アパレル総合特集(4)/アパレル総合19春夏~ネクストトレンド~カジュアル編

2018年11月26日 (月曜日)

〈ゲストリスト「レッドカード」/価格とデザインの絶妙バランス〉

 ゲストリスト(東京都渋谷区)が企画製造するジーンズブランド「レッドカード」が好調だ。4月にリニューアルした人気モデル“アニバーサリー”がけん引し、国内の取引先からは「現在も売れ筋上位に入っている。価格とデザインのバランスにたけ、コーディネートがしやすい」との声が上がっている。

 人気のアニバーサリー品番は、3モデルを用意。程よいビンテージ感とストレッチを利かせたリラックスシルエットや、脚長効果のあるハイライズ仕様、ややゆとりのあるシルエットとメンズライクな加工が特徴のボーイフレンドジーンズなど、いずれもシルエットを現代的にアップデートさせている。

 同モデルの価格は1万9千円で、そのほかのジーンズも1万円台後半が中心価格になる。国内でデニム生地を調達し、生産も国内で対応。今後は米国市場に攻勢をかける考えを持つ。取引先アカウントは120~150の間で推移しており、販売拠点数は大小を合わせて千店舗に迫る勢いを見せている。

〈キシユニバース「ウェアボブソン」/人気の東京デザイナー起用〉

 「ボブソン」ブランドの販売代理店キシユニバース(東京都中央区)が展開するジーンズブランド「ウェアボブソン」は、ファッション感度の高い20~30代男女のリピーターを獲得し、19春夏シーズンも受注が好調だった。

 同ブランドは16秋冬シーズンから販売を開始し、シーズン毎に東京の人気デザイナーを起用している。19春夏は「ウジョー」の西崎暢氏がデザインを担当し、セレクトショップを軸に販路を広げている。

 同社では「西崎デザイナーとのコラボは2シーズン目を迎え、ボブソンとの相性が良いことが分かった。モード感を盛り込みながら尖った印象はなく、大人層を取り込むことができた」とする。

 ユニークなクリエーションが少ないといわれるジーンズカジュアル市場にあって、東京デザイナーとのコラボが定着。バイヤーの知名度もアップしている。さらに海外でも引き合いがあり、フランス、カナダで取引先を開拓している。19春夏は2万8千~3万5千円が中心価格で、デニムワンピースやコートなども用意した。

〈コダマコーポレーション/3社合同展で集客力向上〉

 ジーンズカジュアルのコダマコーポレーション(広島県福山市)は、カジュアルウエアのサン・メンズウエア(大阪市西区)、雑貨の山本洋品雑貨(名古屋市中区)と共同で、GMSの価格帯を意識しかつヤング層をターゲットにしたメンズ向け商品を中心に展示会を開いてきた。

 合同展は2011年9月に、コダマコーポレーションの単独展にサン・メンズウエアが加わる形でスタート。その後、山本洋品雑貨が加わり3社合同展となった。春向け、夏向け、秋冬向けと年3回の展示会を、東京と大阪で毎年開催している。

 主催3社それぞれの得意アイテムを、来場者は一堂に見ることができる。コダマコーポレーションの独自ブランド「フリーゲート」と「リマスター」では、コダマコーポレーションがボトムス、サン・メンズウエアがトップス、山本洋品雑貨が雑貨を企画し、それぞれ展開している

 10月に大阪で開催された19夏展では、コダマコーポレーションがボトムス、サン・メンズウエアがトップスを前面に出展。山本洋品雑貨の帽子やベルトなどの雑貨が両社の商品に加わり、より見応えのある展示会で集客力を高めた。

〈ジャパンブルー/“一点物”を愛好家へ/JBJ上野店オープン〉

 ジャパンブルー(岡山県倉敷市)は今月2日、海外戦略ブランド「ジャパンブルージーンズ(JBJ)」の直営店「JBJ上野店」(東京都台東区)を、JR上野駅から徒歩3分の上野アメヤ横丁そばにオープンした。初の試みとしてジーンズ、ジャケットなど“一点物”のリメーク品を販売。デニム愛好家やインバウンド客を取り込む実験店舗として始動する。

 上野店の周辺には飲食店が多く、衣料品店は少ないが、「コアなジーンズの愛好家が多く、最近では海外からの観光客も増え、インバウンドを期待できる」と出店を決めた。

 約25平方メートルと全直営店の中では最小で、ジーンズを中心にボトムス50種類をラインアップ、その他のトップスや雑貨小物、上野店限定ジーンズなど、約300点の商品でコンパクトに売り場を構成する。

