モノ作りを今年も支える/検査機関

2019年01月01日 (火曜日)

 「繊維は面白い」。その根底にあるのは、モノ作りである。とはいえ、グローバル化の進展、さらにCSR(企業の社会的責任)が求められる中で、モノ作りは従来以上にさまざまな面でハードルが高くなっている。検査機関はそうしたモノ作りを今年もサポートする。

〈カケン/グローバルな視点で活動〉

 カケンテストセンター(カケン)は昨年、創立70周年を迎えた。長尾梅太郎理事長は過去を振り返り、「二つの経営方針の確立がカケンの今を形作った」と話す。1968年に当時の小林正理事長が米国の検査機関を調査し、「試験業務・試験鑑定業務の拡大」「海外進出」を打ち出した。それまで検査が収入源だったが、76年に不況で合繊長繊維糸の内需検査がなくなり、一気に苦境に陥った。

 しかし、試験業務の拡大方針から試験に着手していたことで、79年には経営を黒字転換できた。80年以降は非繊維分野の開拓にも乗り出した。

 85年のプラザ合意では急激な円高が進行。海外進出への取り組みは、喫緊の課題となった。88年に韓国繊維技術振興センター(現KOTITI試験研究院)と業務提携し、94年に駐在員4人を上海に配置して業務を開始した。これを契機に、中国、東南アジアなどに広く拠点を設ける体制を構築してきた。

 長尾理事長は「国内は人口減少社会、外にあっては新しい国際秩序が模索されている。100年企業に向けて、試験の品質確保を基礎に、グローバルな視点で活動する。顧客にソリューションを提供する情報企業も目指す」考えを表す。

〈ボーケン/品質保証のパートナーに〉

 「2015年にSDGsとパリ協定が採択されたことを受け、業界のサステイナビリティー(持続可能性)、環境問題への関心も広がった年だった」と、ボーケン品質評価機構(ボーケン)の堀場勇人理事長。今年は事前検査だけでなく、CSR(企業の社会的責任)監査などの準備を進めるほか、研究開発、認証やサポート業務などの拡大を通して「品質保証のパートナー」を目指す。

 堀場理事長は「性能評価だけでなく、品質と保証が重視される時代。そのためには専門性の高いサービスの提供が求められ、人財育成がますます重要になる」と語る。

 ボーケンは昨年、大阪本部内に「人財育成支援センター」を新設した。年末にはクレド(信条)カードを職員に配布。経営理念、行動指針、求められる人財像などが書き込まれている。「基本の徹底」を図るためのツールの一つ。

 事業では、対象分野の拡大、海外事業の拡大、認証やサポート業務なども強化する。提携機関との連携もさらに深めていく。研究開発では防透け性評価方法などがJIS化された。金沢工業大学と共同開発した「獣毛繊維のペプチド分析法」もISO化され、今後JIS化に協力していく。

〈QTEC/海外検査業務の現地化も〉

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は昨年、「海外事業部」を「海外事業所」に名称変更し、経営の責任主体とするとともに、海外8拠点間の連携を強化している。

 一昨年7月に、青島試験センターを「青島可泰検験」と現地法人化し、同年8月には南通に現地法人「南通浩達紡織品検測」を新設した。現地法人化で、ナショナルスタッフが直接雇用となり、ロイヤルティーも高まっているという。

 南通に拠点を新設したことで、上海総合試験センター、無錫試験センターを含めた華東地区でのトライアングル体制も構築できた。3拠点の横連携を強化するとともに、試験だけでなく、検査業務も広げていく。

 ベトナム試験センターは試験依頼が増えており、東南アジアの重要な拠点という位置付けにある。バングラデシュのダッカ試験センターは「競争の第2ステージにある」とし、将来的には検査業務も視野に入れている。

 試験だけでなく、検査や監査、認証業務も拡大する。来期からの3カ年事業計画「SS計画」にも海外の検査業務の現地化を盛り込む考えだ。QTECは、工場指導といったモノ作りをサポートするのも強み。そうした機能をより強化していく。

〈ニッセンケン/内外を結びつける展開を〉

 ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)は、海外、特に中国の南通、煙台、上海が健闘している。南通には3事業所(南通、崇川、南通人民路)を設けており、試験だけでなく検品も行う。「試験、検品とも順調だが、中国は環境や安全について意識が向上し、エコテックスに対する関心も高い。問い合わせも増えている」(駒田展大理事長)と言う。

 東南アジアなどの事業も業務が増加傾向にある。ベトナムにはホーチミン試験センターを有する。西南アジアではインドにジャイプル事業所、バングラデシュにはダッカ事業所を設けた。インドでは試験業務だけでなく、品質コンサルティングチーム(QCS)、生産コンサルティングチーム(PCS)を設置。インド進出企業を支援している。

 今年は日本、中国、東南アジア、西南アジアの事業所を結び付け、同時にそれぞれの拠点をさらに強化する。アジアでも「エコテックススタンダード100」の認証を進めていく考え。エコテックス認証を浸透させるためのアピールも、日本だけでなく海外でも行う。中国での事業展開は、内需に絡んだ方向にも展開。そのためには良いパートナーと組むことが重要とする。人材育成にも注力する。