特集 ユニフォーム総合(8)/素材・副資材・商社/新時代のユニフォームに活路開く

2018年11月29日 (木曜日)

 猛暑で電動ファン(EF)付きウエアの爆発的なヒットや、異業種の新規参入で盛り上がるユニフォーム市場。その盛り上がりは素材・副資材メーカーや商社の力がなければ成り立たない。新時代のユニフォームを形作るためにも、各社は新たな素材開発、戦略でこれからの市場に臨む。

 東レは10月中旬、東西の本社で「2018年 東レユニフォーム総合展」を開催し、環境、安全・防災、健康、着用者の快適性に寄与する高機能素材・製品をアピールした。

〈EFウエアに新提案/東レ〉

 今シーズン、猛暑を背景に爆発的なヒットを記録したEFウエア。東レは来シーズン以降、異業種や中国勢の参入によって同市場での競合が激化するとみている。

 このため、EFウエア向けに販売する素材の高度化を進めており、19春夏から小松マテーレと共同開発した太陽光を遮蔽(しゃへい)する特殊コーティング素材を打ち出す。

 ナイロンのクーリング素材「スプリンジー」で開発したツーウエートリコットを、中に着るコンプレッションウエア向けに特殊コーティングとのセットで提案する。

 両素材によるウエアをマネキンに着せて温度変化を測定したところ、従来品に比べ衣服内の温度が5~8℃低くなるとの測定結果が得られたという。

 白衣向けには透け防止素材「ボディシェル」を投入。総合展では、ボディシェルとポリエステル綿混による2点の白衣を出展し、ボディシエルで商品化すれば白衣を3割強、軽量化できるメリットを訴求した。

 スクール向けでは、ウール高騰を踏まえ「今回もあえてウール混の打ち出しを見送った」としており、ポリエステル100%や高率混の商品ラインアップを充実させた。

〈「SDGs」打ち出す/帝人フロンティア〉

 帝人フロンティアは、19秋冬のユニフォーム素材のテーマに、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」を据える。安全で環境に配慮した素材を提案することで、ユニフォームを採用する企業やメーカーの意識を高める。

 欧州のスポーツアパレルを中心に、サステイナブル(持続可能な)素材の要望が増えており、合繊メーカー各社は、急ピッチで開発を進める。

 同社は、SDGsの考え方に基づき、安全性や快適性、バイオ由来原料、環境汚染物質の排出低減など8項目に分け、それぞれに合った素材を明記した。

 例えばバイオ由来原料では、ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」を提案する。軽さや風合いに優れるソロテックスは、オフィス、メディカルウエアなど幅広く採用されている素材だが、「バイオ由来原料を使った素材ということは意外と知られていない」(同社)。

 このほかフッ素を使わずに撥水(はっすい)加工を施した「マイクロフトゼロ」や、保温性が高く、省エネに効果がある「エルゴライト」も打ち出す。

 用途別では、ワークウエア向けに高い強度がある素材「パズモ」を初めて提案した。元々、野球やラグビーといったスポーツ向けの素材だが、糸に太さやストレッチ性を持たせてユニフォームに合う生地を開発した。

〈得意の機能加工を応用/シキボウ〉

 シキボウは、得意の清潔・衛生加工を生かし、電動ファン(EF)付ウエア向けの生地の差別化を目指す。ユニフォーム地として人気が高い校倉造り織構造高通気生地「アゼック」もバリエーションを拡大した。

 アゼックは快適性への評価が高く、これまで販売量を順調に拡大してきた。2017年からは従来の織物に加えてアゼック編み地の販売もスタート。Tシャツやポロシャツなど製品での提案で販売が拡大している。

 17年からEFウエア向けの生地販売も開始した。市場の拡大を受けてこちらも販売量が伸びている。

 EFウエア向けでは得意の機能加工を応用した提案にも取り組む。EFウエアの普及で、着用現場からは排気の臭気への対策といった新しいニーズが登場した。これに対してシキボウでは、消臭加工「スーパーアニエール」を導入した生地を提案するなどEFウエア用生地の差別化を進める。

