香港の繊維大手企業/ビジネスの高度化に重点/増収も利益が伸び悩む

2019年04月16日 (火曜日)

 香港の繊維大手企業が、商品をはじめとしたビジネスの高度化に取り組んでいる。売り上げは拡大しているものの、コストの上昇などで利益が伸び悩む中、高度化により利益の確保を狙っている。日本企業とともに実現を目指す動きもある。(岩下祐一)

 香港の生地メーカーと製品OEM大手はここ数年、欧米と日本の大手ブランドの顧客がサプライヤーの集約を進める中、ASEAN生産を武器に売り上げを拡大している。2018年はOEMの晶苑国際(クリスタル・インターナショナル)が前年に比べ14・6%増の24億ドル、聯泰(ルエンタイ)は10・7%増の8億5100万ドル、丸編みの福田実業は8・6%増の75億香港ドル、互太紡織(パシフィック・テキスタイルズ)の18年4~9月は13・1%増の34億274万香港ドルだった。

 一方純利益の伸び率は、晶苑国際が0・5%(純利益1億4900万ドル)、聯泰が6・4%(同2330万ドル)、福田実業が1・3%(同1億7800万ドル)と一様に見劣りがする。ベトナム工場の操業停止により、前期(17年4~9月)が減益だった互太紡織は、32・7%(5億293万香港ドル)となった。

 利益が伸び悩んでいるのは、中国での人手不足や人件費の上昇、中国を中心に環境規制が厳格化し投資が膨らんでいることがある。

 晶苑国際の中国・東莞市(広東省)のジーンズ縫製工場は、3年前から人手不足が続いている。それが昨年深刻になり、納期に間に合わせるため航空便を使ったことで、利益を圧迫された。

 互太紡織は、毎年3千万~4千万香港ドルを排水や石炭発電などの環境設備に投資。「特に染色の事業環境が年々厳しくなっている。今後も同じ規模の投資を続けていく」と杜結威CFOは話す。

 こうした中で、各社が取り組むのが、商品をはじめとしたビジネスの高度化。

 互太紡織は17年7月、東レから28・03%の出資を受け、取締役、営業、技術の担当者各1人を受け入れた。狙いの一つが、東レのノウハウや原料を使った新しい生地の開発。現在米中の顧客に新たに開発した生地の提案を始めている。

 東レとの共同作業は生地にとどまらず、ビジネスモデルに及んでいる。従来は受け身の開発が中心だったが、東レのノウハウを生かした提案型営業を徐々に拡大している。

 福田実業も商品の高度化により、粗利率を向上させようとしている。同社の顧客は、小売業世界最大手の米ウォルマートなど、ボリュームゾーンが中心。そのため、18年の粗利率は約10・9%で、同業の互太紡織(18・5%)に大きく差を付けられている。

 そこで同社が選んだのが、品質要求が厳しい日本顧客の開拓。16年9月に東京で日本事務所を開設した。日本の顧客のニーズに応える機能生地の開発などに取り組みながら、新規開拓をこの2年半進め、成果を上げてきた。大手SPAとの取り組みが拡大し、ほぼゼロだった日本顧客向けの売り上げは、現在全体の5%を占めている。

 聯泰は18年9月、ミャンマーやタイの工場でバッグを生産するユニバーサル・エリート社を買収した。今年は衣類とバッグの売り上げ構成比が半々になり、利益が高まることを見込む。

 一方、ODMでのデザイン能力を高めることを目的に、昨夏から欧米のインフルエンサーがデザインする衣類のオーダーメード生産に乗り出している。