特集 アジアの繊維産業Ⅱ(6)/変わりゆくアジア生産と検査機関の取り組み
2019年03月29日 (金曜日)
人件費上昇、人手不足などの要因から衣料品生産は中国からASEAN地域にシフトしたが、ここに来て中国見直しの動きも出てきた。一方、米中貿易摩擦、環境規制強化の影響も予断を許さない。検査機関はどのようにアジアに取り組むか。
〈ボーケン/ベトナムで利便性向上を/タイでは抗菌性試験訴求〉
ボーケン品質評価機構(ボーケン)のベトナムのホーチミン試験センターは、「ベトナムの伸び代に期待している。ピックアップサービスのエリアを広げている」と、顧客サービスの充実を図る。タイのバンコク試験センターは抗菌性試験も可能で、3月にセミナーを開くなど現地での訴求を強める。
ホーチミン試験センターは現在、ホーチミン近郊でバイク便によるピックアップサービスを行っている。同センターは提携するSGSベトナム内にあるが、集荷サービスにより利便性が高まっている。
ベトナム北部のハノイでもSGSの集荷センターを利用して、ホーチミンでの試験ができる。カンボジアとの国境にあるバベット地区でもSGSの集荷網を利用して無料配送が可能という。
同センターは吸水速乾性を含む一般試験を行ってきたが、UV防止や通気性などの機能性試験も検討している。衣料だけでなく、椅子や机、棚などの家具試験も行っており、「日本向けJIS対応が可能」と言う。ベトナムで内販を目指す企業には、規制などの情報提供も行っていく。
バンコク試験センターは「依頼試験が堅調に増加」している。特に抗菌性試験が伸びており、SEKマーク認証の指定検査機関となっていることも評価されている。3月には専門家を招いて抗菌性に関する現地セミナーを予定する。品質や機能性だけでなく、化学分析試験にも力を入れていく。カンボジアにはプノンペン事務所を設けており、「試験はバンコクで行うが、依頼は増えている」と話す。他に香港、韓国、台湾、ジャカルタに試験センターがある。
中国では上海試験センターがCMA(計量認証証書)、CNAS(中国が国家基準として与える試験室認定)を取得し、内販にも対応できる体制だ。抗菌試験の指定機関でもある。
そのほか、常州、青島、杭州、広州に試験センターを置き、南通事務所、大連連絡所も設ける。杭州、南通、上海、常州の連携を軸に華東地区を固める。広州試験センターは衣料品のほか、SGSの協力を得て家具や服飾資材の試験にも対応する。
GB(中華人民共和国国家標準)規格を取り仕切る中紡標認証(CTTC)と一緒に規格策定のアドバイスも行う。ホワイトリスト管理システムを管理する中国紡織工業聯合会(CNTAC)とは戦略協力パートナー関係にある。全国衛生産業企業管理協会抗菌産業分会(CIAA)とは靴下の消臭加工評価に取り組み、安全性や規格などの情報共有を行っている。
ボーケンは現在、事業本部制を敷いており、中国や東南アジアの海外試験センターは中国・上海の海外事業本部が管轄している。
〈QTEC/華東3拠点に横連携強化/現地スタッフの育成も〉
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は中国に5拠点を設ける。青島試験センターを「青島可泰検験」と法人化した。昨年8月には南通に現地法人「南通浩達紡織品検測」(南通試験センター)を新設、業務は好調に伸びているようだ。
この南通の新拠点開設により上海総合試験センター、無錫試験センターを含めた華東地区でのトライアングル体制を整えた。「中国は重要な進出先。華東地区3拠点の横連携を強化し、試験だけでなく、検査業務も広げていく」と言う。
上海総合試験センターは抗菌性試験や特定芳香族アミン試験といった安全性試験のほか、機能性試験もあり、中国の中心的拠点として、グループ・ガバナンスを高める。深セン試験センターは、傘、バッグ、靴など雑貨試験が多い。日本での試験と同等の試験ができる。
2010年に進出したバングラデシュのダッカ試験センターは、テロ事件の影響が一時あったものの「回復している。商社も駐在員を置くようになり、試験オーダーも増えている」と順調。「Tシャツやジーンズが中心だったが、最近はシーズンを通して中わたジャケットや冬用の保温パンツなど合繊物も増えている」。