 そのほか、このほど防虫加工「防虫アーマー」も開発した。こちらも作業服用途に積極的に提案する。

〈部署間連携し開発強化/東洋紡STC〉

 東洋紡STCは、新たな機能性素材の開発に力を入れる。ユニフォーム事業部だけでなく、スポーツ・インナー素材を扱う部署とも連携を強めて新たなニーズに合った素材開発に取り組む。

 直近では、洗濯耐性に優れた生地を開発している。工業用洗濯50回にも耐えられる機能の開発で成果が出ており、消臭や抗ウイルス加工で高い洗濯耐性を持つ加工を実現した。

 再生ポリエステルや未利用綿を使った環境配慮型素材のアピールも強める。こうした素材は1990年代から販売するが、近年、国連の掲げる「持続可能な開発目標」(SDGs)に貢献することを事業計画に取り込む企業も増えているため、改めて提案する。

 上半期(2018年4~9月)までの商況は総じて堅調に推移する。主力のワークウエア分野は東京五輪に向けた更新や建て替え需要の増加に合わせて底堅い。白衣は食品工場用途が好調。食品工場ではHACCP(食品分野の生産工程管理システム)に基づいた製造管理が広まったことが、工場用白衣の更新を後押しする。

 サービス業向け制服は飲食業、接客業、旅客運送業などへの販売が順調に進む。五輪に向けて周年を迎える企業の更新の増加が需要を下支えする。

 課題となるのは製造コスト上昇による利益率の悪化。中国の環境規制による染料高騰に加え原燃料費や運送費等諸経費も上がっており、素材価格の改定も視野に入れる。

〈ストレッチや機能素材で新開発/クラボウ〉

 クラボウは、ユニフォーム向けでストレッチ素材など多彩な差別化素材を開発してきた。電動ファン(EF)付ウエア向けに消臭加工の開発も進めるなど新たなニーズへの対応も進める。

 近年、ワーキングユニフォームでもファッション性へのニーズが急速に高まる。このためスタイリングや着心地の観点からストレッチ生地への需要が一段と高まった。こうしたニーズに対してクラボウはプレミアムストレッチ素材「ジザイア」を重点提案する。

 ストレッチ素材は一般的に使用する弾性糸の物性の関係上、耐久性に課題があるが、ジザイアは洗濯30回後でも機能を維持する高い耐久性が特徴。ユニフォーム用途はコスト競争力や汎用性も必要なことから、定番素材の延長線上で使うことのできるストレッチ素材として「バンジーテック」も用意する。

 EFウエアなど新しい商品に向けた開発も進む。特にEFウエアからの排気の臭気対策として業界最高水準の機能を実現した消臭加工を開発中。EFウエアの生地だけでなく、中に着用するインナー用途での活用も目指す。

 さらに、防汚加工でも工業洗濯に対応した業界最高水準の機能を実現する開発を進めるなど、ユニフォーム用途での商品力を強化する。

〈「コーデュラ」多面的に/インビスタ〉

 インビスタは、高強力ナイロン「コーデュラ」でサステイナビリティー(持続可能性)など多面的なアプローチによってユニフォーム分野での市場開拓を強めている。ワークウエアを中心に、ストレッチに耐久性という付加価値を出せることや摩耗に強い点から採用されるケースが増えてきた。

 10月にカイタックトレーディング(岡山市)で開いた展示会では、1年間でパンツを4~5着はきつぶしていたものが、コーデュラ採用のパンツ着用なら1・8着まで減った事例を紹介。コーデュラ使いで価格が上がっても、“衣服の寿命を伸ばす”という点で、サステイナビリティーにつながることを訴求する。

 さらに「ストリート・カジュアル化の流れ」「軽量・ストレッチ」「特殊ニーズに沿ったカスタマイズのしやすさ」「スマートウエアへの対応」など、欧米でのワークウエアのトレンドに沿って多面的な展開も日本で見据える。

