特集 小学生服(1)/接点を作り、市場切り開く

2019年02月18日 (月曜日)

 全国の小学校約2万校のうち、制服を採用する小学校は10%程度とみられる。学校によっては人数が少なく、制服を供給するにも対応が難しいケースが多く、なかなか広がらない市場と言える。しかし、少子高齢化で中学校、高校も含め生徒数が減っていく中、制服を採用していない小学校へも何とか接点を作りながら、新たな市場開拓につなげようとする動きが強まってきた。

〈全国の小学校2万校切る/見直される制服の価値〉

 昨年12月に文部科学省が発表した学校基本調査(確定値)によれば、2018年度の全国の小学校数は前年度に比べ203校減り、1万9892校と1948年の統計開始以来、初めて2万校を割った。児童も2万人以上減り642万人と、最も多かった1958年の1349万人の半分以下となっている。

 小学校の標準服を含む制服採用校は全国で10%程度と見られるが、この割合はここ何年も変わっていない。要因としては中学校、高校に比べ小学校は生徒数が少ない学校が多く、採算面が厳しい点がある。もっとも、自由服だった学校が制服を採用する場合のハードルも高い。

 昨年2月に東京都中央区立泰明小学校でイタリアの高級ブランド「アルマーニ」がデザインを監修した制服(標準服)を採用したことが反響を呼んだ。一式そろえれば8万円以上で、公立の小学校にしては「高すぎる」という声が聞かれ、話題となった。泰明小学校は極端な例にしても、“制服=高い”というイメージが浸透する中、制服の採用に抵抗感を抱く保護者も少なくない。

 ただ、学校の中には制服の価値を改めて見直し、自由服から制服に切り替える動きも少なからず出てきた。大阪市立平林小学校(大阪市住之江区)では1970年の創立以降初めて18年4月の入学生から標準服を導入した。「家庭の経済的環境の違いが、児童の服装に明らかに見られるようになってきた」(古山清校長)ことが背景にある。

 特に自由服の学校では、卒業式の時に生徒が紋付き袴を着用するなど華美になる傾向がある。学校の教員にとって生徒の服装の格差は全国的に頭を悩ます問題になりつつあり、制服の導入は一つの問題解決につながる可能性もある。

 安全性も制服の着用で高まる。平林小学校の場合、校区が広く車の往来が激しいところもあり「すぐに本校児童と分かる独自の標準服は安全性の向上につながる」(古山校長)とともに、「地域の方に見守ってもらいやすくなる」と指摘する。

 学生服メーカーが販売する制服の中には意外に知られていないが、交通傷害補償付きのものもあり、万が一交通事故に遭った場合でも程度に応じて補償を受けられる。制服があって良かったと思うようなサポートがあることをもっと発信していく必要もありそうだ。

〈新たな仕掛けで認知高める/学校支援、小学校へも〉

 中学校、高校の制服ではニット化が進むが、小学校もニット化の波が押し寄せる。オゴー産業(岡山県倉敷市)は、昨年発表したスクールニット「アクティ」が早くも一部の学校で採用され好評。生地の表と裏にゲージ差をつけ、独特の表面感を出したセーター、ベスト、カーディガンを展開する。

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は、イージーケア性が高いポロシャツ「ラクポロ」など高付加価値の商品の販売を拡大。通常のポロシャツに比べ高いものの、「安かろう悪かろうの商品を買うより、長い目で見れば機能など付加価値の高い商品を買う方が良いといった認識が広がっている」(江藤貴博スクール第一販売部長)と、販売数量は前年比20~30%増と堅調に伸ばす。

 トンボ(岡山市)は、制服の動きやすさやイージーケアへのニーズが高まる中、中高向けではストレッチ性を高め、より快適な着心地を実現したニット素材「ミラクルニット」を開発。採用校が順調に広がっていることから小学校向けでも「型崩れや物性面などしっかり精査しながら商品化していきたい」(青江宏明スクールMD部副部長)と、ニットでの新たな商品開発に取り組む。

 新たなニーズを捉えるブランディングも活発になる。オゴー産業は文具メーカーのサクラクレパス(大阪市中央区)と共同で商品開発に乗り出す。「サクラクレパスの文具はほとんどの人が使ったことがあり、イメージになじみがある。そのイメージを生かして新しい販路開拓にもつなげたい」(片山一昌経営企画部長)と、小学校低学年や女子児童向けのアイテムを想定し、6月の展示会で披露する。

 明石SUCも19年入学商戦から女子中高生向けに人気キャラクター「リカちゃん」をモチーフにしたブランド「リカ富士ヨット」で、小学生向けの商品開発も進める。

 制服以外でも学校支援という形で、小学校と新たな接点を持つ動きも出てきた。菅公学生服(岡山市)は、学生服の販売だけでなく、“ひとづくり”のプログラムなど教育ソリューション事業を広げ、学校との関係を深耕する。「一歩進んでは二歩下がる感じだが、着実に事例ができつつある」(曽山紀浩取締役開発本部長)と、長期的な視点で事業の拡大に臨む考えを示す。

 昨年は地震や豪雨など災害多かっただけに防災への関心も高まる。明石SUCは新たに開発した小学校向けの防災学習教材を開発。低学年から高学年用までの3種類のワークブックに加え、教員用の学習指導書、DVDによって、自然災害の恐ろしさを生徒に分かりやすく教えることができる。今春から一部の学校で採用され、広がりを見せる。

 トンボは毎年、「WE LOVE トンボ」絵画コンクールを開催。昨年は15万点も応募があり、小学生の応募が最も多い。制服を採用する小学校が少ない中でもコンクールを通じて認知度を高める。