特集 尾州産地総合(3)/在名4商社/尾州との取り組み
2019年03月27日 (水曜日)
〈タキヒヨー/グローバルテキスタイル営業部 テキスタイル営業部長 谷口 陽一郎 氏/尾州を海外に発信〉
――3月1日付で組織を変更しましたがその狙いは。
テキスタイル営業部と国際営業部を統合して、グローバルテキスタイル営業部を新設しました。素材や部署の垣根を越えてシナジー効果を生むとともに、オリジナルの企画開発商材を国内外一体で展開することが目的です。
――尾州との取り組みを教えてください。
現在は婦人を中心に尾州の機業10社と取引をしており、シーズンごとに企画立案し継続的に取り組みを進めています。尾州はオリジナリティーにあふれ、モノ作りを追求できる産地ですが、器用貧乏な面もあります。当社としてはしっかりパートナーを組むことで、それを改善していくことが重要になると考えています。商品開発に取り組むために設置した一宮工場でのモノ作りもさらに推進させていきたいですね。
――今後の尾州との展開を教えてください。
世界に発信するために今後も尾州に重きを置いた展開や取り組みを進めます。欧州にある拠点を生かしながら、その地域のトレンドやニーズを吸い上げ、尾州で生産した生地を世界に売り出していきたいです。それが産地を守ることにもつながりますね。
〈瀧定名古屋/取締役婦人服地部門担当 瀧 浩之 氏/魅力伝えるのが役目〉
――尾州と御社の取り組みを教えてください。
尾州の有力企業と組んで、責任あるウール調達に関する自発的な国際基準のRWS(レスポンシブル・ウール・スタンダード)認証を共同取得しました。トレーサビリティー(追跡可能性)やサステイナビリティー(持続可能性)の強化を図るのが目的で、尾州という価値を付けて海外販売につなげていきたいですね。
――2月発効の日EU・EPAについてはいかがですか。
イタリアの生地が輸入されることが考えられます。イタリアでは設備投資が進んでおり、現地の企業は価格競争力がある上に生産対応力もありますからね。尾州で対応できるかと言われると不安はありますが、素材自体は負けていませんので、そこをもっと発信できればと思います。
――尾州の現況をどう捉えていますか。
尾州は機業場が減少してきているのが現状ですので、当社側からも組み立てが出来るようにすることが大事だと考えています。小ロット、短サイクルが尾州の魅力でしたが、それを伝えづらくなっています。関係作りをより強化して、その魅力を改めて伝えられるようにするのがわれわれの役目です。
〈豊島/一宮本店一部部長 伊藤 彰彦 氏/多彩な商品で要望に対応〉
――尾州との取り組みを教えてください。
当社の一宮本店一部では梳毛糸を中心にさまざまな糸を取り扱っており、尾州に供給しています。高品質な反毛を原料とした「アプリクション」やニュージーランド産のノンミュールジングウールを使った「ローバー」、尾州で加工したウールライクなポリエステル長繊維「ウールナット」などバリエーション豊かな商品をそろえ、産地の要望に応えています。
――ウール価格は高止まりの状況ですが。
ほかの糸も扱ってはいますが、あくまで梳毛糸が基本です。高くても買い続け、それをリスクしていくことが当社の使命です。必要なときにすぐに供給できる体制を敷き、スピーディーに対応することが大事です。当社の糸を使ってもらい、生地として、あるいは製品として売れる手伝いができたらと考えています。
――尾州の現況についていかがですか。
人手不足で生産のタイト化が進み、作る場所が減っていますね。しかし、モノ作りにこだわった人たちはまだ多く残っていると思います。当社としてもそういった人たちに喜んでもらえるような仕事をしていくことは今後も変わりありません。
〈モリリン/マテリアルグループ統括部長 水谷 智廣 氏/本物志向の国内生産を〉
――国内のモノ作りに重きを置いていますね。
糸、生地を扱うマテリアルグループとしては国内の本物志向のモノ作りにこだわっています。尾州を始め国内のモノ作りは質感や風合いを重視するため、どうしても不効率な部分が出てきます。ただ、今後はその不効率さを尾州や国内に残すべきだと思います。それが日本らしさやジャパン・メードにつながりますからね。
――尾州との取り組みを教えてください。
最近ではサステイナビリティー(持続可能性)の時流に沿って、97%のリサイクル資源から作られた新素材「クールマックスエコメード」を尾州の企業に提案しています。作るところ、加工するところなど全て明確にしていますので、生地として、あるいは製品として提案するにも安心して発信できる取り組みを行っています。それは産地にきちんと根を張ってきた糸の部署があるからです。
――ウールでのモノ作りもこだわっていますね。
生地の部署はウールへのこだわりが強い。それは、やはりウールにこだわるお客さんがいるからで、そこを外すことはできません。いずれにせよ国内での本物のモノ作りを守っていきたいと思います。