特集 メディカル・介護ウエア2019(3)/現場のニーズを捉える/素材メーカー編

2019年03月22日 (金曜日)

 素材メーカーは抗菌、抗ウイルス素材の開発を進める。最近は糸や生地での提案に加え、医療や介護現場のニーズを捉えた商品開発も進む。各社の重点素材や製品を紹介する。

〈抗菌、抗ウイルス加工に広がり/技術生かし製品開発も〉

 帝人フロンティアは、ユニフォームのコンセプトブランド「エネセーブ」を打ち出す。「環境、安全安心、快適」のテーマに沿って素材の開発を進めている。

 メディカル、介護ウエアに関連した分野では、メラミン樹脂を使わず環境や人体に配慮した、耐久制菌素材の「バリュー」や、防汚機能を高めた「ダストップ」シリーズをはじめ、抗菌防臭や制菌加工などの品質を保証する「SEK基準」に適合した素材を増やしている。

 戦略素材、ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維「ソロテックス」は、着心地の良さや高い機能性からユニフォームへの活用が進む。

 スポーツ向けの機能素材のユニフォーム用途への提案も増えている。高バランスニット「デルタ」は、伸縮性の高さから介護ウエアで需要が拡大している。素早く汗を拡散する「トリプルドライカラット」や汗染みを抑え、速乾性がある「デュアルファイン」など、快適な素材でストレスを軽減する。

 医療や介護現場での利用を想定した製品も広がる。東レは、2018年10月に骨盤ベルトと作業ズボンを一体にした「腰囲周当(よういしゅうとう)」の本格販売を始めた。ズボンをはくだけで骨盤ベルトを正しい位置で装着でき、腰痛のリスクを減らす。開発段階で腰部の筋活動度合いを測定し、ズボンの構造を工夫した。介助のためにかがむ動作が多い、医療や介護現場などに向けた商品で、22年までに5万着の販売を計画する。

 抗菌、抗ウイルス技術に力を入れるシキボウは、医療や介護現場の悩みである排せつ物などの臭いを良い香りに変える臭気対策材「デオマジック」に力を入れる。デオマジックは、大阪市の香料メーカーと共同開発した。不快な臭いを取り込むことで、良い香りに変えるという発想の転換から生まれた製品で、臭いの種類によって香りの成分を変えている。在宅介護が増える中、家庭用の需要も広がっている。

 素材では、ウイルスの動きを抑制する効果がある「フルテクト」を医療用白衣のほか、産業用ユニフォームまで展開する。

 東洋紡STCは、医療機関の白衣や寝具などの繊維製品向けの制菌加工でSEKに適合した「エピコモド」を強みにする。繊維上のMRSAなどの増殖を抑える。他にも工業洗濯50回に対応する耐久消臭加工「タフデオZ」、防汚と撥水(はっすい)、撥油(はつゆ)加工の「マジカル」も提案する。

〈社会医療法人社団愛有会 久米川病院/職種をスクラブで色分け/医療機関のユニフォーム〉

 社会医療法人社団愛有会・久米川病院(東京都東村山市)は、2018年12月にユニフォームを一新した。職種別に色分けしたスクラブは「遠くからでも分かりやすい」と好評。

 久米川病院は、長期の療養が必要な介護療養型病床114床と、地域包括ケア病床42床がある。自宅で生活することが難しくなり、入院した人が一日でも早く家で家族と過ごすことができるようにリハビリに力を入れている。

 看護師やケアワーカー、作業療法士や言語療法士らがチームになり、きめ細かなケアを行う。看護部の田村浜子部長は「患者さん一人一人がどのような状態になったら自宅に帰れるかを考え、家族の方と話し合いながら計画を立てていきます」と説明する。

 久米川病院は、19年10月に同じ東村山市内に新築移転することが決まっており、一足先に病院全体でユニフォームをリニューアルした。

 以前のユニフォームは、白ベースだったが新しいウエアは、色のバリエーションが豊富なスクラブを採用した。職種別に色を分け、看護師はバーガンディ、臨床検査技師はグリーン、リハビリはダークネービーを着用する。

 「ジップスクラブ」を着た看護師からは「羽織るタイプなので、着替えが楽になった」との声が上がっている。

 スクラブのポケットの内側にはペンなどの小物を収納する小さなポケットがある。院内のケアワーカーをまとめる稲垣由美主任は「ポケットの中でペンが固定されるので、出し入れしやすい」と話す。リハビリを行う現場の動きに合わせて、パンツはストレッチ性の高い製品を採用した。

 スタッフたちは、10月から新しいウエアを着て、新設される病院へ移る。新天地でも地域に根差したケアを続ける。