転機を好機に変える PV・MU レビュー(3)/EPA本格活用は次回から
2019年02月28日 (木曜日)
「ミラノ・ウニカ」(MU)と「プルミエール・ヴィジョン(PV)パリ」開幕直前の2月1日、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効し、繊維製品の関税が即時撤廃された。輸出拡大へ追い風となるはずだが、PV、MUとも今回に限れば、関税撤廃に伴う生地価格の実質的低下の訴求はそれほど多くなかった。
その背景として、自己申告方式で定型フォームもない原産地証明など制度の不明確な点があり出展者側に依然、戸惑いがあるという事情がある。「やぶ蛇は避けたい」思いを、「気に入った生地は値を気にしない“感性重視”」の欧州バイヤーの気質も後押し。「認知定着までは様子見する」姿勢で臨む出展者が多かった。
欧州ではまだEPAの認知度が低いことも要因。関税免除は購入側の要請があって初めて活用できるが、EPAの存在自体を知らないバイヤーも多く、展示会に来場するのはデザイン部門関係者であって調達担当者ではないことも認知が低く見える背景にありそうだ。
出展側でも、産地企業などでは原産地証明などの免税条件の知識が行き渡っていない現状もある。その一方で欧州ブランドに継続的に生地供給する出展者では、産地企業も含めて、発効を見据えて関税撤廃適用を事前に求められ、2月出荷分から早速免税価格に切り替えた例も散見された。
EPA発効で日本製生地が購入しやすくなることを今回いち早く周知した出展者も皆無ではない。PVでは、ニッケテキスタイルがスワッチ依頼の返送時、EPA発効の認知や関税免除の適用意思を尋ねるアンケート同封。エイガールズもEPA活用のメリットを周知するチラシをPVの出展ブースで配布した。
今後の活用でネックになるのは原産地規則の2工程ルール。機業やニッターはさておき、生地商社や整理加工場の出展者は海外生機加工品などでグレーゾーンを抱える例も少なからずありそうだ。2工程ルール自体の適用範囲や、1工程でも原産性を認める高度な加工工程の解釈では不透明な点も多い。免税適用の有無で価格差が生じたり、それを回避するため生機調達地変更を迫られたりすることもあり得る。そもそも原産地証明取得が可能な商品かどうか、一品番ごとの精査が必要となる。
今後、EPAの一般的な認知は、速度はどうあれ不可逆的に進む。「既にEPAを活用する他国とこれで共通の土俵に乗っただけ」「まずは他社の失敗事例が集まってから」という後ろ向きの声も聞こえるが、次回の秋冬展では免税メリットの本格訴求をスタートさせる必要があると多くの出展者がみる。今後、例えばMUの日本コーナー主催者に名を連ねる日本貿易振興機構(ジェトロ)などが受け皿となって原産地証明申請をフォローし、小規模企業もEPAを活用しやすい環境作りに取り組む必要がありそうだ。




