紡績の商品開発最前線(1)/クラボウ/紡織加工技術で快適・清潔

2019年04月15日 (月曜日)

 近年、繊維製品に対する要望はますます高度化している。快適性や清潔性に加えて、生産プロセスやリサイクルを含めた環境配慮など“サステイナビリティー(持続可能性)”への要求も急激に高まる。社会的要請に応える商品開発に取り組む綿紡績の最前線をリポートする。

 クラボウは、紡績の丸亀工場(香川県丸亀市)、紡織の安城工場(愛知県安城市)、染色加工の徳島工場(徳島県阿南市)を国内に持ち、紡績から織布、染色加工まで一貫した技術融合による開発を強みとする。こうした成果は既に、ユニフォーム地など同社が得意とする用途で具体化してきた。

 例えば近年、作業環境の改善や安全性の面からユニフォームに求められる快適や清潔に関する機能要求が一段と高まっている。そこでニーズが高まっているものの一つが高通気性織物。クラボウは特殊な織り組織で通気度を高めた「風織」を開発している。高通気織物は競合他社品が市場で高いシェアを持つが、風織も発表以来、ジワジワと販売数量を伸ばした。特に2018年度(19年3月期)は企業別注ユニフォームで大口採用もあり、販売量は前年度比2倍以上となった。

 評価が高まる理由の一つが、ストレッチ性も付与するなど機能を高度化したことにある。ストレッチ織物は通常、織物の目が詰まった状態となることから、通気度を高めることは技術的なハードルが高い。風織は織り組織設計の工夫と製織・加工技術の融合で高通気度とストレッチ性という相反する機能を両立した。こうした商品のブラッシュアップで競合他社品を追撃する。

 ユニフォーム分野では、電動ファン(EF)付きウエア向けでも新たな開発が進む。テーマの一つが消臭。EFウエアではファンによって吸引された空気が衣服内を通って排出されるが、この排気に汗臭などが含まれ、着用者の周辺にいる人から臭いへの苦情が出るケースがある。この問題を解決するために消臭加工を応用する動きが強まる。

 ただ、EFウエア内を流れる空気は、ウエアの生地に接触する時間が短く、通常の消臭加工では効果は薄い。このためEFウエアに適した瞬間消臭加工の開発を進めている。そのほか、新タイプの防汚加工の開発にも取り組んでおり、これら成果は今後、展示会などで順次披露する。

 サステイナビリティーへの要請も一段と高まった。クラボウは現在、縫製工程で発生する裁断くずを繊維原料として再生・再利用する「ループラス」を推進する。こうした取り組みをユニフォームも含めた幅広い用途に広げていくことも目指す。