 寝装の中わた用途へ展開するポリエステル短繊維「ダクロン」を、世界に先駆け日本市場だけ衣料向けに展開を始める。一部のカジュアルブランドで17秋冬から既に採用。洗濯してもかさ高性を維持し、薄くても保温性が高いことから防寒を中心にユニフォーム分野へも拡販に乗り出す。ダクロンはカイタックがユニフォーム分野に限りモノポリーで供給する。

〈「レンチングFR」の認知度高める/双日〉

 双日は、展示会出展などを通じて同社が販売するレンチングの難燃レーヨン「レンチングFR」の認知度向上を図る。ユニフォームアパレルに対する直接アプローチにも取り組む。

 レンチングFRはアラミド繊維との複合などで消防服といった用途で世界的に豊富な実績を持つ。こうした実績を生かし、新たな用途の開拓を進める。単純な防炎・難燃だけでなく、溶融金属に触れた際に金属が繊維に付着せず流れ落ちるメタルスプラッシュ機能や高電流によって生じるアーク放電に対する防御性など、レンチングが早くから研究開発を進めてきた機能や用途の打ち出しを強める。

 レンチングFRの認知度向上も大きなテーマ。10月に東京で開催された「危機管理産業展(リスコン東京)」にレンチングが出展した際には双日としても全面的に協力し、新規取引の開拓に取り組んだ。展示会を通じて官需・民需ともに新規取引の足掛かりとなるような引き合いがあるなど成果も上がる。

 双日では今後、レンチングFRに加えて、レンチングの再生セルロース繊維「テンセル」も合わせてユニフォーム用途への提案を強化。そのために国内のユニフォームアパレルなどに対する直接アプローチも強化する。

〈ラメ糸も工業洗濯に対応/泉工業〉

 ラメ糸メーカーの泉工業(京都府城陽市)は、工業洗濯にも対応するラメ糸「タフテックス」でユニフォーム分野への提案を強める。

 同社のラメ糸はオフィスウエアを中心に採用が拡大している。ユニフォーム用途は高い洗濯耐久性が求められるが、特にラメ糸はアルカリ性洗剤への耐性が不可欠。同社はアルカリ減量加工にも耐えるラメ糸「ジョーテックス」を擁することが強みとなる。

 ユニフォーム用途での販売拡大には、さらに工業洗濯にも対応する必要があるとして、カーペット用途でも実績のある「タフテックス」をベースにユニフォーム用ラメ糸の提案を進める。2プライ仕様(金属蒸着層の両面にフィルムを貼ったタイプ)のため摩擦に対する耐久性も高い。分散染料での染色も可能。ユニフォームはコスト競争力も求められる用途のため、アルミ蒸着タイプを中心に提案する。

〈品質重視の供給体制奏功/モリリン〉

 モリリンのユニフォーム向け生地・縫製品売上高は2019年2月期、前期比20%増という目標を達成できる見通しとなった。繊維資材グループの山田敏博統括部長は「業界全体の好調さに加え、東京市場の拡大や備後ユニフォームアパレルとの取り組み強化が奏功した」と分析する。特に東京市場は人員増強により新規開拓が進んだ。

 中国の環境規制強化などに伴う納期遅れが顕在化する中で、同社は協力工場とアイテム別で取り組みを強化するなど、品質を重視しながら供給体制の整備も進めた。生産管理担当者の増強やCADオペレーターの充実など営業だけでなく、サポート体制を整えたことが「信頼感」となり、売り上げに結び付いた。

 今後は特徴でもある糸からの開発素材と連動させたODMに磨きをかける。「ユニフォームがスポーツカジュアル化する中で、新規参入も増えている。その中で違いを打ち出す必要がある」とし、個々の需要家と取り組みながら素材からの開発に注力。中国でのコスト上昇に対応し、東南アジアでの素材から一貫体制の構築も課題に挙げた。

 その他、サステイナビリティー(持続可能性)を重視する動きにも対応する。「ユニフォームでもサステイナビリティーの動きが加速するはず。そこに対しブランディングも含め準備は必要」と話す。