〈長谷川商店/多彩なシルクを備蓄〉

 長谷川商店(愛知県一宮市)はバリエーション豊かな番手やカラーのシルクをそろえる。近年は靴下や手袋などの小物製品での展開を進めており、JYでも展示する。

 シルクは長繊維糸、絹紡糸、紬糸などの種類をそろえ、単糸では1~120番手、双糸では20~240番手を展開する。カラーも豊富で多いものでは240色をラインアップ。これら全てを備蓄しており、短納期に対応する。

 今回展では1月にイタリアで開かれた「ピッティ・フィラティ」展で好評を得た商品を中心に出品する。シルク・ナイロン混の「プルミエールブークレ」、シルク・ポリエステル混の「バルーン」などを並べる。

〈宮田毛織工業/持続可能性を全面に〉

 宮田毛織工業(愛知県一宮市)はサステイナビリティー(持続可能性)を前面に打ち出す。素材はもちろん生産工程でのエネルギーコスト削減といった取り組みなども紹介する。

 素材では再生ポリエステルやノンミュールジングウール、オーガニックコットンをはじめ、持続可能な綿花栽培を推進する「ベター・コットン・イニシアチブ」対応の綿などを使った生地を展示する。

 原料だけでなく工業として実践できるエコを掲げる。伴染工(愛知県一宮市)とコラボし、機械での乾燥から天日干しに変え、どれだけのエネルギーが削減できたかが一目で分かるような展示もする。

〈森保染色/ウールの良さ改めて〉

 森保染色(愛知県一宮市)は2回連続の出展。前回展同様に認知度の向上を狙う。今回展ではウールが本来持つさまざまな機能性を改めて訴求するほか、同社が保有する各素材の染色技術や各種機能加工を紹介する。

 その一つが東亜紡織、ソトーと共同開発した非塩素系防縮加工ウール「ライフファイバーEFT」やスマートテキスタイルに対応する金属メッキ加工。ライフファイバーEFTは先頃共同事業体も立ち上げており、海外を含めて本格化に結び付けたいと期待する。銅やニッケルなどの金属メッキ加工は導電性や電磁波遮蔽(しゃへい)性を付与できることからスマートテキスタイル対応素材でもある。