ベトナム試験センターは、提携先のインターテックベトナムの協力を得て「ハノイやダナンからも集荷サービスを行い、ホーチミンで試験する。カンボジアについても、インターテックがプノンペンにあり、そこから集荷して対応」。最近は「ユニフォーム関連のほか、靴やバッグなどの依頼が増えている」。
今後は現地ナショナルスタッフの育成などにも力を注ぐ。
〈QTECダッカ試験センター/機能性試験への対応高める〉
QTECのダッカ試験センターは今年、開所から10年目を迎えた。2018年も堅調な受注が続き、宇都宮毅ダッカ試験センター長は「今後は機能性試験の対応力を高める」と話す。
ダッカ試験センターでは現在、生地と製品の物性や品質など一般試験のほか、吸汗速乾など機能性試験の充実に力を入れている。18年にはUVカットや保温性の試験機も新規に導入した。受注も堅調に推移する。17年こそやや一服したが、18年は再び勢いを取り戻した。「中国の環境規制強化の影響からバングラデシュでの生産が増加しているのでは」と分析する。
バングラデシュでも生産品種を高度化する動きが強まっている。このため機能性試験のニーズが増加。これを受けてQTECダッカ試験センターでも機能性試験の対応力を高める。出荷前のロット検査の要望も高まっていることから、それに対応できる人材育成にも取り組む。現在は日本向けの試験が大部分を占めるが、バングラデシュの立地を生かし、欧米向け商品の試験の受注にも挑戦する。
〈ニッセンケン/中国事業に減速感なし/インドで第3の支所検討〉
「米中貿易摩擦、環境規制強化はあるが、中国事業に関して減速感はない」。ニッセンケン品質評価センター(ニッセンケン)の駒田展大理事長は、中国事業は順調で、前年実績を維持していると語る。無ヨウにも進出予定。
「SDGs(持続可能な開発目標)も契機となって、中国でもエコテックススタンダード100が顧客の納入条件になるなど、エコテックスに対する関心が高まる」。このため、アジアで唯一のエコテックス認証機関として中国でのエコテックス事業展開を強化していく。
ニッセンケンは3月に中国で開かれた「第29回中国華東輸出入商品貿易会」「インターテキスタイル上海アパレルファブリックス」にも出展した。
ベトナムにはホーチミン試験センターを開設。「ベトナムでも環境規制が強まる。スピード感を持って対応し、事業を軌道に乗せる」。ホーチミン周辺の集配サービスを行い、ベトナム北・中部の開拓も進めていく。カンボジアはプノンペン検品センターで試験を受け付ける。
南アジアではインドにジャイプル事業所試験センターを設け、デリー、パニーパットに支所を置く。「次の支所も検討」する。インドでは試験業務だけでなく、品質コンサルティングチーム(QCS)、生産コンサルティングチーム(PCS)がインド進出企業を支援する。
バングラデシュにはダッカ事業所を設けている。「バングラデシュでは中国の縫製企業が増えている。中国で注文を受け、バングラデシュで生産する形だ。このため、バングラデシュにも中国人スタッフを配置」した。
〈ニッセンケン上海事業所/機能性試験の受託で成果〉
ニッセンケン上海事業所が、機能性試験の受託で成果を上げている。「2018年は受託件数こそ減ったが、機能性試験が増えたことで17年に比べ内容が良くなった」と田部井康視所長は話す。
上海周辺の顧客は近年、機能素材使いを増やしている。そのため、上海事業所は機能性試験への対応を強めてきた。現在はUVカット、抗菌防臭、吸水速乾などの試験が多いと言う。
一部対応できない試験は、日本本社に委託しているが、機能性試験へのニーズは今後も根強いとみられるため、試験項目をさらに増やす。
19年は、20年の東京五輪・パラリンピックに向け、スポーツウエアの需要が増える見通しで、機能性試験の強みが生かされそうだ。一方、上海などの沿海部から内陸部やASEAN地域へ生産地が移管していることから、蘇州・無錫(江蘇省)や寧波(浙江省)などに営業エリアを拡大していく。
同社は18年5月、上海市閔行区のオフィスビルから、同区の金領谷科技産業園にオフィスと試験室を移転した。今年はそこに併設するセミナールームで、顧客の新人教育に役立つセミナー実施を計画する。