 上野店独自の取り組みとしてジーンズをはじめ、カジュアルパンツ、ジャケット、シャツなど一点物のリメーク品を販売。常時20点ほどのリメーク品を並べ、感触の良い製品があれば採用し、量産につなげる。上野店では初年度の売上高5千万円を目指す。

〈カイハラ/機能デニムの開発継続 幅広い供給体制も強調〉

 国内最大手のデニムメーカー、カイハラ(広島県福山市)は、機能を持ったデニムによる採用ジャンルの拡大を図る。

 同社は快適性や強度などデニムに求められる幅広い機能の提案によって、これまでデニムが使われなかったスポーツやアウトドア用途にも版図を広げつつある。

 貝原淳之専務は「他社で調達できない独自性を持ち、為替要因などに需要が左右されないものの打ち出しが必要」と話し、今後も機能性を持ったデニムの開発を継続する方針を示す。

 今期(2019年2月期)は国内、海外ともにカジュアル衣料全般の不振が事業に響いている。貝原良治会長は「カジュアル衣料の回復気配はまだ感じられない」と指摘する一方で、「デニムメーカーに求められる価値も多様化している。環境に優しい生産体制を整えている点などもアピールしていきたい」と話す。

 タイの生産拠点のカイハラ・タイランドも生産品質の向上が進んできた。欧州に近いことでのリードタイムの短縮など、幅広い付加価値を打ち出し、同社からの調達の選択肢の多さも強調していく。

〈レンチング/注目高まる生分解性 合繊からの代替加速〉

 レンチングの再生セルロース繊維「テンセル」が幅広いアイテムで採用される動きが強まっている。マイクロプラスチックによる海洋汚染への懸念が高まるなどで世界的に“脱プラスチック”の流れが強まったことで、テンセルの特徴である生分解性への注目が高まる。

 合繊を代替する形でテンセルの採用が増えているのがフリース。合繊フリースは起毛加工によってマイクロプラスチックの発生源として欧米のアパレルが忌避する動きが強まる。これに対してテンセルは生分解性が特徴。コンポスト、土中、そして海洋中のいずれでも生分解性を有することを確認しており、国際認証「OK Biodegradable」をそれぞれ取得している。

 このため生分解性のあるテンセルをフリース素材に活用するケースが増えた。また、縫い糸やインナー用トリコット、レースなど合繊使いが一般的な用途でもテンセルの採用が拡大している。そのほか、特殊処理によってトレーサビリティー(追跡可能性)を確認できるレーヨン「エコベーロ」やリサイクルテンセル「リフィブラ」への引き合いも増加している。今後、アパレル分野でテンセルの存在感が一段と高まりそうだ。

〈豊島/オリジナル性を支援〉

 電子商取引(EC)市場が急成長を遂げる中で、衣料品市場が苦戦する。豊島は、素材発信力・調達力の強化を進めるとともに、OEM/ODMの進化を図る。

 中国生産から東南アジアへのシフトを進めるが、素材は中国が多かった。中国の環境規制強化の影響で納期トラブルによる物流費増、人件費アップなどで利益面が厳しくなった。このため、主力工場を中心に生産の一元管理を進めるためのデジタル化にも取り組む。付属品一つが欠けても、衣料生産はできない。トラブルが起きないよう事前の組み立ても重要になる。

 東京本社は160人を超えるデザイナーを抱える。アパレルへの提案も、ブランドを理解した上での最適な提案を心掛ける。ショッピングセンター系ブランドが同質化してきた。相手先のブランドが何を発信しようとしているのか、どのような価値を訴求しようとしているのか。そういったオリジナル性を支援する提案を行っていく。

 27日からは東京本社で19秋冬素材展示会を開き、エコ素材、機能素材などを提案する。

〈YKK「メタルックス」/「高級感」と「軽さ」好評〉

 婦人服の春夏カラーはこのところ鮮やかなカラーが増えている。カラーによって強い印象を与える、リゾート気分を高める、ブランドとしての特徴を訴求するなどが理由。素材面でも「より軽く」がキーワード。副資材にもそうしたニーズが見受けられる。

 YKKは2009年、金属調で軽量な「ビスロン」タイプのファスナー「メタルックス」(6色展開)を発売した。その後、顧客からは「もっと輝きが欲しい」と高輝度化が求められ、13年から専用ラインを新たに設けて「メタルックス」箔転写タイプ(3色)を発売。この9月末から新たに4色の販売を開始した。

 新カラーは箔転写タイプが3色。薄金のライトゴールド、アンティークシルバー、見る角度で偏光するブラックホログラムを提案する。コーティングで艶を出したグロスタイプのブラックも開発した。

 今秋開かれた「YKKファスニングクリエーションフォー2019」にも出品し、来場者から好評だった。「機能性」とともに、「高級感」と「軽さ」を実現した。