不織布新書19春(5)

2019年03月20日 (水曜日)

〈帝人フロンティア/バグフィルター伸ばす/「ナノ」・アラミド・PPSの3本柱で〉

 帝人フロンティアは2018年4月、繊維資材第二部の中に製品ビジネスでフィルター市場の開拓と取り組むフィルター製品課を発足させた。

 ビジネスモデルイノベーションの一環として、フィルター製品のソリューションチームとして開発、販促と取り組んできたプロジェクトを昇格させたもの。

 同社はバグフィルター、液体用フィルターユニット向けに各種商材を販売しており、この間、バグフィルターでの取り組みを先行させてきた。

 ポリエステルナノファイバー「ナノフロント」とニードルパンチの2層構造品でバグフィルターを開発。17年3月、中国・海南島の大手セメント会社で実地テストに着手した。既存品に比べ集塵(じん)効率、通気性に優れており、寿命が長いのも特徴。

 海南島でのテストの後、中国で開かれたセメントサミットなどで結果を発表したところ、他からも注目され出し、これまでに延べ2万本のバグフィルター(約4万平方㍍)を7社92工場に販売した。

 今年は極細のメタ系アラミド「コーネックス」によるバグフィルターの実地テストにも着手。20年度からの本格販売を目指している。ポリフェ ニレンサルファイド (PPS)繊維によるフィルターもラインアップし、ナノ、メタ、PPSの3本柱でバグフィルター市場に攻勢をかける。

 液体フィルターユニットでは、ナノフロントと他素材との積層品を飲料メーカーや工業メーカー向けに販売している。

 同社は、課として発足以降、18年度の1年間で蓄積してきたノウハウを駆使し、「19年度以降の飛躍につなげたい」との意欲を示している。

〈宇部エクシモ/非衛材分野攻める/差別化品を積極投入〉

 宇部エクシモ(東京都中央区)は用途開拓に力を入れる。主力の衛生材料不織布向けを維持しながら、エアフィルターなどの非衛生材料分野を攻めることで成長を狙う。熱融着複合繊維の提案を強めるほか、ポリオレフィンコンジュゲートわたの本格展開も始める。

 現在、60~70%を占める衛生材料不織布向けを減らすことなく、他用途の深耕を加速する。「差別化した繊維の積極投入や不織布メーカーとのタッグを強化」し、結果として非衛生材料不織布向けの比率を高める。

 差別化品では、芯部にポリプロピレンを、鞘部にポリエチレンを配した熱融着複合繊維「UCファイバー」の訴求を強化。不織布加工時の熱で油剤が繊維中に潜り込む(脱油)製品や不織布加工後に超撥水(はっすい)・撥油(はつゆ)性能を発揮する商材などがそろう。

 ポリオレフィンコンジュゲートわた「エアリモ」は、鞘部に低融点樹脂、芯部に高融点樹脂を用いた芯鞘複合繊維でありながら0・2デシテックスの細繊度を実現しているのが特徴。産業資材用途などに提案する。

〈双日/細繊度「ヴェオセル」用意/原着レーヨンも用途掘り起こし〉

 レンチングの再生セルロース繊維「ヴェオセル」の販売を担う双日は、2019年度(20年3月期)の重点戦略としてヴェオセルブランドの認知度向上と用途開拓に力を入れる。そのため細繊度わたの提案などに取り組む。

 レンチングのブランド再編によって不織布用精製セルロース繊維は「ヴェオセル」ブランドに統一された。このため双日では現在、ユーザーだけでなく最終製品メーカーにも直接説明することでブランド認知度向上への作業を進めている。

 19年度もヴェオセルの拡販がポイント。特にフェースマスクや制汗シートなどといった用途に力を入れる。さらに新たな用途開拓のため現在の主力である繊度1・7デシテックス(T)品だけでなく1・3T品や0・7T品の提案も検討する。ヴェオセル以外ではレンチングの原着レーヨン短繊維の用途掘り起こしにも取り組む。染料高騰や環境負荷低減に対応できる点などを打ち出す。

 環境負荷低減の観点では機能性を切り口に合繊代替の需要開拓も提案のテーマとして掲げる。こうした取り組みを最終製品メーカーに直接説明することにも力を入れる。

〈小山化学/新市場開拓などに注力/タイの展示会へ出展〉

 再生ポリエステル短繊維製造大手の小山化学(栃木県小山市)は、用途を含めた新市場開拓と収益性向上に力を注ぐ。マーケティングや生産技術に関連する組織を新たに設置するなど戦略推進の体制を整えたほか、5月にタイで開催される不織布展・会議への出展も決めた。

 同社はペットボトルリサイクルによる原着わたを生産し、自動車内装材用途(不織布向け)のほか、紡績糸用途にも販売している。自動車内装材では天井材やシートバック材などで用いられ、紡績糸は作業服に使われている。両用途ともに着実な成長を遂げている。

 2018年12月期は、原材料価格高騰などの逆風が吹く中で、売り上げと利益がともに計画をクリアした。今期も厳しさが続くと予想し、1月1日付でマーケティング開発本部と生産技術本部を発足するなど、新市場開拓や収益向上への取り組みを加速する。

 新市場開拓では、5月15~17日にバンコクで開催される不織布展・会議「ANDTEX2019」に出展。鈴木馨社長は「当社の強みである付加価値品を訴求するが、今回は市場調査も兼ねる」と語る。

〈髙木化学研究所/多品種小ロット特徴に/規模追わず開発型指向〉

 再生ポリエステル短繊維製造の髙木化学研究所(愛知県岡崎市)は引き続き「規模の追求ではなく、高品質わたの安定供給と機能わたの開発」(髙木紀彰上席顧問工場長)に重点を置く。

 1972年にペットボトルやフィルム屑(くず)などを原料にした再生ポリエステルわたの生産を開始し、現在は片寄工場(同)に月産500㌧の能力を持つ。黒や各種カラーの原着、白わたなど多彩な品種と小ロットにも対応する。

 さらに難燃タイプや中空タイプなど、特殊な再生わたも手掛ける。中空タイプも用途に応じて中空率を変えるなどニーズに応じてカスタマイズできる。こうした技術開発力を生かして、攻勢を掛けている輸入わたとの差別化を図る。

 同社は再生わたに加え、樹脂成形・加工、プレス板金・表面処理加工、など異なる素材を製造販売する。そして、1949年の創業時から現在まで累計取得特許件数は200件を越える研究開発型企業でもある。その技術力を生かして、昨年には高い熱伝導を持つ樹脂も開発している。